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■分水嶺に立つパキスタン

 来年1月に行われるパキスタン選挙は、アメリカの「テロとの戦争」に引き続き協力をするのか、それともパキスタンの安全保障を親米路線から距離を置く政策に転換させるのか、の選択になる。

 いうまでもなく、パキスタンはアフガニスタンを実行支配していた「タリバン」を育てた。当時、東にインド、西に旧ソ連撤退後に続いていた不安定なアフガニスタンを抱えていたのでは、パキスタン自身の安全が損なわれる。そこで、アフガン戦争後、部族紛争に明け暮れていたアフガニスタンの「安定」のために、資金と武器と情報を与えて「タリバン」を育てた。

 その「タリバン」が、カルザイ政権下のアフガニスタンで復活し始めた。パキスタンにとって、アメリカの後ろ盾に依拠したカルザイ政権は、本音で言えば目障りだ。もっとすっきりした疎通の測れる政権が欲しい。

 しかし、ムシャラフ政権とすれば、建て前では「テロとの戦争」に一国家として参加している以上、「タリバン」復活に手をかすわけにはいかない。そこが難しいところだ。

 2001年の「911」から6年が過ぎ、パキスタン国内には反米の気運がみなぎっている。なぜアフガニスタンのムスリム同胞を追いやらねばならないのか、という不満だ。そこに国会議員選挙が行われる。

《以下引用》
 「パキスタンのベナジル・ブット(Benazir Bhutto)元首相は11月30日、2008年1月8日に実施される総選挙のマニフェストを発表した。これにより、文民大統領として2期目を迎えたペルベズ・ムシャラフ(Pervez Musharraf)大統領のもとで行われる総選挙のボイコットをめぐり、野党内での亀裂が深まった。ムシャラフ大統領は29日に、国際社会の強い圧力に屈した形で、12月16日に非常事態宣言を解除し、総選挙を自由で公正なものにする意向を表明。これにより、ブット元首相とナワズ・シャリフ(Nawaz Sharif)元首相との意見の違いが明らかとなった。シャリフ元首相は、総選挙では不正が行われるとし、自身のパキスタン・イスラム教徒連盟シャリフ派(PML)が率いる野党連合「全党民主化運動(All Parties Democratic Movement)」は選挙には参加しない意向を表明している」(12月2日『AFP通信』)《引用ここまで》

 政権与党は国会では少数与党である。だからブット女史率いるPPPと連立を図ろうとしている。これはアメリカの意向でもある。ムシャラフさんは軍人の服を脱いだばかりだが、「テロとに戦争」ではアメリカと協力している。しかし、先日の戒厳令のように、国民の不満を軍事力で押さえつけようとするやり方には、アメリカとしては正直うんざりだ。その穴埋めがブットさんだ。

 ブットさんは民主主義を標榜している。戒厳令にも反対だ。アメリカは民主主義を前面に出したブットさんを支援することで、ムシャラフさんの軍事力に頼ったタカ派的な行動を牽制できる考えているのだ。

 問題は野党の出方。親米路線を走ってきたムシャラフ政権に対する失望は大きい。そこに来て11月に施行した戒厳令や、最高裁長官の更迭といった荒っぽい手段は、政権維持のためだとしか映らない。そんな政権は倒したいけれども、逆に強権的な方法でやられたりしたらたまったものではない、という懸念もある。

 選挙でやればいいじゃないか、ということになるのだが、戒厳令下での選挙では公正さが保たれない危険も大きい。そこでボイコットということになるのだが、ブットさんは選挙には参加すると表明した。そうすると、残りの野党はどうするのだろう。

 シャリフさん率いるPML始め、MMAと総称される6大イスラム宗教政党などの出方が注目される。これらの政党はより原理主義的な解釈に理解を示すイスラム政党である。

 この6年、「911」に揺れてきたパキスタンは、いま分水嶺に立たされている。このままアメリカに協力していくのか、それともより厳格なイスラム国家を目指すのか、という分水嶺である。

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