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二・説得と対策

『実は私も改名しているのですよ、〔と言って別な名刺を渡した〕

“吉野武喜・たけよし・を吉野永人・ながと”にね。そして小さい頃から感が鋭くて、色々な予感や直感が適中するのです。

今回は本人が納得しないのでこれ以上は改名や撰名を奨めません。本来6ヶ月の試庸期間を経て、本採用してから保険に入るのですが、ご主人には直ぐ保険を掛けます。

船員保険と労災保険です。労災は1,500万円ですが、そのことを了解していただくため奥様に来ていただいたのです。承知していただけますね?』

「保険の事は全て会社にお任せいたします。良いようになさって下さい。お願いします」と保険料は会社の全額負担で保険に入っていただく事に奥様と本人の了解を得たのである。

もっとも、本人が撰名か改名をしてくれたなら、事故に遭うこともなく、労災保険など必要ないのであるが、本人が言う事を聞かない以上、又その危険性を「私が解っていて採用する」以上、保険に入って万全の備えをする他はないのである。早速社内の事務方から、異論が出された。

「社長、おかしいじゃないですか?社内規定で6ヶ月の試験採用中は船員保険をかけないことになっているでしょう?何故彼だけにかけるんですか?」

『彼の姓名の文字に有る画数が彼の生命を奪うように成っているんだよ!はっきり言うと近いうちに労災事故を起すようになっている。防衛の為だよ。9年前の小野龍志さんの事もあるだろう・・・直ぐ加入の手続きを取るように!』と強く指示した。

この阿部夫妻には小学校3年生と5歳の女の子がいる。ツイこの間まで北海道にいたようで、随分あちらこちらと短期に移動していたようである。当社は固定給に精勤割り増しの手当てを厚くして社員の労に報いていたのである。

彼は甲板員ながら、将来クレーン士になりたいという希望を出してきた
ので被航式の港湾工事用大型台船(幅25メートル、長さ70メートル、高さ3,5メートル)に固定した150トン吊り回転式クレーンのクレーン士の資格を、会社負担の経費で取るための勉強を始めてもらった。

期待に違わず、阿部健一さんは一生懸命に働いてくれていた。11月半ば、会社に来た奥さんの話では、

「今まで固定した給料を貰った事もなく、保険に入れてもらったこともありませんでした。初めて吉建工業へ入って安定して来たので、男の子が欲しくて今度三人目の子供をもうける事にしました」と言って喜んでいたのである。・・・後悔先に立たず、へ続く


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