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記念日や行事・歴史・人物など気の向くままに書いているだけですので、内容についての批難、中傷だけはご容赦ください。

「牧水忌」歌人・若山牧水の忌日

2006-09-17 | 人物
今日(9月17日)「牧水忌」歌人・若山牧水の1928(昭和3)年の忌日。
若山 牧水(わかやま ぼくすい)は、1885(明治18)年8月24日 、宮崎県東臼杵郡東郷村に生まれる。本名・繁(しげる)。
文学を志し延岡中学時代から短歌と俳句を始める。 18歳のとき、号を牧水とする。
早稲田大学在学中に北原白秋、土岐善麿、前田夕暮などの知遇を得て、文学的修練を積む。同大同級生の北原射水(後の白秋)、中林蘇水と親交を厚くし「早稲田の三水」と呼ばれる。 1908( 明治41)年早大英文学科卒業。7月に処女歌集『海の声』出版。「白玉の歯にしみとほる秋の夜の酒はしずかにのむべかりけれ」
と酒をこよなく愛し、また自然と旅を愛し旅にあって各所で歌を詠み、日本各地に彼の歌碑がある。1920(大正9)年、沼津の風土、とりわけ千本松原の景観に魅せられ、一家をあげて沼津へ移住。 19281(昭和3)年の今日、43歳の若さで亡くなった。
大の酒好きで一日一升程度の酒を呑んでいたといい、死因の大きな要因となったのは肝硬変であった。また、情熱的な恋をしたことでも知られており後に妻となる太田喜志子と知り合う前の園田小枝子との熱愛は有名なエピソードだそうである。
今日は、そのようなエピソードについては触れない。関心のある人は、以下参考に記載の「恋歌 恋句」の中の34. 若山牧水など見られるとよい。
日本の短歌史に偉大な足跡を残した国民的歌人「若山牧水」。牧水同様、お酒をこよなく愛している私の大好きな歌人であるため、牧水のことは、以前のブログ今日(8月24日)は「愛酒の日」(若山牧水誕生日)でも書いた。そこでは、特に、 牧水と酒にまつわることを中心に採りあげて書いたので、今回は、お酒の事は、横に置いておき、丁度、秋なので、秋の歌に触れながら牧水の歌について書いてみよう。
「秋草の花のうち、最も早く咲くは何であらう。萩、桔梗、などであらうか。」
 「桔梗も花壇や仏壇で見ては、厭味になりがちである。野原のあをあおとした雑草のなかに、思ひがけない一輪二輪を見出でた時が本当の桔梗らしい。」
牧水は、「秋草と虫の音」の一節にも書いているとおり、飾られた花、派手な花より、自然の野にひっそりと咲いている花を愛でている。
9月の今頃からは、コスモスの花が咲き始める頃であり、「秋桜」とも書くように秋を代表する花だが、、「秋草と虫の音の一節」の中でも、いろいろろと秋の花のことを書きながら「自分の好みからか、いつ知らず私は野原の花ばかりを挙げて来た。今、考へてみると不思議に私はコスモスの歌を作つてゐない。」と書いているとおり、余り派手な明るい花は好みではないようだ。そこには、万葉の歌人的な感傷が見られる。
ただ、「萩も夏萩などがあつて、梅雨あがりのしめつた地(つち)に咲き枝垂れてゐるのを見る。そのせゐか、『秋』といふ感じから、ともすれば薄れがちである。」として、「では、最も早く秋を知らせるのは何であらう。私は先づ女郎花(をみなへし)を挙げる」としている。
又、「この花ばかりは町中を通る花屋の車の上に載つてゐてもいかにも秋らしい。同じ車の上にあつて桔梗なども秋を知らせないではないが、どうもそれは概念的で、女郎花の様に感覚から来ない。ましてこれが野原の路ばたなどに一本二本かすかに風にそよいでゐるのを見ると、しみ/″\其処に新しい秋を感ずる。 この花、たゞ一本あるもよく、群つて咲いてるのもわるくない。をとこへし、これは一本二本を見附けてよろこぶ花である。あまり多いとぎごちない。」として、
