はしだてあゆみのぼやき

シナリオや小説を書いてる橋立鮎美が、書けない時のストレスを書きなぐる場所

いち原作ファンとして映画版『この世界の片隅に』の見過ごせない改変について その10

2017年03月20日 | Weblog
10.おわりに

 だいたい言いたいことは書いたので、そろそろ終わりにしましょう。
 映画版に高く評価される点があるのは十分わかってます。それでも、原作漫画に愛着のある身としては、どうしてもひとこと言わずにはいられない点があったのです。
 全然、ひとことじゃ済みませんでしたが。

 最後に思い付きの小ネタとして、原作漫画に出ている米軍の伝単の中身を挙げておきます。(下巻 p.88)


 この文面の内容、どこかで見たような……。玉音放送から言い訳と自己正当化の部分を削除して、臣民に命令している部分だけを抜き出したらだいたい同じ意味になるんじゃなかろうか?

 なんていう爆弾発言を残して終わりたいと思います。
 これは真面目に検証していないので話半分に聞いてください。完全に一致しているわけではありませんが、論旨はとても似ているんですよ。

 どちらも一億総玉砕を散々煽られている日本臣民に「武装解除して粛々と降伏するように(勝手に武装蜂起するのだけは止めてくれ!)」と告げる目的は同じなので、似たような論旨、内容になるのは当たり前と言えば当たり前なんですよね。
 それなのに、片方は所持してるだけで逮捕され、もう片方はわざわざ謹聴させられるだなんておかしなものです。

 「(正義が)飛び去っていく」直前、落とし紙にされた伝単が風に煽られて飛んでいくのですが、果たしてあれは伝単だけを意味していたのでしょうか? ひょっとしたら論旨が同じ天子様のお言葉も空しく飛び去っていったという解釈も……。

 と、まあ、原作漫画はいくらでも深読みできる余地のある作品なので、ねちねち読み込んでいくと面白い新発見がまだまだ見つかると思います。


 きっと映画版のほうが今の世相にカスタマイズされていて、大ヒットにつながっているのでしょう。
 けれど、そういう世相に私は背を向けて、今は筆を置きたいと思います。