厓のぶどう畑

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追悼文「将たる器」の人 島成郎さんを悼む 吉本隆明

2012年10月29日 | 人・社会・原発・放射能
2012年10月29日(月)
晴れ

ネットから削除されていたので、
臨機応変に改めて吉本隆明の書いた、
島茂郎さんへの追悼文を記載します。
政治の現状が少数政党乱立の状況、
心して臨んで下されば幸いです。



「磯のテリハノイバラ」  20号 グワッシュ


以前元原稿にした故・島茂郎追悼文の記載が、
ネットから抹消されでもやっと見付ました。
2010・1・16マイブログ記事より

僕がこの追悼文に関心を持ったのは、
偶然、渋谷のとあるバーで沖縄の精神科医師、
島茂郎さん達のグループと知り合い、
何度かお話しを聞いたり丁度バブル期だったので、
島さんを生演奏の店にお誘いしたことも有ります。

吉本隆明の本は初任給で買った(冬樹社刊)はいいが、
何だかとても難解そうな文面だったので、
はっきり言えば腹立ちまぎれに放棄しました。(笑)

正直、国語力には自信はあったので未だに、
この書き手、吉本のスタンスに疑念を持ってます。(笑)

だがこの追悼文を読み彼を見直した次第です。

島茂郎さんの印象は僕の質問に淡々とお話しされ、
彼ご本人や支えた医療関係グループも、
医療関連では珍しく爽やかな方々でした。

ご存知でしょうがこの吉本隆明氏は、
小沢一郎の政治活動は評価してました。


追悼文「将たる器」の人 島成郎さんを悼む 吉本隆明

(「沖縄タイムズ」2000年10月22日)

初めて島成郎さんに会ったのは、
全学連主流派が主導した六○年安保闘争の初期だった。
島さんたち「ブント」の幹部数人がいたと思うが、
竹内好さん、鶴見俊輔さんはじめ、わたしたち文化人(!?)を招いて、
島さんから自分たちの闘争に理解も持って見守って頂きたい旨の要請が語られた。

竹内さんなどから二、三の質問があって、島さんが答えていたとの記憶がある。

確か本郷東大の向かいの喫茶店だった。
わたしが鮮やかに覚えているのは、そんなことではない。

その時、島さんは戦いは自分たちが主体で、あくまでやるから、
文化人の方々は好意的に見守っていてくれればいい、
旨の発言をしたと記憶する。

わたしは、この人は「将(指導者)たる器」があるなと感じた。

戦いはいつもうまく運べば何も寄与しないが、
同伴していた文化人の手柄のように宣伝され、
負ければ学生さんの乱暴な振る舞いのせいにされる。

この社会の常識はそんな風にできている。
わたしは島さんがそんな常識に釘を刺しておきたかったのだと思い、同感を禁じ得なかった。

わたしは学生さんの闘いのそばにくっついているだけだったが、
心のなかでは「学生さんの戦いの前には出まい、
でも学生さんのやることは何でもやろう」
という原則を抱いて六〇年安保闘争に臨んだ。

それでもこのわたしの原則は効力がなかったかもしれないが、
わたしの方から破ったことはなかった。

島さんはじめ「ブント」の人たちの心意気に、
わたしも心のなかで呼応しようと思ったのだ。

文字通り現場にくっついていただけで、闘争に何の寄与もしなかった。

島さんの主導する全学連主流派の人たちは、孤立と孤独のうちに、
世界に先駆けて独立左翼(ソ連派でも中共派でもない)の闘争を押し進めた。

それが六〇年安保闘争の全学連主流派の戦いの、
世界史的な意味だと、わたしは思っている。

闘争は敗北と言ってよく、ブントをはじめ主流となった諸派は解体の危機を体験した。

しかし、独立左翼の戦いが成り立ちうることを世界に先駆けて明示した。
この意義の深さは、無化されることはない。


安保闘争の敗北の後、わたしは島さんを深く知るようになった。
彼の「将たる器」を深く感ずるようになったからだ。
わたしが旧「ブント」のメンバーの誰彼を非難したり、悪たれを言ったりすると、
島さんはいつも、それは誤解ですと言って、
その得失と人柄を説いて聞かせた。

わたしは「将たる器」とはこういうものかと感嘆した。
わたしなど、言わんでもいい悪口を商売にしているようなもので、
島さんの一貫した仲間擁護の言説を知るほどに、
たくさんのことを学んだような気がする。

わたしの子供達は、豪放磊落(らいらく)な島成郎さんを「悪い島さん」と愛称して、
よく遊んでもらったり、お風呂に入れてもらったりしていた。
わたしとは別の意味で、幼い日を思い出すごとに、
島さんの人なつこい人柄を思い出すに違いない。

知っている範囲で谷川雁さんと武井昭夫さんとともに島成郎さんは
「将たる器」を持った優れたオルガナイザーだと思ってきた。
臨床精神科医としての島さんの活動については、わたしは語る資格がない。
だが、この人を失ってしまった悲しみは骨身にこたえる。
きっとたくさんの人がそう思っているに違いない。


吉本隆明










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