YS Journal アメリカからの雑感

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Medi"S"care

2011-05-27 05:38:00 | アメリカ政治
Medicare は、連邦政府が運営するアメリカの高齢者向け公的医療保険制度である。掛け金については、税金と同様に給料から天引きされている。

今週、ニューヨーク州のとある選挙区で、連邦下院議員の補欠選挙が行われて、同州にしては珍しく伝統的に共和党の強い選挙区にも拘わらす、民主党候補 Kathy Hochul が当選した。

彼女の選挙キャンペーンは、徹底的に 共和党の Raul Ryan が提出した2012年度予算案、特に Medicare の改革提案を、徹底的に攻撃する作戦であり、結果的に功を奏して、当選に至った。象徴的なのは、共和党(Raul Ryan)と思しき人物が、車椅子に載ったお婆さんを崖から突き落とすテレビコマーシャルであった。

財政が危機的状況のこの期に及んでも、民主党は福祉の見直しをする気は全くなく、共和党の政策では、現在の状況が悪化と脅す、得意の scare tactics で対応しようとしている。今回は、Medicare に的を絞っての攻撃なので、MediScare と呼ばれている。

Raul Ryan のMedicare の改革提案は、現在の Medicare サービス受給者には、全く影響なく、確実視されている将来の破綻を防ぐために、政府の運用を民間に任す案で、民主党の攻撃は、完全に的外れであるが、これまでも上手く言ったように今回も有効であった。

今回の敗北は共和党にも波紋を広げている。Raul Ryan が打ち出した財政改革案が、次期尚早と言う考え方から、内容の説明不足だけであるという考え方まで幅広くある。早めに結論を出し、民主党の scare tactics に対抗する作戦を立てないと、2012年の選挙(大統領選、下院、上院の3分の1)に大きな影響を与えそうだ。

共和党にしても、政策内容の分かり易い説明も必要であるが、財政危機なので改革を進めるだけでは弱いと思われる。経済成長をもっと強調し、税率アップ無しでの税収アップと福祉の改革という組合せで、前向きな改革を目指すという方向性が良いと思われる。

このままでは、折角2010年の中間選挙で歴史的な共和党の躍進も、失速しそうである。

今週、Raul Ryan が提出した2012年度予算案は、上院で見事に否決された。民主党全議員と何人かの共和党議員が反対に回った。因みに、オバマの予算案は、上院議員全員の反対で否決されている。