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真実を知りたい-NO2                  林 俊嶺

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堤岩里(ジェアムリ)事件

2009年12月06日 | 国際・政治
 日本統治時代の1919年3月1日に始まった朝鮮の独立運動(独立万歳運動・万歳事件)は、都市から農村各地に広がるとともにしだいに激しくなっていった。土地調査事業などによって土地を失ったり、米を収奪された農民が、日本の武力による弾圧に、農具で武装し命懸けで抵抗するようになっていったからだという。そして、地方都市では、周辺の農村から人々が集まり、市場が開設される「市日」が蜂起の日にあてられるようになった。堤岩里(ジェアムリ)虐殺事件もそうした流れの中で起こった。時の長谷川総督も「検挙班員及軍隊ノ行為ハ、遺憾ナガラ暴戻ニ渡リ、且ツ放火ノ如キハ明カニ刑事上ノ犯罪ヲ構成スルモ……」と認めざるを得ない犯罪行為であった。事件に関する下記の文書のやり取りからも、できるだけ事実を隠蔽し、責任を転嫁しようとする姿勢が窺われる。「万歳事件を知っていますか」木村悦子(平凡社)からの抜粋である。
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                 第3章 70年を遡る

  信心へ下された重い鉄槌
 
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 「水原・堤岩里事件」の発端も、市日に合わせて行われた近隣の「万歳」デモである。
 3月21日、水原郡郷南面の発安場の騒動の訓戒をしたい、と堤岩里の住民を教会に呼び集め、教会堂を封鎖し、石油を撒いて火を放ち、逃げまどう者には発砲し23名を虐殺したのである。
 この時、なぜ堤岩里だったのか──。
 発安場の「万歳」デモに堤岩里の住民が多数参加していたことは紛れもない事実だが、この近辺で、堤岩里はキリスト教徒の最も多い村だったのである。


 「水原・堤岩里事件」に関して、憲兵隊司令官兼総督府警務部長・児島惣次郎は4月28日、総督府政務総監・山県伊三郎と拓殖局長官・古賀廉造に宛てて、以下の報告を送っている。

     堤岩里騒擾事件

 歩兵第79聯隊附中尉有田俊夫ハ、京畿道水原郡発安場ノ守備ヲ命セラレ4月13日同地ニ到着セリ。当時、発安場地方ハ騒擾ノ余禍ヲ受ケ未タ民心ノ安定ヲ見ルニ至ラス。即チ、3月下旬ヨリ4月初旬ニ亘リ同地方ニ於テハ官公署ノ破壊焼却セラレタルモノ尠カラス。殊ニ花樹、沙江ノ両地ニ於テハ巡査ヲ虐殺シ且其ノ死屍ヲ陵辱セリ。其ノ他所在内地人被害頻々トシテ起リ、民心ノ恐慌憤怒一時其ノ極ニ達セリ。発安場ニ於テハ3月31日市日ニ際シ、約一千名ノ暴民太極旗ヲ押立テ路上演説ヲ為シ、内地人家屋ニ投石暴行シ、終ニ白昼小学校ニ放火シテ万歳ヲ高唱スル等ノ横暴ヲ逞ウシ、翌4月1日晩ヨリ発案場周囲ノ山上80余箇所ニ篝火ヲ焚キ、示威ヲ以テ、内地人ノ退去ヲ迫リ、為ニ内地人婦女子43名ハ幾多ノ危険、困難ヲ排シ三里隔ツル三渓里ニ避難セリ。一面居住民男子9名ハ孰レモ武装シ駐在巡査6(内地人2、鮮人4)及歩兵4名ト共ニ、連夜徹宵警戒ニ努メ恰モ適中ニ在ルヲ感セシメタリ。而シテ兵力ノ増加ニ伴ヒ、漸ク避難民ノ復帰ヲ見タルカ如キ実況ニアリタリ。
 一般ノ情況斯ノ如クシテ諸種ノ流言飛語尚其ノ跡ヲ絶タス。此ノ時ニ当リ有田中尉ハ、同地方騒擾ノ根源ハ堤岩里ニ於ケル天道教徒並基督教徒ナルコトヲ聞キ、之カ検挙威圧ノ目的ヲ以テ、部下11名ヲ率ヒ4月15日午後3時半発案場出発。巡査及巡査補ト同行シ、途中暴民ノ逃亡ニ備フル為、巡査ニ兵2名ヲ附シ、小隊主力ノ反対方面ニ行動セシメ、堤岩里ニ到着スルヤ巡査補ヲシテ天道教徒及耶蘇教徒二十有余名ヲ、耶蘇教会ニ集合セシメ、先回ノ騒擾及将来ノ覚悟ニ関シ、2、3質問ヲ試ミツツアリシ間、1名ノモノハ逃亡セントセシニヨリ之ヲ防止セルニ、他ノ1名ト共ニ打掛リ来リシヲ以テ、直チニ之ヲ斬棄テタリ。此ノ景況ヲ見ルヤ鮮人全部ハ暴行ノ態度ニ出テ、其ノ一部ハ、木片又ハ腰掛等ヲ以テ反抗シ来リシオ以テ、直チニ出テテ、兵卒ニ射撃ヲ命シ、殆ント全部ヲ射殺スルニ至レリ。此ノ混乱中、西側隣家ヨリ火ヲ発シ、暴風ノ為メ直チニ教会堂ニ延焼シ、遂ニ20余戸ヲ焼失スルニ至レリ。
 中尉ハ兵ヲ二分シ、当地人民ノ避難及家財ノ運搬ニ従事セシメ、自ラハ兵2名ヲ以テ背後ノ山上ニ至リ、警戒ヲ為セリ。
 要スルニ、有田中尉ノ行動ハ強烈ニ過キタルヲ免レスト雖、当時ノ実情之ヲ然ラシメタルモノアリタルカ如シ


