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春夜 蘇軾

2015-02-03 05:56:40 | 文学
北宋の詩人 蘇軾(蘇東坡)の有名な七言絶句です。

春夜

春宵一刻直千金
花有清香月有陰
歌管楼台声細細
鞦韆院落夜沈沈

春宵一刻直(あたい)千金
花ニ清香有リ月ニ陰有リ
歌管楼台声細細(さいさい)
鞦韆(しゅうせん)院落夜沈沈(ちんちん)

「訳」
春の宵は、ひとときが千金に値するほどである。
花には清らかな香りが漂い、月は朧に霞んでいる。
高楼の歌声や管弦の音は、先ほどまでのにぎわいも終わり、今はかぼそく聞こえるだけ。
人気のない中庭にひっそりとぶらんこがぶら下がり、夜は静かにふけていく。

「鑑賞」
宋代は、政治面では旧法党と新法党の政権争いがあったものの、商業は発達し、教育も普及した。しかも印刷術が開発されたことによって、詩文に接する層が急激に増え、詩はより身近なものとなった。そこには唐詩に見られた雄渾な風格や力のあふれた構成、するどいひらめきなどが薄れはしたが、日常の中に新しい詩材を見出したり、理知的な叙述、こまやかな感情をうたうという特徴が芽生えた。この詩は、ほんの十五分(一刻)ほどでも、春の宵は千金の価値があるという一句で有名。蘇東坡が宮中で宿直をしていたときの作だろう。昼間の華やぎのあとに訪れた静かな高楼の情景がしみじみと伝わってくる。中庭にぶら下がっているぶらんこ(鞦韆)をつつんで、春の夜は沈々とふけてゆく。

石川忠久 「NHK漢詩紀行」 日本放送出版協会
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