こんなのできた!

単調な生活に新発見を!  
日々の小さな出来事の写真日記

2009/02/20 『彼岸過迄』 ――― 漱石の告白

2009-02-20 20:15:54 | Weblog


小雨の朝。

日課・・・  ラジオ体操、ゴミ出し。
ラジオ・新聞・ネットのニュースは
「NY株終値 7,465ドル、6年4ヶ月ぶり安値」
日本は、15時の大引けで
「TOPIXが739円 バブル後の安値を更新。1984年1月5日以来、25年
ぶりの安値水準となった」


午後から晴れてきた。散歩に出る。


風が強い。帽子を手で押えて歩くが手を離した瞬間、帽子を飛ばされた。


竹が倒れてきて散歩道を塞いでる。

   
大木

漱石の『彼岸過迄』を読み終える。

■ 夏目漱石 『彼岸過迄』 ――― 漱石の告白

  『彼岸過迄』 獻辭
   此書を
   亡兒雛子と
   亡友三山の 
   靈に捧ぐ
          漱石全集 第二十一巻  『評論 雑篇』 p.195 岩波書店

『彼岸過迄』は明治45年1月2日から4月29日まで朝日新聞に掲載された。
修善寺の大患 のあと、翌年も大阪で講演中に倒れ入院。その後朝日新聞
の幹部のごたごたから辞表提出。そして最も愛していた
五女雛子の急死 
などで苦しみ悲しんだ。(年譜参照

こんなことから10月から連載の予定が延び延びとなった。漱石は読者・新
聞社に済まないという気持ちがあり、『彼岸過迄』連載にあたり1回分を費
やして『彼岸過迄に就いて』で「久しぶりだから面白いものを書かなければ
済まない」「自分らしいものが書きたい」と書いている。

  (冒頭)
   
敬太郎は夫程験の見えない此間からの運動と奔走に少し厭気が注し
  て来た。元々頑丈にできた身体だから単に馳け歩くといふ労力だけなら
  大して苦にもなるまいとは自分でも承知してゐるが、思ふ事が引つ懸つ
  たなり居据つて動かなかつたり、又は引つ懸らうとして手を出す途端に
  すぽりと外れたりする反間が度重なるに連れて、身体よりも頭の方がだ
  んだん云ふ事を聞かなくなって来た。で、今夜は少し癪も手伝つて、飲
  みたくもない麦酒をわざとポンポン抜いて、出来るだけ快豁な気分を自
  分と誘つて見た。
          
漱石全集 第十巻 『彼岸過迄』  p.9 岩波書店

漱石は一作ごとに構成や文体などを工夫していて、『彼岸過迄』では個々
の短編を重ねた末に、その個々の短編が相合して一長編を構成している。
後半にいくほど内容が深みのあるものになっている。

「雨の降る日」はひな子の死を、「哀愁」を湛えた美しさをもって、事細かに
描き出されている。
「須永の話」がこの作品のテーマ。
漱石は須永と千代子を「恐れる男と恐れない女」という言葉を用いた。
漱石は自分の生活体験を【須永】を通して深刻に告白している。

   
此日彼等は両国から汽車に乗つて鴻の台の下迄行つて降りた。夫か
  ら美くしい広い河に沿つて土堤の上をのそのそ歩いた。敬太郎は久し
  振に晴々した好い気分になつて、水だの岡だの帆懸船だのを見廻した。
  須永も景色丈は賞めたが、まだ斯んな吹き晴らしの土堤などを歩く季節
  ぢやないと云つて、寒いのに伴れ出した敬太郎を恨んだ。早く歩けば暖
  たかくなると主張した敬太郎はさつさと歩き始めた。須永は呆れた様な
  顔をして跟いて来た。二人は柴又の帝釈天の傍迄来て、川甚といふ家
  へ這入つて飯を食った。

          漱石全集 第十巻 『彼岸過迄』  p.169 岩波書店

上にでてきた柴又の帝釈天。私も訪れたことがある。


          
2005/02/06 撮影 帝釈天
川甚は帝釈天の裏手にある。
柴又・帝釈天で有名なのは

   
          2005/02/06 撮影
 
やはり「寅さん」。京成電鉄柴又駅前に立つ車寅次郎の銅像。 


          
2005/02/06 撮影 「とらや」
川甚は高いのでここへ入る。
寅さんになった気分で参道を行きかう人を見ながら草団子を食った。 

主な登場人物
p.9   【敬太郎】 田川敬太郎
p.10 【森本】  下宿人
p.29 【主人】  下宿屋の主人
p.28 【神さん】 下宿屋の妻
p.71 【占い婆さん】

p.36 【須永】 須永市蔵
p.170 【父】  須永の父
p.41 【母】  須永の母。田口の妻は妹、松本は弟。
p.174 【妙ちゃん】 須永の妹
p.222 【作】  須永の小間使い
p.258 【御弓】

p.39 【千代子】 田口千代子
p.41 【田口】   田口要作、千代子の父
p.41 【妻】    千代子の母
p.148 【百代子】 千代子の妹
p.177 【吾一】   千代子の弟
p.166 【佐伯】   田口の書生

p.99   【松本】 松本恒三
p.156 【御仙】 松本の妻
p.133 【咲子】 松本の長女
p.133 【  ?  】 松本の長男
p.133 【重子】 松本の次女
p.133 【嘉吉】 松本の次男
p.133 【宵子】 松本の三女

p.198 【高木】 百代子の友人の兄


■ きょうのタマちゃん




    のち  のち