楽しい想いで目を明けてみると、春子が着物姿で待っている。
「着替えたんだ」
「これ、前に着たときの着物と似ているでしょう、あの女将さんがくれたのよ」
水原駅で、あじさいの様な着物姿で待っていた、あれよりも淡い色彩だが、よく似合っている。
「夏っぽくていいね、着物もいまの方が似合うよ、別人みたいだ」
「そう、少しは大人になった?」
「本当に売れっ子になれるよ」
「そう、やってみようかな・・・冗談よ」
料理はすでに用意されていて、寺井が起きたところでお酒を注文した。
「こんなに目立つんだから、色々な話があるだろう」
「どこかの御曹司との見合いとか、親戚の息子の嫁にどうかとか、10回はきてたわよ」
「そんなに・・一度も会おうとは思わなかったの」
「だって、断れなくなりそうで、皆、知り合いばかりの町だから」
「一緒に住んでいるお婆さんは幾つになってるの」
「丁度80才ね、でもとても元気で、耳もはっきり聞こえているわ」
「じゃあ、まだ面倒をみなくていいんだ」
「こっちがみて貰っているのよ、料理は全部作ってくれるし、あの味は私にはできないわ」
「新しい生活は恵まれているね」
「今回は二泊なんでしょう」
「仕事の都合でそうなんだ、でも、契約社員だからな」
「延ばせるの?」
「得意先に派遣されているので、代わりを頼めば何とかなるよ、あと二日くらい」
「そう、無理しないで」
「大丈夫、いまは気軽な立場だから」
寺井は、仕事はどうでもよかった。前の会社を辞めた事は妻には言わず、多少の退職金も入り、それは寺井自身が管理しているので、職を失っても男一人すぐに困らない、と構えていた。
「一度、私の住んでいる所にも招待するから」
「お婆ちゃんの家に?」
「そうよ、大丈夫よ、私の親戚にしておくから、その方が都合がいいの」
「誰も来ないの?」
「着替えたんだ」
「これ、前に着たときの着物と似ているでしょう、あの女将さんがくれたのよ」
水原駅で、あじさいの様な着物姿で待っていた、あれよりも淡い色彩だが、よく似合っている。
「夏っぽくていいね、着物もいまの方が似合うよ、別人みたいだ」
「そう、少しは大人になった?」
「本当に売れっ子になれるよ」
「そう、やってみようかな・・・冗談よ」
料理はすでに用意されていて、寺井が起きたところでお酒を注文した。
「こんなに目立つんだから、色々な話があるだろう」
「どこかの御曹司との見合いとか、親戚の息子の嫁にどうかとか、10回はきてたわよ」
「そんなに・・一度も会おうとは思わなかったの」
「だって、断れなくなりそうで、皆、知り合いばかりの町だから」
「一緒に住んでいるお婆さんは幾つになってるの」
「丁度80才ね、でもとても元気で、耳もはっきり聞こえているわ」
「じゃあ、まだ面倒をみなくていいんだ」
「こっちがみて貰っているのよ、料理は全部作ってくれるし、あの味は私にはできないわ」
「新しい生活は恵まれているね」
「今回は二泊なんでしょう」
「仕事の都合でそうなんだ、でも、契約社員だからな」
「延ばせるの?」
「得意先に派遣されているので、代わりを頼めば何とかなるよ、あと二日くらい」
「そう、無理しないで」
「大丈夫、いまは気軽な立場だから」
寺井は、仕事はどうでもよかった。前の会社を辞めた事は妻には言わず、多少の退職金も入り、それは寺井自身が管理しているので、職を失っても男一人すぐに困らない、と構えていた。
「一度、私の住んでいる所にも招待するから」
「お婆ちゃんの家に?」
「そうよ、大丈夫よ、私の親戚にしておくから、その方が都合がいいの」
「誰も来ないの?」