「女郎花咲きみだれたる野辺のはしにひとむら白きをとこへしの花」と詠んでいる。
オミナエシのオミナは、本草を女性になぞらえた言葉だそうで、花は小さく黄色で毛が少なく、しかも草丈も高くない。近隣種のオトコエシは、花が白く毛があり、全体的に粗剛で男性的であり、これと対照をなすもの。万葉集の中で歌われているヲミナヘシに「美女」を意味する「ヲミナ」が冠せられたのは、同属の植物に男性的なオトコエシがあり、それとの対比で、この命名となったものだそうだ。牧水はそのような事を知った上で、男性的な花より「美女」を意味するオミナエシを愛でているのだろうね~。(このオミナエシのことは、以下参考に記載の「オミナエシ 女性的な細花が群生、上に平らな花序を作ることに因む」を読むとよく分かる。)
万葉集には、3首に1首以上の割合で植物が詠み込まれているが、その中でも、秋の花としては、山上憶良が、
「秋の野に咲きたる花を指(および)折り 
 かき数ふれば 七種(ななくさ)の花
萩の花 尾花 葛花 瞿麦の花 女郎花 また藤袴 朝貌の花」
と詠んでいるように、「秋の七草」が称賛されている。
このなかでは、萩がトップに詠まれており、「女郎花 」も5番目に含まれている。
牧水は、「秋草と虫の音の一節」の中で、「秋のはじめから終りまで、そのときどきに見て見飽かぬのは薄であらう。」として、
「わが越ゆる岡の路辺のすすきの穂まだ若ければ紅ふふみたり」
の頃もよく、十五夜十三夜のお月見に何はなくともこの花ばかりは供へたく、また、秋もいつしか更けて草とりどりに枯れ伏したなかにこの花ばかりがほの白い日かげを宿してそよいでゐるのも侘しいながらに無くてはならぬ眺めである。・・・としている。
「薄」は「ススキ」であり、憶良の「秋の七草の歌」では、萩の花の次に「尾花 」として詠まれている。この「尾花」という名前は「薄の花」の形が動物の尾に似ていることからきたものという。「花薄」ともいわれるそうだ。「尾花」は萩の次に詠まれている。
だが、万葉集に、以下のような歌も詠まれている。
「人皆(ひとみな)は 萩を秋と言ふよし 我れは 尾花が末(うれ)を 秋とは言はむ」(作者未詳)
みんなは萩を見て一番秋らしさを感じると言うが、私は尾花こそ秋の花だと言いたい・・・といった意味だろう。風になびく黄金色の花穂が優雅で美しい。秋の風情を感じさせる。万葉集において薄を詠んだ歌は45首もある。
「秋の野の 尾花(おばな)が末(うれ)の 生(お)ひ靡(なび)き 心は妹(いも)に 寄りにけるかも」(柿本人麻呂)
薄が風になびく様子を自分の心が恋する人になびく様子に掛けた優雅で美しい歌である。万葉の人々も薄が風になびく優雅な様子に美しさを感じたのであろう。ススキはハギとともに、十五夜に飾られる代表的な草花だ。秋の風情を最も感じさせる。
牧水は、「秋草と虫の音の一節」の中で、「薄の花を虫にたとへたならば先づこほろぎではあるまいか。さほどに際立つたものでなく、サテいつ聞いてもしみ/″\させられるはこほろぎである。」といっている。この詩や文を読んでいると、牧水の考え方がなんとなく分かったような気がする。
牧水は酒と共に自然を愛し、旅を愛しそして、人も愛しているが、多くの歌には深い孤独の影も感じる。そして、牧水の歌の中には「国」を詠んだものも多い。有名な歌に「幾山河越えさり行かば寂しさのはてなむ国ぞ今日も旅ゆく」がある。国を詠んだ歌には、以下のようなものもある。
「ときめきし古しのぶこの国のふるきうつはのくさぐさを見つ」
この歌の「ときめき」、「いにしえ」、「古い器たち」、それらを作り育んできたこの国の懐かしい風情は牧水には、ただひたすらに「なつかしき国」であり、また「寂しさのはてなむ国」であり、そして、その国は、信濃の国だとか豊後の国とかいったものであろう。その国の山河や草木に自分の国を想ったのだろう。それは、なにか、中世の歌人が万葉集の中に自然や草木を詠んだ想いと共通しているかもしれない。
