くりぃーむソ~ダ

気まぐれな日記だよ。

ニンジン(80)

2019-01-14 20:49:54 | 「ニンジン」

 ぽかんとするしかなかったオレに、彼女が言った。
「ネームプレートぐらい、確認してから話をするのね」
「あそこに、いたのかよ」オレが言うと、彼女が言った。
「答える義務はないわ」
「――大いにあるさ」と、オレはテーブルに身を乗り出して言った。「そんなミスを指摘するために、ここに呼び出したわけじゃないだろ」

「なにを知ってるんだ」と、オレは言った。

 ふふん――と、泥棒女がいたずらっぽく笑った。
「あとはただ、持ち出された書類を見つけ出すことね。工藤が手に入れれば、杉野は工藤に逆らえなくなる。――最後のカードは、あなたが握ってるのよ」
「多田さんが命がけで届けようとしたプレゼントを、おまえはとっくに知っていたってことか」オレが言うと、泥棒女はとぼけるようにうなずいた。
「しがない探偵が首を突っこんでいるのを知れば、乱暴な連中が血相を変えて取り返しに来るだろうな――」
「わかったでしょ」と、彼女は言った。「あなたは大怪我をする前に、貸してあげた拳銃を持って、警察に保護を頼むのね。涙を流して事情を話せば、何日かはかくまってくれるはずよ」
「おいおい」と、オレは驚いて言った。「何日かで、決着がつくのかよ」
「わたしに隠し場所が暴かれたし、秘密にしていた特別な宝物も奪われたから、さらに詮索されないうちに、もっと深く地下に潜ろうとするでしょうね」と、彼女が言った。「もちろんわたしは、見逃してあげるつもりなんかないけど」
「――でもそれじゃ、すっきりしないな」と、オレは言った。
「まだわかってないみたいね」
「わかってないのは、おまえの方さ」と、オレは言った。「悪事を暴くだけじゃだめなんだ。どうやって表に出すかが、問題なんだ。おまえは所詮、影の存在だろ。数学の先生に比べりゃ、そりゃ頭は弱いし要領も悪い。でもこれは、やっぱりこっちの仕事だ」


「8」おわり。「9」につづく――。

 

ジャンル:
小説
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