きんちゃんの観劇記(ネタバレだよ)

思いつくまま、適当に。

「ラ・バヤデール」グラチョーワ&ネポロージニー&アレクサンドロワ/ロシア国立ボリショイ・バレエ団

2006年05月04日 | バレエ・ダンス
 マチネをボロボロの状態で観ちゃったので、大反省し、大休憩(笑)の間にしっかり休息を取り、体力を回復してソワレに臨みましたよ。お目当てのグラチョーワも出ることだし。

 グラチョーワはね

ああ、拝もう。憂いを帯びた一幕前半、ソロルと会ったときの心からの喜び、ニキヤとの対決、婚約式での哀しみ、そして救いの手の拒絶。それを経ての幻影。演じ分けが実に見事。なにより、音楽的。オーケストラの音を一度身体の中に取り込み、身体の中で響かせ、それを放出しているような、そんなカンジ。マチネ二人が「音に合わせて踊っている」のとは、全然違う。そして、なにより、「プリマ」の輝き。格が違う。大スターなのだ。彼女を観て思う浮かぶ言葉は「天与の才」。天才なんだよな。師匠のウラノワ、姉弟子のセメニャカ、それに繋がる「天才」の系統。数年前に観たときは、その輝きに翳りが見えて寂しかったけれど、今回は大丈夫だった。神々しかった。これを観たかったのよ!とっても、とっても言葉では言い表せないわ。

 アレクサンドロワのガムザッティも素晴らしかった。彼女は、「ボリショイ所属のダンサー」ではなく、「ボリショイのプリマ」系だよね。今はまだ過渡期だけれど、必ずなれる。そんな気がする。藩主の娘としての気品、格、というものが感じられる。登場場面での踊りも難なくこなす。それよりも良かったのは、ニキヤが死ぬあたりの演技。彼女はあらゆる面で、ニキヤに勝てると思っていた。それが当たり前だと思っていた。殺す必要などなかったのだ。なのに、父が「気を利かせて」ニキヤを殺してしまった。彼女はソロルが「大人の分別」でニキヤと別れ、自分と結婚する気になっているのを確信し、その通りに事態が運ばれていたのに、父がニキヤを殺してしまったことにより、ソロルの心にニキヤの面影が焼き付いてしまったのだ。せっかく消えていたのに、死んだことにより、ニキヤはソロルの魂を奪ってしまった。ニキヤが死んだからこそ、ガムザッティはソロルの心を奪い返せない。ソロルは一生彼女を愛することはない。それがわかってしまったガムザッティだと思う。アレクサンドロワのガムザッティは。これはこれで切ない。そして、なによりの天罰かも。こういうガムザッティってのもアリなんだな~。

 ウヴァーロフの代役ネポロージニー。いや~、やっと「同格の代役」だよ。涙が出るくらいありがたい。踊りのレベル的にも同格だし、踊りの質も体型も同じ方向。代役はこうでなくってはな。これがチャンスと思っているのか、ウヴァーロフ目当てでチケットを買った人の心は私がいただいていきますぜ!的な踊りでした。長い手足を生かし切った、伸び伸びとした踊り。ジャンプも回転系も、キレがあり、かつ正確。暑苦しくもなく淡泊でもなく、ちょうどいいカンジです。ハンサムだしな。ウヴァーロフのファンも、彼が代役なら満足でしょう。ソロルの解釈もイイ。ニキヤとは元々身分違い、というか、住む世界が違うのに愛し合っていた。それが「自分の世界」の「長」に命じられたから、ニキヤと別れ、ガムザッティと婚約する。辛いことではあるけれど、それが「世の理」であって、反する方が人としてダメなんだよな。ニキヤが蛇に噛まれたときも、大僧正が助けるから、ニキヤの世界の人が助けるから、それがわかっていたから、彼女の手を拒んだ。それがお互いのためだと。それが人として正しい道なのだと。でも、彼女は死んでしまった。影の王国で許されたとしても、自分の過ちに耐えきれなくて、寺院へ行く。最後は息絶えたよね。ニキヤにも見放されたか。

 影の王国の、あの群舞は、「永遠の時」「永遠の世界」を表していると思ったけれど、今日は「黄泉平坂」に見えたなあ。

 太鼓隊は、グラチョーワの回だからか、さっきより気合いが入っていたように思う。黄金像は岩田さん。神々しかった。

 パリ・オペの不満が全て消し飛ぶ舞台でした。ステパネンコ降板で、横浜に行くのがちょっと憂鬱でしたが、俄然楽しみになってきました。 


ニキヤ:ナデジダ・グラチョーワ
ドゥグマンタ:アレクセイ・ロパレヴィチ
ガムザッティ:マリーヤ・アレクサンドロワ
ソロル:ウラジーミル・ネポロージニー
大僧正:アンドレイ・スィトニコフ
トロラグワ:ヴィタリー・ミハイロフ
奴隷:キリール・ニキーチン
マグダヴェーヤ:ヤン・ゴドフスキー
アイヤ:エウゲニア・ヴォロチコワ
ジャンペ:
  ジュ・ユン・ペ、スヴェトラーナ・グニェドワ、スヴェトラーナ・パヴロワ、
  アナスタシア・クルコワ、アナスタシア・スタシケーヴィチ、ユリア・ルンキナ
パ・ダクシオン:
  ユリア・グレベンシュチコワ、オリガ・ステブレツォワ、ネリ・コバヒゼ、
  ヴィクトリア・オシポワ、パーヴェル・ドミトリチェンコ、エゴール・クロムシン
太鼓の踊り:アナスタシア・ヤツェンコ、ヴィタリー・ビクティミロフ、
アンドレイ・ボロティン
黄金の仏像の踊り:岩田守弘
マヌー(壷の踊り):アンナ・レベツカヤ
影の王国 第1ヴァリエーション:エカテリーナ・クリサノワ
     第2ヴァリエーション:ナターリヤ・オシポワ
     第3ヴァリエーション:アンナ・ニクーリナ

指揮:パーヴェル・クリニチェフ
演奏:東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団
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