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本音と建前の板挟み

2010年12月16日 | NEWS & TOPICS

 数字に表れている以上に、大学生の就職活動は厳しいものになっているらしい。
 すでに前年度の大卒内定率が60%を割り込んでいることは知られているが、
 今年度もまた、同様、もしくは、それ以上の厳しさであることは、
 実際に就職活動を行なっている人たちの声を聞くと強く感じられる。
 多くの大学では、就活セミナーが盛況で、面接の模擬練習やエントリーシートの添削指導など、
 きめ細かいケアが行なわれているようだが、
 その反面、思うように内定が取れないことから、鬱状態になる学生も少なくないらしく、
 カウンセリングに力を入れる大学もあると聞いている。
 本当に大変な時代になったと改めて思い知らされる。

 無頼を気取っている人は、就職ごときで気を病むなんて馬鹿げていると言うかもしれない。
 実際、テレビのコメンテーターには、そうした発言を繰り返す人もいる。
 確かに、当世の学生気質としては、野心的というよりも安定を好む傾向が強い。
 それゆえに、その安定が崩れることに過敏に反応し過ぎる部分があることは否定できないと思われる。
 企業の合同説明会においても、大手企業に学生が殺到する一方で、
 中小企業のブースには閑古鳥が鳴いているという状況は散見されているし、
 何といっても人気職業のトップに公務員が挙げられていることは、
 そうした気質をよく表わしていると言えるだろう。
 現下の就職難において、選り好みをしている場合ではないのだから、
 大手企業ばかりではなく、手広く企業を訪問して、
 チャンスをつかむくらいの気概が欲しいと思うのは、もっともなことではある。

 だが、それがあくまで建前にすぎないことを、現在の学生は知っていると言わなければならない。
 なぜなら、家に帰ると、二言目に親から聞かされるのは、
 どうして公務員を目指さないのかといった「助言」であったり、
 運良く中小企業から内定をもらったとしても、
 どうしてそんな無名の会社に勤めなければならないのかといった「愚痴」であったりするからである。
 もちろん、それが親心から発せられたものであることは理解しているが、
 世間に流布される建前と親の本音の間に立って、
 真面目な学生ほど板挟みの状態に置かれてしまうのである。

 親の言うことなど無視すればよいではないかというのは正論であろう。
 おそらく以前の世代と比べて、はるかに厳しくなった就職活動の実態を知っているのは、
 紛れもなく学生自身であり、そうした実態を知らない親の助言に説得力がないことも分かっている。
 しかし、どうも見ている限りにおいて、
 学生自身は、自分なりに現実に対処しながら頑張っているけれども、
 その合間に親が何かと干渉して、せっかくの意欲を失わせている部分は大きいように思う。
 とりわけ内定が取れない状況が続くと、子供の就職活動に親が乗り出してきて、
 会社訪問にまで付き添ってくることもあるという。
 こうなってくると、子供が親離れ出来ていないのではなく、
 親が子離れ出来ていないのであって、
 過保護というよりも過干渉というべきであろう。
 
 いまや大学の入学式でも、学生席より保護者席の方が多く設置されるという時代である。
 親にとって、子供の成長は何よりの喜びであるが、
 親のエゴを無下に押しつけることは、子供にとってプラスにならない。
 まさに書いて字のごとく、親として見守ることが大切なのだと気づくべきなのであろう。