yoshのブログ

日々の発見や所感を述べます。

高名の木登り 徒然草

2016-06-05 05:04:42 | 文学
兼好法師(1283年頃~1352年頃)の「徒然草」百九段は長らく忘れていましたが、なかなか味わい深いので、次に記します。

高名の木のぼりといひしをのこ、人を掟(おき)てて(指図しての意)、高き木にのぼらせて梢を切らせしに、いと危く見えしほどはいふ事もなくて、降(お)るゝ時に軒長(のきたけ)ばかりに成りて、「あやまちすな。心して降りよ」と言葉をかけ侍りしを、「かばかりになりては、飛び降るとも降りなん。如何にかく言ふぞ」と申し侍りしかば、「その事に候。目くるめき、枝危きほどは、己が恐れ侍れば申さず。あやまちは、やすき所に成りて、必ず仕る事に候」といふ。あやしき下臈なれども、聖人の戒めにかなへり。鞠も、難き所を蹴出してのち、やすく思へば、必ず落つと侍るやらん。

 聖人の戒めとは「易」にある「君子、安くして危うきを忘れず(中略)治にして乱を忘れず、ここを以て、身安くして国家保つべきなり。」のことです。すなわち、簡単なところでも油断は大敵ということです。「勝って兜の緒を締めよ」もよく似た戒めの言葉です。
思えば、1865年に、イギリスのエドワード・ウィンパーの一行がマッターホルンに初登頂した後、下山の際にロープが切れて、4名が転落死した事故がありました。

  「方丈記 徒然草」 日本古典文學大系 岩波書店
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 囲碁の神様 | トップ | ユダヤ人 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

文学」カテゴリの最新記事