百姓通信

自然と素直に向き合い、全身で風を感じて私は百姓しています。
①土づくり②循環型③無農薬・無化学肥料④永続性を大切に!

資本主義経済下における農業

2008-01-12 22:34:04 | Weblog
近代農業における米の収穫量は、16世紀のアジアの伝統的稲作の4倍に増加しているといわれており、ということは土地生産性は、ほぼ4倍に増加している。また、耕作の機械化によって、単位収量あたりの投入労働量も1/3に減少しているので、労働生産性も高められたといえる。近代的な資本主義経済においては、資本財の中で土地と労働が最重要視されていることから考え合わせてみると、農業の近代化は、資本生産性の向上として評価できるといえる。
ただ、土地と労働力を除いた資材で考えると、農業の近代化は、生産性を驚くほど低下させたことになる。それは近代日本の稲作において一定の収穫を得るために投入される資材は、アジアの各国で行われている伝統的稲作で使われる資材(種子、農具、肥料など)に比べて、桁違いに多くなってしまっている。項目別に経費を見ると、近代農業で使われる最も高価な資材は、コンバインやトラクターなどの農業機械で、その費用が、全体の1/3を占めるという。その他、化学肥料、農薬、燃料費がほぼ同程度かかる。すなわち、土地と労働を除いた資本財当たりの生産性は、近代化したことによって、逆に著しく低下したことになるといえる。
また農業の近代化を推進する過程で最も重大な見落としは、環境問題である。環境の変化は、経済に影響を与える段階にならない限り、資本生産性を左右しないため、当然バランスシートには記入されず、産業の変化を促す圧力に決してならない。こうして、資本主義経済の中で自浄作用が働かないまま、農耕地の環境破壊は、深刻さを増していったのである。
栽培作物は、市場価値が高く高収益が上げられる特定作物に偏ってくる。市場経済の下で生産性を高めるには、当然の措置とも言えるが、生物学的に見ると、生物の多様性の喪失という大きな代償が支払われていることを一方で認識しなければならない。 そして、私たちは今一度、生物の多様性をベースにし、資本材の投下を極力省ける農業の体系化を急がなければならない事に気づかされるのである。
資本主義経済下における農業は、エコノミーとエコロジーを両輪に再構築を急がなくてはいけなくなる。

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