本日の問題です(特実)。
誤植はご容赦願います
[特許・実用新案]
【問題Ⅰ】
甲は、コップ用の新規な形状の取っ手Hを自ら開発し、平成18年2月1日、Hを有しH以外の部分が周知の形状のコップAを日本国内の博覧会に出品した。さらに、平成18年7月1日、甲は、Aを博覧会へ出品したことについて意匠の新規性の喪失の例外の適用を受けて、意匠に係る物品を「コップ」として、Hの形状について部分意匠の意匠登録出願Xをした。
その後、甲は、出願Xの願書における意匠に係る物品、意匠に係る物品の説明及び意匠の説明の記載、並びに願書に添付した図面の記載から、明細書、実用新案登録請求の範囲及び図面を作成し、平成18年9月1日、出願Xをもとの出願とする実用新案法第10条第2項の規定(出願の変更)による出願として、Aの形状についての実用新案登録出願Yをした。出願Yに係る実用新案権は、平成19年3月1日、出願当初の明細書、実用新案登録請求の範囲及び図面の記載のまま、設定の登録がされた。
乙は、平成17年12月1日、Hと同一の形状のコップ用取っ手hを自ら開発し、平成18年6月1日までにAと同一の形状のコップa1の設計図及び金型を作成し、平成18年8月1日からa1の製造・販売を開始した。h及びa1は、乙によってa1の製造・販売が開始される日まで、乙以外に知られることはなかった。乙は、平成18年11月1日にa1全体の形状を小型にしたコップa2の製作を企画し、平成19年2月1日からa2の製造・販売を開始した。
乙によるa1及びa2の製造・販売を発見した甲は、乙に対して、a1及びa2の製造・販売について実用新案技術評価書を提示して警告した上で、平成19年10月1日、乙を被告として、実用新案権に基づきa1及びa2の製造・販売の差止めを求める訴訟を提起した。
乙は、その後もa1及びa2の製造・販売を継続している。
この設例において、当該訴訟における乙の主張について、以下の問いに答えよ。ただし、(1)(イ)、(1)(ロ)及び(2)は、それぞれ独立しているものとする。また、特に文中に示した場合を除き、意匠登録出願及び実用新案登録出願は、国際出願に係るものでも、補正後の新出願でも、分割又は変更に係るものでもなく、いかなる優先権の主張も伴わないものとする。
(1) 乙は、甲の実用新案登録に無効理由が存在するから、当該実用新案権を行使することができない旨主張することにした。
(イ) 乙は新規性欠如の無効理由について、どのような主張をすることができるか、必要があれば場合分けをして、根拠とともに説明せよ。
(ロ) 出願の経緯にかんがみると、乙は、新規性欠如及び進歩性欠如以外にどのような無効理由を主張することができるか、根拠とともに説明せよ。
(2) 乙は、甲の実用新案登録に無効理由が存在する旨の主張以外に、a1及びa2の製造・販売について甲の差止請求が認められない、と主張することができるか、根拠とともに説明せよ。
【100点】
【問題Ⅱ】
甲は、「多面体形状玩具」に係る発明についての特許第P号の特許権者である。
乙及び丙は、それぞれ、板バネからなる部品を備えた4面体形状玩具を製造・販売しており、このことを知った甲は、乙及び丙に対し特許第P号の特許権を侵害している旨の警告書を送付した。
乙は、甲を被請求人として、特許無効審判を請求し、その請求書において、「特許第P号の請求項1及び4に係る特許を無効とする。」との審決を求めるとともに、その理由として、新規性欠如のみを主張し、特許第P号の請求項1及び4に係る特許発明は、その特許出願前に頒布された刊行物Xに記載された発明である旨を記載した。また、丙はこれと同一の内容を記載した特許無効審判の請求書を提出した。乙及び丙の請求に係る特許無効審判の審理は併合された。
審判請求書の副本の送達を受けた甲は、特許第P号に係る特許請求の範囲のみについて、次のとおり、訂正を請求した。
訂正請求前の特許請求の範囲の記載
請求項1 弾性体からなる部品を備えた多面体形状玩具。
請求項2 弾性体がゴムである請求項1に記載の多面体形状玩具。
請求項3 弾性体が特定形状のコイイルバネである請求項1に記載の多面体形状玩具。
請求項4 弾性体が板バネである請求項1に記載の多面体形状玩具。
訂正の請求書に添付した訂正した特許請求の範囲の記載
請求項1 弾性体からなる部品を備えた4面体形状玩具。
請求項2 ゴムからなる部品を備えた多面体形状玩具。
