きんちゃんの観劇記(ネタバレだよ)

思いつくまま、適当に。

「白鳥の湖」シプーリナ&スクヴォルツォフ/ボリショイ・バレエ

2012年02月09日 | バレエ・ダンス
今日の舞台は「圧巻!」の一言。
ニーナやステパネンコやウヴァーロフ級のスターがいなくても
これだけ厚みのあるゴージャスでクオリティが高い舞台が見られるなんて!
カンパニー全体が脂が乗っている時期なのかも。
本拠地改修期間があっても
ダンサーのモチベーションが維持されているってすごいな。
(英国ロイヤルは中堅の脱退が多かったから)
今日「白鳥」を見ることにしたのは
土曜日が旅行中だったからの消去法だったんだけど
結果的には新しいスターを堪能できて良かったわ。

シプーリナは昨年12月に
プリンシパルになったばかりだそうですが、
オディールはだいぶ踊り込んでいるように見えました。
腕の動きは柔らかくとても良くしなり、
背中のラインもたいへん優美でした。
儚く哀しくたおやかな、
とても美しい白鳥でした。
黒鳥は、少々勢いがありすぎて
若干荒い時があったかな。
彼女の黒鳥は艶やかな毒婦系ではなく、
「魔」とか「人外」の雰囲気でした。
綺麗なんだけど、どこか人間とは違う、
でも惹かれずにはいられない、
禍々しさを感じる前に絡め取られちゃう、
そんなかんじでした。
32回転はシングルだけど、迫力がありました。

ルスランは騎士より王子の方が似合う。
腕の動き、佇まいに気品がある。
前半は、最後の決めポーズが流れかけるのを
強引に終わらせているところがありましたが
後半は全ての動きを美しく綺麗に止めていました。

最後は、去っていくオディールとロットバルトに対し
どうにかしたいけど、為す術もない、
ってかんじかなあ。
誓いを破った者には報いを。
もうちょっと書き込まれるといいんだけどなあ。
どうしてハッピーエンド版から変更したのかなあ。
悲劇版がどうこう以前に、
「あと2ページ足りない」感が拭えないんだよなあ。
前回のウヴァーロフ&ベロゴロフツェフだと、
ロットバルトが本当に欲しかったのは
王子の魂ではないか、とか、
王子の青春時代が終わる比喩的な物語なのか?
などとも思ったけど、
今回はもっと、なんか、ファンタジー系?
異類婚姻譚の悲恋版みたいにも感じた。


ロットバルトのドミトリチェンコは
お見事!としか言い様がない。
グリゴロ版の豪快な振付を綺麗に踊りつつ
人間に忍び寄る「魔」。
夜の空気の中に潜んでいて、
人間にいつのまにかまとわりつく、そんな存在。

岩田さんは軽やかな動き。
演技もさりげなくしつこくなく的確。
ちょっとお疲れ気味かな?
1幕のジャンプの軸がちょっと斜めってた。

2幕の群舞も大迫力。
揃うとか、そういうレベルを超えて
物語の舞台・背景を
ちゃんと作り出している。
3羽の白鳥の真ん中の人が印象に残った。

1幕のワルツのダンサー達は
踊りの技術もスタイルもビジュアルも
すべてのレベルが高くてウハウハ状態。
どこを見ればいいのかわからない・・・
3幕の姫君達がポアントで踊るのは大好き!
ロシアの姫君がいるのも大好き!
スペイン・ボーイズは、
噂に違わずイケメンばかりだった。

今回も見惚れたのは
儀典長のアレクサンドル・ファジェーチェフ。
立っているだけでも、
舞台の3分の1ぐらいは使っているような
圧倒的な存在感がある。
惚れてまうがなーっ!


「白鳥」ってのは鉄板演目過ぎて
「また」とか言われがちだけど、
見所は多いし、
なにより、団の「基礎体力」的なものが
良くわかるので
やっぱり持ってきて欲しいよね。


【配役等】
オデット/オディール:エカテリーナ・シプーリナ
ジークフリート王子:ルスラン・スクヴォルツォフ
王妃 (王子の母) :エカテリーナ・バリキナ
悪魔ロットバルト:パヴェル・ドミトリチェンコ
王子の家庭教師:アレクセイ・ロパレーヴィチ
道化:岩田守弘
王子の友人たち:ダリーヤ・コフロワ、チナーラ・アリザーデ
儀典長:アレクサンドル・ファジェーチェフ
ハンガリーの王女:ヤニーナ・パリエンコ
ロシアの王女:アンジェリーナ・ヴォロンツォーワ
スペインの王女:チナーラ・アリザーデ
ナポリの王女:マリーヤ・ヴィノグラードワ
ポーランドの王女:アンナ・オークネワ
3羽の白鳥:
 アンジェリーナ・ヴラシネツ、オルガ・マルチェンコワ、
 ユリア・グレベンシコーワ
4羽の白鳥:
 スヴェトラーナ・パヴロワ、ユリア・ルンキナ、
 ダリーヤ・コフロワ、マルガリータ・シュライネル
ワルツ:
 アンナ・レベツカヤ、アンナ・オークネワ、
 マリーヤ・ヴィノグラードワ、ヤニーナ・パリエンコ、
 カリム・アブドゥーリン、デニス・ロヂキン、
 アルテミー・ベリャコフ、ミハイル・クリュチコフ

音楽:ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー
演出:ユーリー・グリゴローヴィチ
振付:マリウス・プティパ,レフ・イワノフ
アレクサンドル・ゴールスキー、ユーリー・グリゴローヴィチ
美術:シモン・ヴィルサラーゼ
音楽監督・共同制作:パーヴェル・ソローキン
照明:ミハイル・ソコロフ
指揮:パーヴェル・ソローキン
管弦楽:ボリショイ劇場管弦楽団

第1幕 (第1場・第2場) 60分- 休憩 25分 - 第2幕 (第1場・第2場) 60分


白鳥が死んで王子が残るラストは
悲惨すぎ、って声をどこかで聞いたけど、
私が聞いた中では(実際には見てないんだけど)
カナダのどこかのバレエ団のラストが
王子が死に、
呪いが解けないオディールは白鳥のまま、
ってのが一番悲惨かなあ。
実際に見た中では
モスクワ・クラシックの
3人とも死んで、死体が折り重なって終わりのアレだな。
ワシリエワの見開いた目が未だに脳裏に焼き付いているわ。
けったいなバージョンならワシリエフ版だよね。
ロットバルトが王(王子の父)で
父の愛人に手を出した息子の話になっていた。
オデットが舞踏会に出て
ルースカヤを踊っていたのが謎すぎる版だった。
ボリショイの黒歴史になっちゃったのかなあ。
私も、もう一度は見たくないけど。
「アニュータ」とか優れた作品を生み出してきたワシリエフも
「白鳥」だけはダメだったなあ。
それだけ難しいんだろうねえ。

コメント (2)
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