Harumichi Yuasa's Blog

明治大学専門職大学院ガバナンス研究科(公共政策大学院)教授・湯淺墾道のウェブサイトです

『地方行政における法曹有資格者の活用に関する研究-任期付弁護士を中心として-』感想

2015年01月14日 | 情報法
弁護士、中央大学客員教授の岡本正先生から、『地方行政における法曹有資格者の活用に関する研究-任期付弁護士を中心として-』をお送りいただいた。



岡本先生は最近、災害復興法制という新たな法領域の開拓で着実な成果を上げておられるが、これは、日弁連法務研究財団の研究報告書とのことである。
ざっと拝見した感想を述べてみたい。

本報告書の内容は弁護士活用の制度、任期付弁護士の現状、任期付弁護士の採用、任期付弁護士の研修について、任期付弁護士のキャリアパス、地方行政における弁護士に期待される役割、巻末資料(アンケート)となっている。
最近、任期付きで弁護士を自治体の職員に採用する動きが出てきているが、本報告書は、採用する側と採用される側が不安に思っている点に関する現実の事例と、実際に任期付で弁護士を採用した場合のさまざまな問題点が網羅されており、これから採用しようとする自治体側と、応募することを検討している弁護士(や、それを目指している人)にとっては非常に参考になると思う。
アンケート結果に基づき、待遇(給与)の実態が示されており、実際にどのような職務に就くことが多いのか、自治体側からはどのような期待があって実際にはどの程度それに応えているのかについての分析も明確である。
任期付きとはいえ、自治体の一般職の公務員となった場合に弁護士会の会務との両立が難しい場面が出てくるなど、実際に任期付で自治体に採用された弁護士からみた問題点も述べられている。
また、任期付き国家公務員となる弁護士は大規模ないし中規模事務所に所属している場合が多いので、任期が終わった後は事務所に戻ることができるのに対して、任期付きで地方公務員となる弁護士は、法テラスや独立を前提として小規模事務所に所属している場合が多いので、任期が終わった後に事務所に戻ることができず、就業問題が発生しやすいというような分析もあった。
今後、弁護士の職域を地方自治体に広げていく上で、非常に示唆に富む報告書であると思われる。
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