請求項3 特定形状のコイルバネからなる部品を備えた多面体形状玩具。
ただし、訂正請求前の特許請求の範囲において、「コイイルバネ」が「コイルバネ」の明らかな誤りである以外に誤記はないものとする。
なお、訂正請求前の各請求項と、訂正した各請求項は、次のとおり対応する。
訂正請求前の請求項 訂正した請求項
請求項1 請求項1
請求項2 請求項2
請求項3 請求項3
請求項4
甲の訂正請求の後、意見を申し立てる機会を与えられた乙及び丙は、それぞれ、訂正した請求項1に係る発明について、その特許出願前に頒布された「4面体形状玩具」に関する刊行物Yを発見し、刊行物X及びYに記載された発明により進歩性が欠如すると考え、また、訂正した請求項2及び3に係る発明について、改めて検討したところ、いずれも刊行物Xに記載された発明により進歩性が欠如すると考えた。
この設例において、以下の問いに答えよ。ただし、(1)及び(2)は、それぞれ独立しているものとする。また、特許第P号に係る特許出願は、外国語書面出願でも国際出願に係るものでもないものとする。
(1) 甲の訂正請求に関して、以下の(イ)及び(ロ)について答えよ。ただし、訂正請求前の特許請求の範囲の記載は、出願当初のままであり、訂正した特許請求の範囲に記載された事項は、願書に添付した明細書に記載されているものとし、また、訂正した特許請求の範囲において、記載要件違反はないものとする。
(イ) 当該訂正が、①特許法上のいかなる事項を目的とするものであるか、及び、②訂正が認められるための要件を満たすか、必要があれば場合分けをして、訂正請求前の特許請求の範囲の請求項ごとに根拠とともに説明せよ。
(ロ) 乙及び丙は、訂正した各請求項に係る発明についての特許が成立しないようにするために、当該審判において、どのように対応し得るか、請求項ごとに説明せよ。
(2) 1通の審決書により、各審判の請求は成り立たない旨の審決がされた。その後、乙のみが審決取消訴訟を提起し、丙との関係では審決が確定し登録された。当該確定した審決の、乙のした特許無効審判の請求に対する影響について、理由とともに説明せよ。
【100点】
誤植はご容赦願います
[特許・実用新案]
【問題Ⅰ】
甲は、コップ用の新規な形状の取っ手Hを自ら開発し、平成18年2月1日、Hを有しH以外の部分が周知の形状のコップAを日本国内の博覧会に出品した。さらに、平成18年7月1日、甲は、Aを博覧会へ出品したことについて意匠の新規性の喪失の例外の適用を受けて、意匠に係る物品を「コップ」として、Hの形状について部分意匠の意匠登録出願Xをした。
その後、甲は、出願Xの願書における意匠に係る物品、意匠に係る物品の説明及び意匠の説明の記載、並びに願書に添付した図面の記載から、明細書、実用新案登録請求の範囲及び図面を作成し、平成18年9月1日、出願Xをもとの出願とする実用新案法第10条第2項の規定(出願の変更)による出願として、Aの形状についての実用新案登録出願Yをした。出願Yに係る実用新案権は、平成19年3月1日、出願当初の明細書、実用新案登録請求の範囲及び図面の記載のまま、設定の登録がされた。
乙は、平成17年12月1日、Hと同一の形状のコップ用取っ手hを自ら開発し、平成18年6月1日までにAと同一の形状のコップa1の設計図及び金型を作成し、平成18年8月1日からa1の製造・販売を開始した。h及びa1は、乙によってa1の製造・販売が開始される日まで、乙以外に知られることはなかった。乙は、平成18年11月1日にa1全体の形状を小型にしたコップa2の製作を企画し、平成19年2月1日からa2の製造・販売を開始した。
乙によるa1及びa2の製造・販売を発見した甲は、乙に対して、a1及びa2の製造・販売について実用新案技術評価書を提示して警告した上で、平成19年10月1日、乙を被告として、実用新案権に基づきa1及びa2の製造・販売の差止めを求める訴訟を提起した。
乙は、その後もa1及びa2の製造・販売を継続している。
この設例において、当該訴訟における乙の主張について、以下の問いに答えよ。ただし、(1)(イ)、(1)(ロ)及び(2)は、それぞれ独立しているものとする。また、特に文中に示した場合を除き、意匠登録出願及び実用新案登録出願は、国際出願に係るものでも、補正後の新出願でも、分割又は変更に係るものでもなく、いかなる優先権の主張も伴わないものとする。