先の「幾山河・・・」は1907(明治40)年6月、牧水が東京から郷里の宮崎へ帰省するとき、岡山県阿哲郡二本松峠で作ったものだそうだ。この歌を含め、牧水の有名な歌3首に古関裕而が、40年後の1947(昭和22)年作った歌が、「白鳥の歌」(作詞:若山牧水、歌:藤山一郎) で、明治時代の唱歌を思わせるような格調高い作品である。
この歌は、昭和22年の3月連続ラジオドラマ『音楽五人男』の挿入歌として作られたものだそうで、ここでいう五人男とは藤山一郎の他古川ロッパ、渡辺篤、高田稔、相原巨介のことだそうだ。この歌は、同年6月映画化された東宝の同名作品の主題歌としても使われたらしい。白鳥の歌は、当時、高校の音楽教科書にも使われている。
歌詞は、皆さんご存知のものばかりである。、古関自身が生前愛唱していた歌に独特の感性で曲をつけたもの。とってもすばらしいので、知らない人は是非一度、又、これを懐かしいと想う人も聞いてみてください。日本のよき時代のよき歌に感動しますよ。やはり、歌は詩がよくなくてはいけない。
白鳥(しらとり)の歌(作詞:若山牧水、作曲;古関裕而)↓
http://www.duarbo.jp/versoj/v-folksong/shiratorinouta.htm
(付け足し)このブログを書くのにいろいろ調べていて、先の東宝の映画『音楽五人男』で、「白鳥の歌」のほかのもう一曲、サトウ ハチロー作詞、古関裕而作曲の「夢淡き東京」が主題歌に使われているが、この明るい歌も、藤山一郎が歌って、戦後の廃墟となった東京の街に潤いをあたえた素敵な歌だ。今日のテーマーとは関係ないが、折角見つけたから、陸に記しておく。懐かしいと想う人は聞くとよい。(^0^)
「夢淡き東京」(作詞:サトウ ハチロー、作曲:古関裕而)↓
ttp://utagoekissa.web.infoseek.co.jp/yumeawakitokyo.html
(画像は、和歌山牧水と喜志子婦人。朝日クロニクル「週刊20世紀」より)
参考:
若山牧水
http://www.bokusui.jp/
若山牧水 - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%8B%A5%E5%B1%B1%E7%89%A7%E6%B0%B4
オミナエシ 女性的な細花が群生、上に平らな花序を作ることに因む
http://www.ctb.ne.jp/~akiizumi/soumoku/ominaesi/ominaesi.html
恋歌 恋句
http://homepage1.nifty.com/B-semi/library/koiku/koikumokuji.htm
二木紘三MIDI歌声喫茶
http://www.duarbo.jp/songs.htm
若山牧水のトップページ(「教育ネットひむか」)・「牧水カルタ・ゲーム」もあるよ。
http://himuka.miyazaki-c.ed.jp/db/kyouzai/public/wakayama/boku/
若山 牧水:作家別作品リスト(青空文庫)
http://www.aozora.gr.jp/index_pages/person162.html
松岡正剛の千夜千冊 『若山牧水歌集』若山喜志子選
http://www.isis.ne.jp/mnn/senya/senya0589.html
古関裕而研究 第1回/淡き東京、フランチェスカの鐘
http://www.aba.ne.jp/~takaichi/natumero/koseki1.html

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