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連結会計の進化・・・

2008-07-12 07:04:43 | 連結会計
連結とは、資本関係をはじめとしたヒト・モノ・カネで繋いだ個別企業の集
団が生み出した価値を数値化することを言う。企業はヒト・モノ・カネの経営
資源を別のある企業に投入することで経営を支配したり、経営に影響を及ぼす
ことができる。この影響力、支配力で企業をつなぐことで一つのグループが形
成される。自動車メーカーがサプライヤーやディーラーに資本参加などを通じ
て自社のグループを形成しているのを想像すれば解り易い。

 この「連結会計」という言葉は 1997年頃から新聞の紙面を賑わすようになり、
1999年には、連結ベースでの業績や概況を主に開示するようになった。日本で
は比較的新しいものである。

 それまでの日本の会計基準は個別の企業の状況を主に開示し、連結の状況は
あくまで補足に過ぎなかった。これは従来は商法や税法などのレギュレーショ
ンの問題や配当の支払いが親会社の単体の利益を原資としているなどの環境か
ら、ステークホルダーも親会社の単体の利益を見ていれば十分な情報が得られ
ると思われていたからだ。

 しかし、この結果、ステークホルダーの目を欺くようなケース(子会社を親
会社の従業員の受け入れに使用したり、子会社が利益操作の犠牲的な位置付け
になっているケース)が横行し、あげくの果てには持ち合いを利用した悪質な
連結はずしまでが行われるようになっていた。

 このことが銀行の不良債権の問題などで発覚し、日本の会計基準に対する世界
からの目が厳しいものとなった為、日本の会計基準も国際会計基準に歩調を合
わせることとなり、連結を重視するようになったのである。

 連結会計は企業グループの範囲をヒト・モノ・カネの関係で明確にし、その
グループが生み出している価値の数値化ができること、企業グループの経営に
全体最適を再認識させた点で優れた手法と言える。連結会計を導入したことで
グループ内の全体最適を図り、グループ内の各企業の役割等を再構築したこと
で業績が回復した企業も多いはずだ。

 では、連結会計とは具体的にどのような手続きをするのだろうか。

 例えば、以下のような取引があったとしよう。サプライヤーとディーラーは完
成車メーカーのグループ企業である。

     サプライヤー → 完成車メーカー → ディーラー
売上高    80        110        120
仕入高    60         80        110
利益     20         30 10

 この場合、連結上の利益はサプライヤーの仕入高60とディーラーの販売高120
の差額 60 である。途中のサプライヤーの売上高やディラーの仕入高は完成車
メーカーの仕入高、売上高と消去される。

 従来は、親会社である完成車メーカーの利益がステークホルダーの注目を集め
てきたが、連結会計が導入されることによって全体の利益である 60 の最大化
を図るようになったのである。

 系列の時代は、上記の例の様にサプライヤー、ディーラーと自動車メーカー
との間にヒト・モノ・カネの関係が有り、連結会計から導きだした企業グルー
プの価値とサプライヤーからディーラーまで自動車を生産・販売しているバリュ
ーチェーンが生み出した価値の合計が近い数値になっていただろう。

 しかし、系列という資本関係をはじめとしたヒト・モノ・カネの関係が崩れて
きてしまっている今日では、現在の連結会計制度では、系列から外れた企業を
捕捉することはできない。

 例えば、上記の例からサプライヤーが系列から外れたとすると連結上の売上
高は 120 のままだが、仕入高は 80 となってしまい、グループの利益は 40 に
なってしまう。仮に自動車メーカーが持つバリューチェーンが生み出した価値
が本来上記の60の利益だとすると連結会計からではバリューチェーンの価値が
導き出せなくなってしまっているのだ。

 では、どのようにすべきだろうか。

 これからの連結会計は今の連結会計を一歩進めた自動車メーカーが持つバリュ
ーチェーンに参加している企業を連結するような手法にすべきである。親会社
を中心とした単体重視の会計ではなく連結会計になったように、会計制度はビ
ジネスの仕組みに追いついていく必要がある。

 系列から外れ、資本関係がなくなったが技術提携をしているような会社もグ
ループの範囲に含めた会計制度、連結会計ならぬ、バリューチェーン会計を導
入すればそのバリューチェーンの価値を正しく会計数値に反映することができ
るのではないだろうか。連結会計の更なる深化に期待したい。

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