(1) 乙は、甲の実用新案登録に無効理由が存在するから、当該実用新案権を行使することができない旨主張することにした。
(イ) 乙は新規性欠如の無効理由について、どのような主張をすることができるか、必要があれば場合分けをして、根拠とともに説明せよ。
(ロ) 出願の経緯にかんがみると、乙は、新規性欠如及び進歩性欠如以外にどのような無効理由を主張することができるか、根拠とともに説明せよ。
(2) 乙は、甲の実用新案登録に無効理由が存在する旨の主張以外に、a1及びa2の製造・販売について甲の差止請求が認められない、と主張することができるか、根拠とともに説明せよ。
【100点】
【問題Ⅱ】
甲は、「多面体形状玩具」に係る発明についての特許第P号の特許権者である。
乙及び丙は、それぞれ、板バネからなる部品を備えた4面体形状玩具を製造・販売しており、このことを知った甲は、乙及び丙に対し特許第P号の特許権を侵害している旨の警告書を送付した。
乙は、甲を被請求人として、特許無効審判を請求し、その請求書において、「特許第P号の請求項1及び4に係る特許を無効とする。」との審決を求めるとともに、その理由として、新規性欠如のみを主張し、特許第P号の請求項1及び4に係る特許発明は、その特許出願前に頒布された刊行物Xに記載された発明である旨を記載した。また、丙はこれと同一の内容を記載した特許無効審判の請求書を提出した。乙及び丙の請求に係る特許無効審判の審理は併合された。
審判請求書の副本の送達を受けた甲は、特許第P号に係る特許請求の範囲のみについて、次のとおり、訂正を請求した。
訂正請求前の特許請求の範囲の記載
請求項1 弾性体からなる部品を備えた多面体形状玩具。
請求項2 弾性体がゴムである請求項1に記載の多面体形状玩具。
請求項3 弾性体が特定形状のコイイルバネである請求項1に記載の多面体形状玩具。
請求項4 弾性体が板バネである請求項1に記載の多面体形状玩具。
訂正の請求書に添付した訂正した特許請求の範囲の記載
請求項1 弾性体からなる部品を備えた4面体形状玩具。
請求項2 ゴムからなる部品を備えた多面体形状玩具。
請求項3 特定形状のコイルバネからなる部品を備えた多面体形状玩具。
ただし、訂正請求前の特許請求の範囲において、「コイイルバネ」が「コイルバネ」の明らかな誤りである以外に誤記はないものとする。
なお、訂正請求前の各請求項と、訂正した各請求項は、次のとおり対応する。
訂正請求前の請求項 訂正した請求項
請求項1 請求項1
請求項2 請求項2
請求項3 請求項3
請求項4
甲の訂正請求の後、意見を申し立てる機会を与えられた乙及び丙は、それぞれ、訂正した請求項1に係る発明について、その特許出願前に頒布された「4面体形状玩具」に関する刊行物Yを発見し、刊行物X及びYに記載された発明により進歩性が欠如すると考え、また、訂正した請求項2及び3に係る発明について、改めて検討したところ、いずれも刊行物Xに記載された発明により進歩性が欠如すると考えた。
この設例において、以下の問いに答えよ。ただし、(1)及び(2)は、それぞれ独立しているものとする。また、特許第P号に係る特許出願は、外国語書面出願でも国際出願に係るものでもないものとする。
(1) 甲の訂正請求に関して、以下の(イ)及び(ロ)について答えよ。ただし、訂正請求前の特許請求の範囲の記載は、出願当初のままであり、訂正した特許請求の範囲に記載された事項は、願書に添付した明細書に記載されているものとし、また、訂正した特許請求の範囲において、記載要件違反はないものとする。
(イ) 当該訂正が、①特許法上のいかなる事項を目的とするものであるか、及び、②訂正が認められるための要件を満たすか、必要があれば場合分けをして、訂正請求前の特許請求の範囲の請求項ごとに根拠とともに説明せよ。
(ロ) 乙及び丙は、訂正した各請求項に係る発明についての特許が成立しないようにするために、当該審判において、どのように対応し得るか、請求項ごとに説明せよ。
(2) 1通の審決書により、各審判の請求は成り立たない旨の審決がされた。その後、乙のみが審決取消訴訟を提起し、丙との関係では審決が確定し登録された。当該確定した審決の、乙のした特許無効審判の請求に対する影響について、理由とともに説明せよ。
【100点】
審査基準?
実務知識も求められるということでしょうか?