シニア花井の韓国余話

韓国交流50年の会社経営を引退しソウル定住の日本人が写真とともに韓国の案内をします。

【萬物相】結核患者を雇っていたファストフード店

2014年01月16日 01時00分38秒 | Weblog
韓国大手新聞 朝鮮日報 14年1月13日
 米国のある有名大学病院で朝から医師たちが集まり、最近入院したばかりの患者たちの病名について意見を交換した。ある患者の番になったとき、片方の肺の上部に丸く白い影が映ったレントゲン写真が提出された。これを見た医師たちは誰もが「初めて目にする珍しい病気だ」と思い、これを特殊な肺がんか肺炎ではないかなどと語り合った。その時米国に研修に来てその場にいたある韓国人医師が「これは肺結核だ」と指摘すると、彼は医師たちから「名医だ」と称賛された。この韓国人医師は心の中で「韓国の病院では毎日のように目にするごく普通の肺結核だ」とつぶやいた。
 韓国では毎年5万人の肺結核患者が新たに発生する。これは国民10万人に100人の割合だ。最近は甲状腺がんの患者数が年間4万人を上回ったとして「珍しくなくなった」と言われているが、肺結核の患者数は実は甲状腺がんよりも多いのだ。これは経済協力開発機構(OECD)加盟国の中ではもちろんトップで、患者数の割合は米国(10万人中3.9人)の25倍に相当する。ちなみに韓国で生まれた子どもは全員、結核予防のためBCGの接種を受けるが、米国では結核患者そのものが少ないため、BCG接種はすでに義務ではなくなった。米国ではこれまで結核感染が分かると患者を強制的に入院させ、これに従わない場合は身柄を拘束するなど、徹底した管理を行ってきたからだ。
 韓国でも結核の治療薬に耐性を示す患者に対し、入院を命令できる制度が3年前から導入された。耐性菌に感染すると、治療に必要な期間は3倍に伸び、また容易に完治しないため死亡率も高くなる。耐性菌患者を1人放置すると、1年に10-15人がその人を通じて菌に感染するという。ところがこれまで入院命令を受けた4000人のうち、実際に隔離治療を受けているのはそのわずか10%ほどだ。入院治療を支援するための予算が足りないため、入院命令に従わなくともこれを罰する方法がないからだ。
 結核患者の多くは今も地下鉄や路線バスを利用し、通りを普通に歩いている。入院患者もその半分以上は必要な場合に銀行、美容室、結婚式場など多くの人が集まる場所を普通に行き来する。ソウルのある有名ファストフード店では22歳の結核患者をアルバイトとして9カ月も雇っていたことがつい先日分かった。店の経営者はこの女性が結核に感染している事実を知りながら、レジや商品包装などの仕事をさせていたという。
 韓国に結核患者が多い理由は、まず保菌者の数が非常に多い上に、庶民の多くは密集して生活しているため、感染しやすい環境にあるからだ。若者も入試や就職などに伴うストレス、あるいは無理なダイエットなどで免疫力が低下しているし、結核に感染しやすい高齢者が増加しているのも原因の一つだろう。また何よりも結核を貧しい時代の古い病気として甘く見る傾向も根強い。米国では治療を怠った患者から結核に感染した場合、感染源となった患者に損害賠償を求めることができる。韓国は結核の発症率、有病率、死亡率に加え、耐性菌に感染した患者の割合まで全て1位だ。誰もが結核を感染する加害者にも、また被害者にもなり得ることを忘れてはならない。
金哲中(キム・チョルジュン)論説委員・医学専門記者





最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。