日本では、ようやく立春を迎えて、寒さも多少和らいだ感じになっているが、
米国は、去年と同様、大寒波に襲われ、交通機関が軒並み麻痺する状況になっている模様である。
いやはや困ったことになったのは、6日から米国に行く予定になっているからである。
今のところ、シカゴやニューヨークが大雪でダウンしているらしく、
幸い、滞在先になるワシントンDCは、そこまで悪い状況にはなっていないそうだが、
去年の不運をつい思い出してしまう。
去年も、ちょうど同じ時期に米国へ出発したにもかかわらず、
ワシントンDCは、100年ぶりだかの大雪で、空港閉鎖となってしまい、
やむなく飛行機はシカゴに降り立って、一日後、何とかDCに入ることができた。
今年もそうなってしまわないか少し心配になってきた。
念のため、ワシントンDCの天気予報を見てみると、
向こう一週間は、おおむね晴れとなっているので、滅多なことはないと期待しているが、
何といっても、そこはいつものアメリカである。
当日になってみないと分からない。
航空運賃や宿泊費が安いので、どうしても訪米にはこの時期を選んでしまうのだが、
こうしたリスクが付きまとうのはちょっと勘弁してほしい。
しかも、今回は全額実費なので、一日たりとも無駄にしたくないにもかかわらず、
現地で大雪をくらって、交通機関はもとより、NARAが閉鎖となったら、
一体全体、何のために遠路はるばる来たのか分からなくなる。
てるてる坊主でも持っていった方がいいかもしれない。
さて、話は全然変わるが、元韓国大統領の金大中氏がノーベル平和賞を獲得した際、
その裏側で、韓国・国家情報院の受賞工作が展開されたことを暴露する手記が出版されていたので、
紹介しておきたい。
金基三/荒木信子訳
『金大中 仮面の裏側 元韓国情報部員の告発』
草思社、2011年
この中で指摘されているのは、金大中氏のあくなき名誉欲である。
元々、金大中氏は、朴政権下において、民主活動家として活躍し、
1970年代後半、拉致事件に巻き込まれて、日本でも一躍、有名となったが、
大統領就任後、ノーベル平和賞の受賞を強く望むようになり、
「太陽政策」を世界的にアピールしたり、日本人拉致に関与した工作員を北朝鮮に返還したりするなど、
両国の和解に向けたポーズを前面に押し出し続けた。
さらに、南北会談を実現するために、金正日に15億ドルもの賄賂が送金され、
結果的にそれが北朝鮮の核開発資金となったことも、本書では指摘されている。
著者は、国家情報院の元工作員で、この事実を2003年にインターネット上で暴露した人物である。
その後、弁護士資格を取得し、2008年、米国に政治亡命を果たした。
本書の内容は、すでに各種の報道で伝えられている部分も多いので、
目新しい部分は少ないかもしれない。
しかし、本書は、著者が国家情報院で経験したことに関する回顧録でもあり、
情報部員として採用された後に受けた訓練教育や他国との情報協力などについて、
多少なりとも言及されており、
これまであまり知ることのなかった韓国の情報活動を垣間見ることができる内容になっている。
特に北朝鮮情報を入手するために、東欧諸国との情報関係の強化に力を入れており、
そうした国々の情報機関スタッフを韓国に招待した上で、
経済開発や技術支援と引き換えに、北朝鮮関係の情報を提供してもらっていたようである(pp. 167-170)。
だが、こうして手に入れた情報が十分に生かされたわけではなく、
金大中氏にしても、その前任者である金泳三氏にしても、
自分にとって都合のよい情報しか興味を示さず、
北朝鮮政策に反映されることはなかったのである。
結局、「太陽政策」とは、ノーベル平和賞を受賞することによって、
国民からの尊敬と崇拝の念を独占しようと目論んだ金大中氏の野心の産物にほかならず、
死に体だった北朝鮮・金正日体制の息を吹き返させただけの代物であったとしている。
「太陽政策」の歴史的評価は、これでほぼ決まりであろう。