きんちゃんの観劇記(ネタバレだよ)

思いつくまま、適当に。

「ラ・バヤデール」ベルリン国立バレエ団(ポリーナ&アルテム)

2005年06月20日 | バレエ・ダンス
 ベルリンにあった3つの団体を統合してできた新バレエ団の来日公演です。来日最初の演目は芸術監督ウラジーミル・マラーホフ演出・振付の「ラ・バヤデール」。寺院での逢瀬・ラジャの館・婚約式が第1幕、幻影の場面・寺院崩壊が第2幕。ニキヤ:ポリーナ、ソロル:シェピレフスキー、ガムザッティ:ナチェーワ。
 演出については・・・。他の人ならいろいろ言いたいけど、マラーホフだからなあ。脳内フォローしまくり。寺院はあまりアジアの雰囲気がないし、婚約式の群舞もヨーロピアンなワルツ。でも彼のイメージのアジアはこれなんだろうな、とか。婚約式が俗世の欲バリバリであるほど幻影の場面が生きるけど、そこがすごくアッサリ。でも彼には俗世の欲なんてないんだろうしな、とか。美貌の二人のプリマの対決が見所の一つだと思うけど、ソロルは知らんことだから描き込む必要がないのよねえ、とか。そのためメリハリがなく平坦に見えるけど、そもそも「エキゾチックな大スペクタクル」ではなく、「一人の男が真実に愛に辿り着く」話と、彼は捉えているんだろうなあ、とか。友人に言わせれば、彼の服の趣味を思えば、舞台衣装がイマイチなのも仕方があるまい、と。それでもねえ。全体的に地味だよね。セットが少ないので5階から観たら舞台がスカスカ。もうちょっと脇の茶色を前に出してみるとかさ。できなかったかなあ。あと暗転で緊張が弛みまくり。場面の繋ぎ方にもう少し工夫があれば。植田先生のところで「幕前芝居」を勉強するよろし。寺院崩壊は、ストロボにしてもダンサーがセットを押したり階段を出したりするのが丸わかり。ここも再考を求む。
 ソロルが「オレってなんてダメな男なんダ~」とグルグルしているところが、きっとマラーホフなら合うんだろうな、と思いました。でも、そのソロルって、マラーホフが極めたものであって、他のダンサー全てに合うものではない。少なくともシェピレフスキーには似合わない。美術のセンス(予算の関係もあるとけどさ)&ダンサーに演技の裁量を残したことを思うと、ヌレエフって偉大だと思いました。後世に「マラーホフ版」として残りにくそうなカンジ。
 ポリーナは着実に進歩。ボリショイで育たないのは残念だけど、ここの「看板プリマ」にするために連れてきたんだなあ、と思いました。彼女がここの将来を背負って立つんだろうなあ。それぐらい他にスター性を感じる人はいない。シェピレフスキーは、写真はカッコイイ(笑)けど、踊りはそれほどでも。姿勢がちょいと悪い?顔&肩から腕が前に出ている。華がないように思うけど「マラーホフのソロル」が似合わないだけかも。彼はルグリやボッカのように、「打算」や「自己保身」を加味する方が似合うように思う。ポリーナには合う大きさでした。
 その他、群舞を含めて、悪くはないけど良くもない、ってトコかな。幻影の場面の前から3番目がグラつきぎみ。それ以外は、う~ん、これ以上揃ってない群舞もたくさん観たし。新興バレエ団ならこんなものかね、と。幻影の場面は全然「白」くもなく、神々しさもないけど、ABTだってアレだったし。大僧正はまあまあだけど、藩主は迫力不足。「下賤な者の命など虫ケラも同然」って雰囲気が欲しい。ソロルが逆らえないほどの権力者。それが、たんに権力を笠に着るのではなく、身分制度の厳しい社会においては藩主こそ正しい、ってのがなければ悲劇にはならない。江戸時代に例えるならば、相思相愛の恋人がいる旗本に、将軍家御息女との縁談が持ち上がるみたいなもので。武士としての筋を通すなら将軍の命令に従うべき。そういう「しがらみ」が見えないと盛り上がらないよねえ。ガムザッティも悪くはないけど、ひれ伏す美貌ではない。ポリーナよりお嬢様には見えにくいかも。ソロルが彼女に初めてあったときがあまりにもアッサリだったんだけど、もともとなのかな?美貌にフラフラする男じゃないってことかな。ブロンズ・アイドルは踊りより登場と退場にビビってしまって・・・。最初は座っている像がダンサーだと思っていました。それが・・・。あの登場はなんだっけ?ライディーン???幻影の場面、3人のソリストはみな日本人。ご祝儀?と最初は思いましたが、さすがにソロを踊るだけあるような。群舞とは段違いに良い。2番目のソロの人の脚が綺麗でした。(6/22追記:キャスト変更があったようで、針山さん&寺井さん&ヴェルデイユだったそうです)

 あくまでも。個人的な好みなんですけど。「死による浄化」ってのが見えない演出でした。白さを際だたせるためには、他を色濃くしないと。主演ダンサーにありがちな、自分のソロ以外はそれほど関心がない人にありがちな演出な気がする。気がするけど・・・。群舞という土台がまだ整っていないバレエ団なら仕方がないのかなあ。マラーホフを迎えた、というのが、(組織として)大改革を行う、ってよりも、野球やサッカーなどの弱小チームがスター選手を高俸給で呼んで当面の動員のテコ入れをするのに近いような。この先バレエ団をどうしたいのか、マラーホフより上の人にどれだけのビジョンがあるのかなあ、と、ちょっと思いました。どーでもいいことだけど。舞台を見る限りは、そうとう予算が厳しそうだよね。

 すごく関係ないけど。ヴィシニョーワって、ニキヤよりガムザッティの方が合うと思うんだけどな~。ゲストにはさせられない役だろうけどさ。

 私が本日行ったのは、シェピレフスキーの写真に惹かれたのが一番なんだけど、それ以外に、マラーホフが出演しない日の方が、彼の「演出」が堪能できるから、とも思ったから。結果はねえ。。。まあ。。。「マラーホフ支援プロジェクト」に金を払ったのね~、ってカンジかねえ。。。。。エコノミー券でちょうど良いくらいかも。

 余談。ソトニコフさんは相変わらずカワイイ。音自体は野太くて走りがちで、ダンサーや演目に合わないときがあるけれど、白クマのぬいぐるみみたいなビジュアルはとても好きだ。ちなみに、あさこちゃんが似ているのは動物の白クマの方ね。ソトニコフさんはぬいぐるみの方よ。だから二人が似ているわけではないのよ!
コメント
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