真実を知りたい-NO2                  林 俊嶺

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北朝鮮内部文書と武力南進 朝鮮戦争

2009年05月03日 | 国際・政治
 「朝鮮戦争 金日成とマッカーサーの陰謀」(文藝春秋)の著者萩原遼によると、北朝鮮が南進を計画的に進めていたことは疑いようがないということであるが(下記抜粋部分もその証拠の一つ)、驚くべきことに、アメリカはそれを百も承知であったということである。GHQ情報局のウィロビー少将は、K.L.O.(Korean Liaison Offce)というスパイ機関をソウルにつくり、多くのスパイを北朝鮮に送り込んでいた(100人にのぼると見られている)。著者は、北に潜入したスパイから送られてきた情報のうち57点をマッカーサー記念図書館で閲覧したことを明らかにしているが、なかには、民族保衛省内部や、人民軍総参謀部、各師団司令部にいる人間でしか知り得ない情報も含まれているとのことである。アメリカは間違いなく北の南進計画を詳細につかんでいたのである。巨大軍需産業が生き延びられるように、また、強固な反共の砦を築くために、アメリカが北の南進を知りつつ”知らぬふり”をきめこんだとすれば、許せないことであると思う。
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                第7章 第6師団の南進

 「絶対秘密」と記されて

 私の発見した文書のなかでも最大のものは、第6師団文化部(政治部のこと)が1950年6月13日にだした詳細な南進計画書「戦時政治文化事業」である。
 この文書は、B6版大のガリ版12ページの小冊子であり、北朝鮮の最高機密を意味する「絶対秘密」と記されている。押収した米軍も最高機密文書を意味するコンフィデンシャル(Confidencial)のハンをおしている。
 この文書は、集結区域と称する38度線近くの臨時駐屯地への移動にはじまり、南進命令の接受から進攻、占領地での活動にいたるまで、政治部のおこなうべき行動を5つの段階にわけて詳細にのべている。
 南進にいたる5段階とはつぎのようになっている。

 第1段階 集結地域に到着するまでの行動
 歳2段階 戦闘命令をうける前の集結区域において
 第3段階 戦闘命令をうけてから攻撃開始まで
 第4段階 攻撃戦闘開始から結束まで
 第5段階 戦闘結束後の占領政策


 朝鮮人民軍はこの5つの段階をふんで計画的に南進したことがこの文書によってはじめて手にとるようにわかった。
 この文書のだされた6月13日といえば、このころまでに民族保衛省から各師団にたいして38度線近くへの南下指示が下され、各紙団がいっせいに移動しはじめる時期である。したがって、厳密にいえば、北の南進は1950年6月25日の早暁ではなく、この南への移動からはじまったというべきであろう。38度線をこえて南に突入するのは、その延長線にすぎなかったともいえる。南下の開始からすべてが秘密のうちにおこなわれ、秘密防止策が徹底してとられた。

 
 この「戦時政治文化事業」も緊迫したふんい気を反映してきわめて緊張した筆づかいで書かれている。第1段階の行軍時から逃亡者や投降者の防止に腐心している。いよいよ南に突入するという段階になって兵士のあいだにも動揺が高まり、戦闘忌避現象もすくなからずあったことをうかがわせている。つぎのように書かれている。

 規定どおり秘密保持を厳格におこなうために昼間は偽装を徹底的におこなうこと(人員、馬匹、各種の重武器およびその他いっさいの装備にたいして)。とくに夜間行軍時には、軍事的秘密に属する防音、防光を徹底的におこなうこと。行軍中敵機来襲などいったん有事のさいには指揮に絶対服従するよう保障するすること。また行軍中は秘密性をおびた軍事上の話を厳禁すること。(中略)
 休息時間、とくに夜間の暗闇を利用してこころみられる逃走事件を未然に防止するためにあらかじめ配置された熱誠分子を動かして、休息時と出発時においてとくに責任をもって人員を綿密に調査し、掌握すること。


 第2段階(略)

 第3段階は、戦闘命令をうけてから攻撃開始までの行動がしめされている。動員大会を開き、部隊旗の前で勝利を決意する宣誓をおこなう。塹壕のなかでは敵愾心を高めるための話しあいをおこなう。大隊や中隊単位で党員総会や民青同盟員総会をそれぞれ開き、思想動員をおこなう。
 いよいよ攻撃開始1時間前となる。こうのべている。
 攻撃開始1時間前に軍務者会議を中隊、小隊単位で招集する。中心スローガンを示し、上級から下達された激励文によって、高度の愛国的思想と革命的英雄主義、および三猛戦闘作風へと鼓舞激発させること。
 三猛とは猛打撃、猛突撃、猛追撃のことである。中国人民解放軍の用語である。


 第4段階、ついに攻撃は開始された。猛烈な砲撃がはじまる。相手側も反撃の火ぶたを切る。中隊政治委員の文化副隊長が前面にでてきて叫ぶ。
「ソミョルハラ(消滅せよ)!、ソミョルハラ!ソミョルハラ!」
 こうした適切なスローガンを唱和させてすべての戦闘員を鼓舞激励すること、と記している。

 また、「敵の猛火力のもとでわが軍部隊が前進をはばまれたり、敵の不意打ちにあったとき」には、中隊、大隊、連隊の文化活動家を派遣したり、責任者みずから出ていって局面を打開せよとのべている。
 捕虜のとりあつかいについても指示している。


 敵を捕虜にしたときには、個別に、または、代表などから敵情について材料を集め、指揮に協力しながら一定の人員を配置し、後送または地方に安置させること。捕虜たちの生命や人格にたいして侮蔑してはならず、所持品についてはいささかもこれを損なってはならない。

 第5段階
(略)

 ・・・(以下略)

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