シニア花井の韓国余話

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【コラム】老齢基礎年金引き上げのために

2012年12月04日 10時22分27秒 | Weblog
韓国大手紙・朝鮮日報12年12月2日記事抜粋
 先日、一人暮らしの高齢者が集まって生活する「老人共同居住の家」(慶尚南道宜寧郡)を訪問した。子どもから毎月どれくらいの仕送りがあるのか尋ねたところ、83歳の女性はため息をつきながら「子どもたちもみんな退職し、孫たちに頼って生活している。そんな状況では私に仕送りなどしてくれない。孫たちに助けを求めるわけにもいかないし」と話し、別の80代女性は「子どもは4人いるが、まともに勉強させることができなかったため、みんな貧しい。公務員の末っ子だけは生活が安定しているが、それが理由で私は基礎生活受給者(生活保護受給者)になれない」と嘆いた。このように基礎生活受給資格のない多くの高齢者にとって「基礎老齢年金(老齢基礎年金に相当)」は命綱だ。
 基礎老齢年金とは、65歳以上の高齢者のうち、所得が下位70%までの人に現金を支給する制度で、2008年から導入された。支給額は国民年金全加入者の平均所得の5%で、現在は9万4000ウォン(約7100円)となっている。ところが、これが先週の国会保健福祉委員会で問題となった。与野党は現在の5%を6%、支給額を11万6000ウォン(約8800円)に引き上げることですでに合意しているが、保健福祉部(省に相当)が「手続きに問題ある」として待ったをかけたのだ。基礎老齢年金付則には「2028年までに国民年金全加入者の平均所得の5%から10%まで段階的に引き上げることとする。実際の支給額については国会特別委員会で調整する」と明記されている。つまり保健福祉部が待ったをかけたのは、与野党が国会で特別委員会を立ち上げずに引き上げようとしたためで、これは同法に触れてしまう。28年まで支給額を段階的に引き上げるには、制度の施行から5年目となる来年に6%にまで引き上げなければならない。しかし、国会はそれに必要な法律で定められた手続きを怠っていた。
 政府は基礎老齢年金について「将来的に大きな負担になる」と懸念している。高齢者人口は今年すでに580万人に達しており、2015年には660万人、20年には808万人に増加するため、それに伴って基礎老齢年金の受給者、支給額の双方とも急増するのは避けられないからだ。
 韓国は経済協力開発機構(OECD)加盟国のうち高齢者の貧困率が最も高い。しかしどういうわけか、韓国国内で高齢者が貧困状態にあることを認めてもらうのは非常に難しい。基礎生活受給者は現在、高齢者16人に1人以下のわずか38万人にも満たないが、その理由は「扶養義務条項」があるからだ。この「扶養義務条項」は、高齢者に子どもがいる場合は需給対象から外されることを定めており、子どもが実際に支援をするかしないかは関係ない。この問題について、政府の言い分は「政府を恨むのではなく、親の面倒を見ない子どもを恨め」というもの。しかし子どもが40代、50代になると、自分の子どもの教育費をまかなうだけで精一杯のため、親に生活費を支援する余裕などない。ましてや親が日常生活を送れないほど介護が必要な状況になると、高齢者施設などに入れざるを得ないのが実情だ。伝統的な「孝行」の精神など、随分前からなくなっている。
 国会が基礎老齢年金引き上げ問題に1日も早く決着をつけ、実際に少しでも手厚く高齢者を支援するには、上記のようにまずは特別委員会を立ち上げる必要がある。ただし、財源の問題については、年齢ごとに対象者の割合を決めて対応するしかない。80代は現在80%が需給しており、70代は70%、60代は57%だが、すでに与えられた受給資格をなかったことにはできないため、まずは来年65歳となる人から対象者を50%に抑えることなどが、今後の方向性として考えられる。
 政府は国会からの際限のない予算増額要求を拒否し、財政規律を守ったことを自慢したいかもしれない。しかし、福祉関連予算が一気にあふれるということは、逆にこれまで福祉をないがしろにしてきたことを意味する。そのため国会は、このような低福祉の現状についてまずは責任を感じるべきではないか。
金東燮(キム・ドンソプ)保健福祉専門記者





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