YS Journal アメリカからの雑感

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Fabian Socialism(フェビアン社会主義)

2010-10-06 18:30:17 | 政治の話題
「日本は世界中で一番上手に回っている社会主義だ」は、良く出来た冗談だと思っていたが、1942年に出版されたフェビアン社会主義のガイドブック(あくまでも、アメリカ向けだが)
"The Road We Are Traveling"を読むと、冗談ではなく真実なので背筋が寒くなる。

戦後の日本では、ガイドブックに示された13項目の計画ががキチンと実行されているのではないか!

リベラルで知られるアメリカの占領軍(GHQ)の影響なのか、日本が勝手に自走したのかは分からないが、お見事である。

1. Strong, centralized government. 強力な中央政権
2. Powerful Executive at the expense of Congress and the Judicial. 立法と司法を凌駕する強い官僚組織
3. Government controlled banking, credit and securities exchange. 政府による金融、株式市場のコントロール
4. Government control over employment. 政府による雇用のコントロール
5. Unemployment insurance, old age pensions. 失業保険と年金
6. Universal medical care, food and housing programs. 国民皆健康保険と食料及び住宅補助
7. Access to unlimited government borrowing. 上限のない政府の借金(無制限の国債発行)
8. A managed monetary system. 金融システムの管理
9. Government control over foreign trade. 政府による貿易のコントロール
10. Government control over natural energy sources, transportation and agricultural production. 政府によるエネルギー資源と農業生産のコントロール
11. Government regulation of labor. 政府による労働の規制
12. Youth camps devoted to health discipline, community service and ideological teaching consistent with those of the authorities. 青少年への健康的な生活、ボランティア活動の奨励と(フェビアン社会主義の)理想の権威者による教育
13. Heavy progressive taxation. 累進課税

フェビアン社会主義はイギリスで活動が始まったのだが、1940年代に包括的福祉国家化がほぼ確立したことで、活動としては終わっている。(但し、フェビアン協会はイギリス労働党の基盤団体として現存している)

フェビアン社会主義者が賢いと言うか、怖いのは、革命を通してではなく民主主義のやり方を上手く利用しながら、全ての経済活動を国営にしてしまおうという見事な戦略である。

2008年に書かれた記事 "Barack Obama, Fabian Socialist" で、筆者はオバマがフェビアン社会主義者であると喝破している。大統領候補の時も、大統領になっても(もう2年になろうとしている)、オバマの政治信念がまともに論じられる事は皆無であるが、これまでの政策を振り返ると、まさにこのガイドブックの通りにやっているとしか思えない。

早いうちから市民活動家として活躍しているので、活動家の方法論として "Rules for Radicals " を大統領になっても着実に実践している事は間違いない。また、法学部を卒業した弁護士で政治的野心が昔からあった以上、何らかの政治信念をずっと持っていたと思われる。

以前のエントリーで、無宗教であると言う推論から、Black Liberation Theology (これも結局、キリスト教の皮を被った黒人に迎合した階級闘争を中心にした社会主義)に根差した政治信念であると言う結論に達した。今までは、オバマが社会主義者である事に一応疑問をもっていたが、フェビアン社会主義を知るに至って、オバマは社会主義者(フェビアン社会主義)としか思えなくなった。

オバマは秀才なので、フェビアン社会主義をキチンと研究した上で自分の政治理念にしていると思う。そして、Black Liberation Theology への傾倒を誤魔化した様に、自分が社会主義者である事を上手にカモフラージュしている。そう言う意味では、民主党の超左寄りの現在の首脳陣よりも、ずっと過激な政治信念の持ち主であると言わざるを得ない。(フェビアン社会主義的な政策(例えば、ObamaCare)を売り込む時に、全く矛盾する雇用促進とか経済活動の活発化とかいったアメリカ市民に耳障りの良い言葉を組み合わせ、嘘でごまかしている)

イギリス、日本が、フェビアン社会主義的な国家になったのは、大恐慌そして第二次世界大戦という大混乱があっての事と考えられるが、オバマも、2008年リーマンショック後の大不況という混乱直後に大統領就任という大きな幸運を最大に利用して、着々と手を打っているのである。(先日辞任した大統領首席補佐官が、通常ではとても成立しない法案を通せるので、"No crisis to waste"(危機を無駄にしてはいけない)とコメントしている)

