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History, Strategy, Ideology, and Nations

11月26日

2009年11月26日 | NEWS & TOPICS
 最近、新聞や雑誌で見られる外交評論において、
 米国と中国を軸にした世界秩序構想を「G2論」として紹介するものが増えている。
 ちょうど北京オリンピックが開かれる前、
 中国の経済成長もオリンピックと同時に峠を過ぎると予測していたにもかかわらず、
 昨年秋のリーマン・ショックによって、先に米国の方が倒れてしまったため、
 にわかに活況だった中国脅威論も後退していくと同時に、
 中国との連携を提案する議論が台頭してきたみたいである。
 「勝てない相手ならば、手を組むべし」というのは、米国の伝統的な外交戦術であるから、
 今回のG2論も、そうした発想に由来しているものと考えられる。

 但し、中国の台頭がこのまま続くとは誰も考えていないのも確かであり、
 今後、元の切り下げ要求が高まり、それが実行されるようになると、
 現在のように比較優位を維持することができないため、競争力低下を免れることは難しいはずである。
 それまでに中国が先進国並みの技術力を持っていれば、状況打開の目途は立つかもしれない。
 だが、現状ではまだ、そうした技術を獲得するには至っていないため、
 持続的な経済成長への期待は遠のかざるを得ない。

 そうなった場合、中国はなかなか難しい岐路に立たされることになる。
 なぜなら、中国共産党による支配の正統性に対して、人民から徐々に疑義がもたらされるからである。
 元来、その正統性は三つの要素から構成されていた。
 第一は、共産主義というイデオロギー的な正統性である。
 だが、これは実質上、国家資本主義となった現在、正統性はすでに失われてしまっている。
 第二は、経済成長という神話による正統性である。
 政治的不満があっても、庶民の生活が豊かになれば、ある程度は我慢することができる。
 だが、もしこれが崩れるとなったら、残る正統性は第三のナショナリズムしかなくなってしまう。
 その場合、中国は国民の不満を国外の脅威によって代替することになるため、
 日本を含めた近隣諸国は、そうした中国に慎重な対応を行なっていかなければならない。
 また、地域格差の問題が浮上して、中国各地で共産党支配への挑戦が始まるかもしれない。
 
 先日のオバマ訪中では、G2の連携が強く謳われたが、
 米国は政権が交代しても、中国の軍拡を決して過小評価していない。
 そのため、これで世界は米中二極の時代に入ったと早合点するよりも、
 中国経済の推移と米中の軍事バランスを見据えながら、今後の動向を見ていくことが必要だろう。