シニア花井の韓国余話

韓国交流50年の会社経営を引退しソウル定住の日本人が写真とともに韓国の案内をします。

サムスン電子好業績の陰で苦しむ国民

2010年09月12日 09時11分16秒 | Weblog
(韓国大手新聞、朝鮮日報 10.7.10記事抜粋)
 日本の経済産業省が6月公表した資料がある。サムスン電子とシャープの法人税負担(2008年)を比較したところ、サムスン電子は10.5%、シャープは36.4%だった。シャープが支払った法人税はサムスン電子よりも1500億円多く、その差は液晶パネルの亀山第2工場(三重県)に対する投資額を上回った。 同資料は、日本の法人税負担が重すぎるがゆえに、韓国との競争に押されてしまうと強調する内容だ。言い換えれば、サムスン電子は法人税負担が1500億円少ない分、韓国政府がサムスン電子のために工場を1カ所建てたに等しい計算になる。
 サムスン電子の好業績はとどまるところを知らない。四半期ごとに「過去最高」を達成し、今年の営業利益は20兆ウォン(約1兆4700億円)を超える見通しだ。一つの会社の利益としては、韓国人がこれまで目にしたこともないような金額だ。20兆ウォンもの資金があれば、売却がささやかれるウリ銀行を買収した上、外換銀行のような中堅銀行を買収することも可能だ。
 決断力ある技術開発投資、適切な組織管理、能力ある人材の採用など、サムスン電子の強みに文句を付けるつもりはない。世界的企業として成長する土台を自ら築いた努力は、高く評価されて当然だ。ただし、歓呼に沸くその陰で、誰かが犠牲になっているという事実も知っておくべきだ。
 安値で部品を納入する中小企業の悲鳴をひとまず無視しても、サムスン電子を世界的企業に育て上げたもう一つの要素は為替相場だ。同社は、現政権のウォン安政策で最大の利益を得た。
 李明博政権が発足した2008年2月25日、ウォン相場は1ドル=949ウォンだった。ウォンは現在、当時より30%も下落した。ウォン安が即座に企業の増収につながるという保障はないが、売り上げの9割を海外収入が占めるサムスン電子の場合は、ウォン安により利益を確実に増やしている。同じ期間に円相場は対ドルで20%前後上昇した。つまり、日本のライバル企業に比べ、価格競争力が50%上昇したと言える。不動の要塞を築いたかのように見えた日本企業が青息吐息なのも無理はない。
 韓国の景気回復は、ウォン安政策のおかげだと信じる人が多い。しかし、ウォン安が長期間続けば、どのような不平等が生じるかについて、真剣に考えようとはしない。
 ウォン安政策が招いた最大の災禍は資金の偏りだ。サムスン電子、現代自動車、LG電子、現代重工業など輸出中心の大企業に市中資金が集中してしまった。このように資金が集中した結果、銀行や証券会社の法人営業担当社員が、輸出企業に高金利を払うと哀願し、資金を預けてもらうといった構図が繰り広げられている。一方で内需型の企業は、資金を確保できずにいる。既に、貯蓄銀行と建設業界は構造調整に突入したが、これは昨年に続き2回目だ。両業種とも営業活動の大半は国内で行われる。先ごろ経営難の貯蓄銀行を救済するため、2兆8000億ウォン(約2050億円)の公的資金を投入するとの発表があった。一部企業の手に余る現金に銀行が群がり、一方では弱りきった企業に国民の税金がつぎ込まれているのだ。
 サムスン電子の低い税負担と経営難の貯蓄銀行救済につぎ込まれる税金には共通点がある。誰かがその分を負担しなければならないということ。そして、その税負担が好業績に沸く企業の社員から経営難の建設会社の非正社員にまで、無差別に分散している、という点だ。
 現政権は統一地方選挙で惨敗するや、庶民重視の政策を再び掲げた。景気回復を実感できない層の心情に同情する大統領の発言もあった。
 事実、国民の幸福度は現政権になって急速に低下している。経済的な豊かさが必ずしも国民の幸福感につながるとは言えないが、経済学者は国民の幸福度と最も関連性がある指標として、一人当たり国民所得を挙げる。
 韓国人の一人当たり国民所得は、2007年の2万1695ドルから09年には1万7175ドルに減少した。ウォン建てではやや増加したかもしれないが、ドル建てで見れば20%も減少したことになる。今年はやや回復したとはいえ、政権発足時よりも所得が増える可能性はない。
 李大統領は一時、国民幸福指数を設定すると公言していたが、いつしか立ち消えとなった。いくら優れた幸福指数を打ち出しても、国民が幸せを実感できるような成績は収められないからだ。
 少数の大企業だけが恩恵を受ける政策方向を改めない限り、庶民重視の看板は見かけだけで、国民の幸福度が高まるはずはない。


コメント    この記事についてブログを書く
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 韓国の教育熱(1) | トップ | 【コラム】住宅価格上昇に依... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

Weblog」カテゴリの最新記事