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月夜荒城の曲を聞く 水野豊州

2014-10-11 06:53:40 | 文学
水野豊州(1889~1958)は、大正・昭和の漢詩家。名は喜蔵、裁判所に奉職、退官の後、多くの詩を賦しました。ここでは、律詩を紹介します。江戸初期の漢詩人。

月夜聞ク荒城ノ曲

榮枯盛衰一場夢
相思恩讐悉塵煙
星移物換刹那事
歳月忽々逝不環
史編読続興亡跡
弔涙幾回几前灑
今夜荒城月夜曲
哀愁切々憶当年

榮枯盛衰ハ一場ノ夢
相思恩讐悉(ことごと)ク塵煙トナル
星移リ物換ハルハ刹那ノ事
歳月忽々逝イテ環ラズ
史編読ミ続ク興亡の跡
弔涙幾回カ几前ニ灑(そそ)グ
今夜荒城月夜ノ曲
哀愁切々当年ヲ憶フ

 「訳」
この世の栄枯盛衰は、その場かぎりの、わずかな間の夢にすぎない。時がたてば、お互い
の喜びの感情も、またうらみの情も、ことごとく雲か霞のように消えてしまう。星が移り、
事物が変化していくのも、ほんの少しの間のことである。歳月はどんどんと過ぎ去って帰ってこないのである。そうした無常の世の移り変わりを考えながら、栄枯盛衰の歴史のあとをふりかえると、そのはかなさが胸にしみ、自然と涙が出てくる。月の光の中で、「春高楼の花の宴、めぐる盃影さして、、、」と、あの荒城の曲を聞いていると、栄枯盛衰のあとがしのばれて哀愁切々と胸をうたれる。

「鑑賞」

栄枯盛衰は、主として豪族・武将・権勢家などの変転急なさまを表すのに用いられているが、本詩は、この命題をむしろ、歴史の場に登場しない一般の世の人びとのはかないさまに見たてている。

「吟剣詩舞道漢詩集 律詩・古詩編」 日本吟剣詩舞振興会
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