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History, Strategy, Ideology, and Nations

11月25日

2009年11月25日 | INTELLIGENCE
 米国の防諜機関といえば、連邦捜査局(FBI)が即座に想起される。
 実際には、軍部やCIAをはじめ、多くの政府機関に防諜活動を担当する部局が存在しているのだが、
 そうした政府機関とFBIが決定的に異なっている点として、
 FBIのみに逮捕権が認められていることが挙げられる。
 従って、当然、FBIと他の政府機関の間には、防諜活動を進める上でもアプローチ上の違いがある。

 例えば、FBIの場合、スパイ活動を同定すると、出来るだけ早く摘発に乗り出そうとする。
 これは、証拠隠滅や国外逃亡を未然に防ぐために、スパイの身柄確保が最善と考えるからであり、
 いかにも逮捕権を持つFBIらしい発想と言える。
 
 一方、他の政府機関では、逮捕権を持たないため、こうした方法でスパイと対峙することができない。
 それでは一体、どうするか。
 まずスパイを発見しても、すぐにはFBIへと通報しないで泳がせておく。
 これはスパイ容疑の人物が誰と接触し、どんな人間関係を構築しているのかを把握するためであり、
 そうしてスパイ網の全体像を明らかにしていくのである。
 場合によっては、スパイ本人とも接触を試み、様々な情報を提供しながら、
 実質的に二重スパイのような役回りにして、相手側の情報を獲得することもあり得る。
 FBIに通報するのは、二重スパイが発覚し、相手側から粛清の手が回ってきた場合や、
 スパイ網の全容が解明し、一網打尽で摘発する場合などであり、
 基本的には、「監視」が主な防諜活動の手段となっているのである。

 ところで、日本には「スパイ防止法」と呼ばれる法律がない。
 従って、現時点において、スパイ活動を理由に逮捕することは不可能であるため、
 日本ではもっぱら非FBI型の防諜活動が実行されることになる。
 
 最近、NHKの土曜夜に「外事警察」というドラマが始まった。
 作家の麻生幾氏が原案に参加しており、
 まさしく「監視」を手段にした防諜活動の様子を、緊迫感に満ちたストーリーで上手に描いている。
 この分野に関心のある人には面白い内容となっているので、お勧めしたい。