ミュンヘンなんて、どこ吹く風

ミュンヘン工科大留学、ロンドンの設計事務所HCLA勤務を経て
群馬で建築設計に携わりつつ、京都で研究に励む日々の記録

細菌か毒気か

2007-01-18 01:33:07 | 帰国・修論+αな日々
週末に図書館が閉館してしまうので、ここぞとばかりに英国史の本を読んでいた。

感染病に関する「接触伝染説」すなわち細菌説と「非接触伝染説」すなわち毒気説に関する話が面白い。後者は今考えれば明らかに誤っているにもかかわらず、1830~1860年代においては多数派の学説だったらしい。その背景には、細菌感染説に基づく検疫制度を自由貿易上の足かせと考えた新興ブルジョワ階級が圧力をかけていたとも。加えて、黄熱病の研究者が人から人へ移る細菌を発見できなかったことからも、細菌感染説は「非実証的である」として攻撃された。その頃、ヨーロッパではコレラが流行している。このときに当時の検疫制度の無力さが露呈して、接触伝染説はますます劣勢になる。1849年には政府が公式に毒気伝染説を認めて、それに基づく国民健康法を制定して都市の衛生改革を行った。でも実際の施策は下水道の整備とかだったので、細菌が水の汚染で伝播するのを防ぐという意味では結果的に正しいことであったから、一定の抑制効果はあった。その後、顕微鏡によってコレラ菌が発見され、毒気を原因とする非接触伝染説は打ち砕かれたのだという。

当たらずとも遠からずってトコが、フロギストン説みたいなものですね。
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