くりぃーむソ~ダ

気まぐれな日記だよ。

ニンジン(77)

2019-01-11 22:05:07 | 「ニンジン」
「なにがおかしい」と、オレは怒ったように言った。「ひまつぶしに来たんじゃないんだ。おまえが教えてくれるってのは、なんなんだ」
 泥棒女は、口元に笑いを残したまま、射るような目でオレを見た。

「あんた、自分がどんな事件に関わったのか、わかってる?」

「近所のじいさんの埋蔵金探しさ」オレは、とぼけて見せた。
 と、泥棒女は眉をひそめ、神妙な顔で言った。
「狙われてるのよ」
「目の前の怪盗にか? おあいにく様だ。そんな財産は持っちゃいない」
 彼女はこちらを見据えたまま、背もたれにゆったりと体を預けながら、怒ったような口調で言った。
「とぼけないで。知ってるのよ。あんたが誰と会い、どんな仕事を頼まれ、どこに行き、どんな宝物を手に入れたのかも」
「おまえに、なんの関係があるんだよ」と、オレは言った。
「大ありよ。あんたがわたしを助けたことで、良くも悪くも動き始めたの」と、彼女は言った。「いい、杉野ってのは、闇じゃ有名な武器商人なのよ。あんたに助けてもらったあの日、わたしは杉野の店にある地下室へ潜ったの。取引の証拠を見つけるために」
「ははん」と、オレは言った。「近頃の泥棒は、警察の真似ごともするのかい?」
「――事情があるのよ」と、彼女はワインを口に運びながら言った。「だけどそれは、あんたには関係ないわ」
「そりゃそうだ」と、オレは言った。「泥棒がなにを盗もうが、泥棒の勝手だからな」
「真面目に聞いて」と、彼女はテーブルを小突きながら言った。「わたしはそこで、火薬臭いコレクションの山を見たわ。そしてその中で、彼を見つけたの。あなたの顎を叩いて病院送りにした、カレよ」
「信じられないね」と、オレは言った。「――夢でも見てるんじゃないのか」
「あんたの現実にそんな事実はなくても、確かに実在している事実なら、それを現実とは言わないの?」
「なあ」と、オレは息をついて言った。「こんな話、堂々としててもいいのかよ」
 女がはっとして顔を上げ、いたずらっぽく、オレをのぞき見ながら言った。
「この店にいる人達が、みんな部外者だなんて、どうしてわかるの」
 オレは、店の中を見回しながら、声を抑えて言った。

「――それって、誰か捕まえられてた奴がいたってことか」

「いいえ、違うわ。カレは改造人間なの。サイボーグね」
 耳を疑った。
ジャンル:
小説
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