問題なのは、イギリスも日本も、フェビアン社会主義的な国家は、戦後の復興と言うラッキーな時期であったにもかかわらず、50-60年を経て行き詰まっている事である。社会主義者は、失敗例が出る度に制度が悪いわけでなく、やり方が悪いという結論を持ち出すのが常だが、今まで人々に豊かな生活を持続的に提供出来た事は無いので、根本的に間違った制度であると断定出来る。

もっと、気をつけなくてはならないのは、フェビアン社会主義はエリートによる全体主義なので、基本的に選民思想が内在している。つまり、社会が必要としない人々を抹殺する事に躊躇が無いのである。

オバマを社会主義者と定義すると、自由主義、民主主義の最後の砦であるアメリカが、今回の中間選挙、2012年大統領選挙とその後で、どのように巻き返すかが、アメリカだけでなく世界中の国々にとってどれだけ重要かが理解出来る。もし、アメリカで保守復活が無ければ、世界は最後の砦を失う事になる。50年後、100年後には、世界中の国々で民主的な手法で選ばれた独裁者による市民の合意を得た合法的な大量殺人(ジェネサイド)が普通に行われる世界が来るだろう。

日本は、少し先を行っているので(行き詰まっているのだが、方向修正が出来ずに突き進むという意味)、このままだと10年後には、「痴ほう老人の強制的な安楽死」といった類いの話が普通に論じられる事になりそうだ。


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4 コメント

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Unknown (shinseihoshu)
2010-12-07 21:53:46
初めまして。

私「真正保守政党を設立する」という小さなブログを管理している者です。
日本では「保守主義=自由主義」であることが全く認知されておらず、「国家社会主義・民族派=保守」という倒錯した定義に引き摺られております。
そういった中で、所謂「バーク保守主義」を基盤とした幾つかのブログと連携しながら、拙い足取りではありますが、「本当の保守主義」についての周知に努力している次第です。

現在、連携させて頂いているブログの方が、「フェビアン社会主義」の論駁に向けて準備されております。
私のブログにおいてもフェビアン社会主義について紹介したいと思い、宜しければ、貴殿のこの明解な記事を転載させて頂きたいのですが、如何でしょうか。
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望外の幸せ (YS Journal)
2010-12-07 22:42:27
真正保守政党 党首(?)様
転載の件、喜んで了承いたします。貴公の様な方のお声を書けて頂けるのは望外の幸せです。

アメリカは国の歴史、又、現在の政局等、アメリカ国外からみれば理解し難い所は多いのですが、正統な保守の伝統があり、オバマ政権誕生を機として、復活の兆しがあります。

日本には仰るように真の保守が概念としても存在しない事を異国から心配しております。このブログも誇大妄想的に言うと、日本にはなかなか伝わらないアメリカの情報を伝える事とアメリカの保守を紹介していこうとの思いがあります。

よって、今回の申し出は、願ったり叶ったりです。今後とも私に出来る事がありましたら気軽に声をかけて頂ければ幸いです。

今後のご活躍をお祈りしております。
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Unknown (shinseihoshu)
2010-12-07 23:11:54
早速のご返事誠に有難う御座います。

米国は、誕生の折から様々な問題を内包する国かと存じますが、それ故に建国の父たるジョージ・ワシントン、そして「フェデラリスト」のアレグザンダ・ハミルトンに代表される「真の保守主義」が大切に保持されているのでしょう。

早速ですが、ブログに転載させて頂きます。
また、重ね重ね勝手な申し出で申し訳有りませんが、リンクさせて頂いたく存じます。

今後とも何卒宜しくお願い申し上げます。

紛らわしいブログタイトルですが、私が党首というのではなく、恥ずかしながら日本において真の「保守政党の誕生」を想い呼称しております。
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どんどん どうぞ (YS Journal)
2010-12-08 01:01:21
転載、リンク、特に、了承は入りませんので、如何様にもご利用下さい。
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