 以上が憲兵隊司令官にして総督府警務総長の通牒である。
 京畿道水原郡発案場の守備を命ぜられ、軍警の指揮に当たった有田俊夫中尉の措置は、「騒擾」後の実情からみて、万やむを得ぬ手立てであり、必然の帰結であった──と。


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 …内閣総理大臣・原敬は、朝鮮騒動に関して”訓令すべき趣旨”を閣議で相談の上、朝鮮総督・長谷川好道に対し以下のような訓電を発している。
 「今回の事件は内外に対し極めて軽微なる問題となすを必要とす。然れ共、実際に於て厳重なる処置を取りて、再び発生せざる事を期せよ。但、外国人は最も本件に付注目し居れば、残酷苛察の批評を招かざる事。十分の注意ありたし」

 ・・・

 水原・堤岩里事件後(4月22日)、総督・長谷川好道は総理・原敬に宛てて以下のような報告をしている。

 3月下旬、京畿道水原安城両郡地方ニ暴民盛ニ暴行シ、官公署及ビ民家ヲ破壊焼棄シ、日本人巡査2名殺害セラレ、殊ニ内一人ハ言フニ忍ビザル惨殺ヲ加ヘラレタリ。此地方暴民ニ対スル威圧ト犯人検挙ノ為メ、稍有力ナル検挙班ヲ派遣シ、4月2日ヨリ同月14日ニ至ル間、64ニ亘リ大検挙ヲ行ヒ約800ヲ検挙シタリ。此検挙中、暴民死10、傷19ヲ生ジ、火災発生17、焼失戸数276ニ及ベリ。又之ト同時ニ 該地方ニ兵力ヲ分散シ、前記検挙ニ協力スルトコロアリシガ、偶々水原郡発案場ニ派遣セラレタル歩兵中尉以下12名ハ4月15日、付近駐在巡査ヲ同行シ、堤岩里基督教会堂ニ基督、天道両教徒約25名ヲ集メ、訊問訓戒ヲ加ヘントシタル際、教徒等、反抗セシタメ、殆ンド全部ヲ射殺シ火ヲ放チタルニ、強風ナリシ為、28戸ヲ焼失シタル事実アリ。
 前述検挙班、コウナコウ(ママ)地方ニ於テ火災ヲ生ゼシハ、取調ノ結果、一部ハ夜間混雑ノ結果失火シタルモノナルモ、他ノ一部ハ暴民ノ獰悪ナル行為。殊ニ巡査2名ノ惨殺ニ報復心ヲ起シ居タル検挙班員ノ放火ナル事ヲ確メタリ。又、堤岩里ノ殺生及ビ放火ハ、嚮ニ発案場(堤岩里ヨリ半里ノ距離)ニ於テ、同地小学校ヲ焼キ暴行ヲ為シタルモノハ、堤岩里基督、天道両教徒ナル旨、同村内地民ヨリ訴ニ接シ、且、彼等ヲ掃滅セラレタシト民ノ懇請ヲ受ケ、前述ノ処置ニ出デタルニ、却テ反抗シタルタメ、斯ノ如キ行為ニ出デタルモノノ如シ。以上、
検挙班員及軍隊ノ行為ハ、遺憾ナガラ暴戻ニ渡リ、且ツ放火ノ如キハ明カニ刑事上ノ犯罪ヲ構成スルモ、今日ノ場合、正当ノ行為ヲ公認スルハ、軍隊並ビニ警察ノ威信ニ関シ、鎮圧上不利ナルノミナラズ、外国人ニ対スル思惑モアレバ、放火ハ凡テ検挙ノ混雑ノ際ニ生ジテル失火ト認定シ、当事者ニ対シテハ、孰レモ其手段方法ヲ得ザル廉ニヨリ、其指揮官ヲ行政処分ニ付スル事トセリ。
 堤岩里付近ノ状況ハ、京城在住ノ外国人ニ宣伝セラレ、英国総領事代理、米国領事、及ビ外国宣教師、一部現状ヲ視察シタリ。御参考迄



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