きんちゃんの観劇記(ネタバレだよ)

思いつくまま、適当に。

小山卓治「MANY RIVERS TO CROSS」渋谷WEST

2002年09月27日 | 小山卓治
 もしかして、今まで見た中で一番いいライブだったかも。これが映像に残るなんて、なんてありがたいことだろう。
 最近の東京近辺ライブでは、客と馴れ合っている、良く言えば演者と客のコラボレーションと思えるようなライブもあった。それはそれで楽しい。それほどではなくても、こちらが、見る側が楽しむ、というイメージがあった。こちらがオモシロイと思った部分を汲み上げるというか。しかし、この晩のライブは違った。演者は客に入り込む隙を与えなかった。それは拒絶ではない。反対に演者の掌の上で、演者の思う通りに客が踊らされたのだ。これほど、卓治にあたえられた、と思うライブは、もしかしたら初めてかもしれない。
 今晩の卓治は終始余裕があった。一人ではなくバンドスタイルであるからだろう。今までもバンドスタイルはあったが、これほどまで卓治がリーダーシップを発揮していることはなかったように思う。リズム(カウント)を取り、指示を出す卓治。それは自分の音楽の中にいて、自分の音楽を作り出すために指示を出しているように見えた。そう、今晩の卓治は実に音楽的であった。だからと言ってメッセージ性が損なわれるということはない。むしろ逆。余裕があり、音楽的である故に、はっきり言いたいことが伝わってくる。今までは胸ぐらを掴まれ、しかし言われるのは単語。気持ちがこもっているから、迫力があるから、それでも充分に伝わってきた。しかし、今晩は違った。こちらの目を見て、文章で伝えられたように思う。一人でピリピリしている緊張感も嫌いではないが、でも、私は今晩の卓治が好きだ。
 演奏はいつもより、ややスローぎみ。そのためじっくりと音が紡ぎだされていた。伝えたいことを、さらに増幅させる音。オープニングから2曲、キツイ顔で集中して演奏している姿を見たら、今日は笑顔を見せてくれなくてもいい、そうも思った。
 ずっとファンでいて良かった。今日のライブを見て、今までの年月が無駄ではなかったと思った。卓治は、ようやく自分のやり方を見つけ、安定したようだ。だから私も、これからは少しサボろう。とも思うが、「卓治のライブは絶対に行けないところ以外は行く」というのは、すでに習慣となってしまっているからなあ。仕方がない。見続けよう。
コメント
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