真実を知りたい-NO2                  林 俊嶺

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朝鮮における土地略奪・「土地調査事業」ほか

2009年08月05日 | 国際・政治
 韓国併合前後、朝鮮において多くの農民が土地を失い、農民としての仕事を失い、不安定な低賃金労働者となって都会に出たり、失業し一家離散となったり、海外流亡へと没落していくこととなったりしたのは、当時の日本の朝鮮政策に原因があることは否定できない。その中心的なものが「土地調査事業」である。朝鮮農民にとっては、その「土地調査事業」は、下記のような点で重大であった。
 その一つは、「土地調査令」第4条で、朝鮮総督府の定める一定の期間内に土地所有者の申告を規定したことである。この既定により、多くの朝鮮農民が先祖代々の土地占有や所有権を奪われた。複雑な申告手続きや朝鮮農民には理解が難しい申告内容、「法外な税金が課せられるようだ」というデマ情報などによって、当時の多くの朝鮮農民は当惑し、期限内に正確な申告をすることが困難であったという。また、せっかく申告した者の中に「印もれや申告形式の誤りのために所有権を失う者がある」と朝鮮総督府の関係者が認めているような有様であった。
 もう一つは、この「土地調査」を遂行した「地主委員会」は、「面長、洞里長 地主総代、主なる地主」と「地方庁当局者、警察官憲、当該地方担当の土地調査局準備員」など、日本官憲ならびにその保護を受けたメンバーによって構成されていたことである。時には威圧をもって土地調査が進められ、朝鮮農民は極めて不利な状況にあったという。
 下記は、その根拠法令の「土地調査令」と、1911年以後、至るところで個人所有の土地取上げがおこなわれることになったという「土地収用令」及び、大部分の森林が国有林に編入されることとなったという「森林法」(1908年1月)の一部とその解説の一部を「日本帝国主義の朝鮮支配上」朴慶植(青木書店)から抜粋したものである。
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            土地調査令(1912年8月制令第2号)

第1条 土地ノ調査及測量ハ本令ニ依ル
第2条 土地ハ其ノ種類ニ従ヒ左ノ地目ヲ定メ地盤ヲ測量シ一区域毎ニ地番ヲ附
     ス但シ第3号ニ掲グル土地ニ付テハ地番ヲ附セザルコトヲ得
 1、田、沓、垈、池沼、林野、雑種地
 2、社寺地、墳墓地、公園地、鉄道用地、水道用地
 3、道路、河川、溝渠、堤防、城堞、鉄道線路、水道線路
 前項ノ規定ニ依リ調査及測量スベキ林野ハ他ノ調査及測量地間ニ介在スルモノ
 ニ限ル
第4条 土地ノ所有者ハ朝鮮総督ノ定ムル期間内ニ其ノ住所、氏名、又ハ名称及
     所有地ノ所在、地目、字番号、四標、等級、地積、結数ヲ臨時土地調査局
     長ニ申告スベシ、但シ国有地ニ在リテハ保管官庁ヨリ臨時土地調査局長
     ニ通告スベシ
第5条 土地ノ所有者又ハ賃借人其ノ他ノ管理人ハ朝鮮総督ノ定ムル期間内ニ其
     ノ土地ノ四囲ノ疆界ニ標杭ヲ建テ地目及番号竝民有地ニ在リテハ所有者
     ノ氏名又ハ名称、国有地ニ在リテハ保管官庁名ヲ之ニ記載スベシ
第6条 土地ノ調査及測量ヲ為スニ付テハ其ノ調査及測量地域内ノ地主ヲシテ二
     人以上ノ総代ヲ選定セシメ調査及測量ニ関スル事務ニ従事セシムルコト
     ヲ得
第9条 臨時土地調査局長ハ地方土地調査委員会ニ諮問シ土地ノ所有者及其疆
     界ヲ査定ス
 臨時土地調査局長前項ノ査定ヲ為シタルトキハ30日間之ヲ公示ス
第10条 前条第1項ノ査定ハ第4条ノ規定ニ依ル申告又ハ通知当日ノ現在ニ依リ
      テ之ヲ為スベシ但シ申告又ハ通知ヲ為サザル土地ニ付テハ其ノ査定当
      日ノ現在ニ依ル
第15条 土地所有者ノ権利ハ査定ノ確定又ハ裁決ニヨリテ確定ス


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                   土地収用令

第1条 公共ノ利益トナルベキ事業ノ為必要アルトキハ本令ニ依リ其ノ事業ニ要ス
     ル土地ヲ収用又ハ使用スルコトヲ得
第2条 土地収用又ハ使用スルコトヲ得ル事業ハ左ノ各号ノ一ニ該当スルモノナ
     ルコトヲ要ス
 1、国防其ノ他軍事ニ関スル事業
 2、官庁又ハ公署建設ニ関スル事業
 3、教育、学芸又ハ慈善ニ関スル事業
 4、鉄道、軌道、道路、橋梁、河川、堤防、砂防、運河、用悪水路、溜池、船渠、
   港湾、埠頭、水道、下水、電気、瓦斯又ハ火葬場ニ関スル事業
 5、衛生、測候、航路標識、防風、防火、水害予防其ノ他公用ノ目的ヲ以テ国又
   ハ公共団体ニ於テ施設スル事業
 6、一ノ場所ニ於テ1年3万5千瓲以上ノ製鋼製鉄能力及1年3万5千瓲以上ノ製
   鋼能力ヲ有スル設備ヲ以テ営ム製鉄事業
   前項6号ノ製鉄事業ノ範囲ハ朝鮮総督之ヲ定ム
第4条 土地ヲ収用又ハ使用スルコトヲ得ル事業ハ朝鮮総督之ヲ認定ス 


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                   森林法(抜粋)

第1条 森林ハ其所有者ニ依リ之ヲ分チテ帝室森、国有林、公用林及私有林トス
     山野ハ森林ニ準ジテ本法ヲ適用ス
第2条 国有林山野ノ売却・譲与・交換又ハ貸付及国有ノ林産物ノ売却ニ関スル
     規定ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム国土保安林又ハ国有林野ノ経営上国有保存
     ノ必要アル森林山野ハ之ヲ売却・譲与・交換又ハ貸付スル事ヲ得ズ
第3条 農商工部大臣ハ造林者ト其収益ヲ分収スルノ条件ヲ以テ国有森林山野ニ
     部分林ヲ設定スルコトヲ得
第19条 森林山野ノ所有者ハ本法施行ノ日ヨリ3箇年以内ニ森林山野ノ地積及面
     積ノ見取図ヲ添附シ農商工部大臣ニ届出ヅベシ期限内ニ届出ナキモノハ
     総テ国有ト見做ス

 森林法の制定の目的が何であるかはその19条によって明らかである。この地籍届の強要は林野の大部分を占めていたいわゆる「無主公山」と呼ばれた一般人民の共有林(入会地)の略奪を意味するものであり、事実富裕な朝鮮人山林地主や日本人山林資本家らの届出によるものは全林野面積の7分の1にも満たぬ220万町歩にとどまり、あとの大部分は「国有林野」に編入されてしまったのである。こうして朝鮮人民は1910年以前にすでに多くの私有林や、共有林を略奪され、林野の共同利用がが不可能となり、毎日の薪炭にも困難をきたすようになった。

 ・・・(以下略)

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コメント (1)
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