シニア花井の韓国余話

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【コラム】どこが「公正な社会」なのか

2011年06月22日 20時47分20秒 | Weblog
(韓国大手新聞、朝鮮日報 11.6.16記事抜粋)
 先日、検事長を最後に検察を退職したA弁護士は「世間というものが、自分の考えとは全く違うということに、退職して初めて気が付いた」と語った。法曹界も自分の認識とは異なっていたという。大きな事件は全て大規模な法律事務所が独占しているため、弁護士の個人事務所の運営にも影響を及ぼしていた。知人を通じて事件の弁護を依頼した人たちの話を聞き、A弁護士は改めて驚かされたという。依頼してきた人たちは皆、民事裁判であれ刑事裁判であれ「公正な裁判を受けさせてほしい」「公正な捜査を受けさせてほしい」と口にしたとのことだ。
 訴訟の当事者たちが「悔しい思いをすることのないよう、公正に事件を処理してほしい」と依頼し、高い弁護料を支払っているのが、今の法曹界の現実だ。言い換えれば、最も公正でなければならない検察・警察の捜査や裁判所による裁判を、当事者たちは不公正なもの認識しているというわけだ。偏った捜査が一方的に進められ、裁判も「裁判官に対し、記録をきちんと読むように依頼してほしい」と弁護士に求めるほど不信感が強いという。そんな現実を目の当たりにしたA弁護士は「韓国の法曹界は長い間過ちを犯していたと思うようになった」と話した。
 貯蓄銀行で発覚した不正融資などの事件も、韓国社会が公正な社会であれば起こり得ない事件だった、と国民たちは考えている。釜山貯蓄銀行は7兆ウォン(約5200億円)台の不正融資を行っていたが、その金は市民が、利子を1銭でも多く受け取ろうと思って銀行に預けた金だ。中には公職者の預金も含まれていたが、公職者が一般市民よりも多くの利子を受け取ったとの疑惑も浮上している。釜山貯蓄銀行が5年以上にわたって預金を横領し、全国で大規模な土地開発事業に手を出してきたことについては、監督当局も後手後手な対応に終始した。検察は昨年、1900億ウォン(約140億円)の違法な融資による納骨堂建設事業について、金融監督院の依頼を受け捜査しただけだ。そして、今回の事件が発覚した後、わいろを受け取った金融監督院の職員数人を逮捕した。検察が以前から貯蓄銀行による不正を認知し、捜査を行っていれば、被害がこれほどまで拡大することはなかっただろう。今回の事件が発覚した後、金融監督院と監査院は「自分たちに責任はない」と言い逃れ、検察も「われわれに何の過ちがあるのか」と主張しているが、検察には「職務放棄」の責任もないとはいえない。
 国民が「公正ではない」と考える出来事はこうして、毎日のようにどこかで起こっている。政府の幹部人事が行われるたび、特定の地域や学校の出身者、特定の教会に通う人たちが登用される実態は、今や飽き飽きするほどだ。経済界でも、大企業が横暴を働く中、公正な競争ができずに倒産する中小企業が相次いでいる。大企業は莫大(ばくだい)な資金力を背景に不公正な競争を繰り広げ、基幹産業だけでなく、映画館やガソリンスタンド、飲食店、ベーカリーといった業界まで独占している。ある中小企業の関係者は、犬用ホテルを開設しようとしたが、大企業が同様の事業を行っているため、断念を余儀なくされた。現在の制度では、こうした不公正な行為を防ぐ手立てがない。大企業による不公正な競争について疑惑が浮上しても、監督官庁は「対岸の火事」としか見ていない。
 このような現状の中、政府はいつも「公正な社会」という言葉を繰り返している。しかし、常に「不公正」を目の当たりにしている国民たちは何を考えているのだろうか。「公正な社会」というスローガンは、いっそのこと引っ込めた方がいいかもしれない。              キム・ホンジン記者(社会部次長)


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