日々の感じた事をつづる
永人のひとごころ
2月10日・三才の童子も知ってるが・・・
2月10日
三才の童子も知るが・・・
中国唐時代の禅僧に道林がいる。長慶4年(824)2月10日寂。
この人杭州の秦望山で修業していたが、老松の上に巣を作り、その巣の中で坐禅していた。それで人びとは彼に―鳥窠(ちょうか)和尚―のニックネームをつけたという。ところで道林和尚のいる杭州に、後に詩人の白楽天(本名・白楽易)が刺史(しし)となって来た。
白楽天は道林和尚の噂を耳にし、秦望山を訪ねた。老松の上の和尚を見るなり、白楽天はこう叫ぶ。
「禅師の住処、ハナハダ危険なり」白楽天は少しは仏教を勉強している。そこで彼は禅師と禅問答をやろうとしたのである。その白楽天の言葉に道林はすかさずこう応じた。
『太守そなたの方が危険なり』
松の上より地上のお前の方が危ないぞ・・・というのである。なぜか?なぜなら、松の上は仏教の世界だ。
地上は政治の世界。政治の世界には危険がいっぱいある。左遷、失脚、馘首(かくしゅ)、詰め腹、黒い霧、スキャンダル・・・。現に白楽天が中央を離れて杭州に来たのも左遷されてのことだったという。
和尚の返答はそこのところを衝(つ)いている。白楽天は(おやっ?!)と思ったらしい。あわてて別の問いを発する。
「いかなるか、是(これ)仏法の大意?」(仏法の根本の教えはなにか?)平凡な問いに思えるが、それだけに難しい問いでもある。
『諸悪莫作・衆善奉行(しょあくまくさ・しゅぜんぶぎょう)』・・・それが道林の返答だった。
『悪いことをするな!・善い事をしろ!』-ちょっと陳腐な答えだ。
それで白楽天は、(なあ~んだ・・・)と思ったに違いない。
「そんなことぐらい3歳の子供でも知っていますよ」彼はそう言った。(もう少しましな返答をしたらどうなんだ)と、心の中で思っていたようだ。
だが道林和尚はすかさずこう言った。
『しかし、実行するのは80歳の翁にだって難しいぞ』
まさに見事な道林和尚の返答ではないか。
これはもう完全に白楽天の負けであった。
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