yoshのブログ

日々の発見や所感を述べます。

清貧の思想 中野孝次

2020-12-30 06:01:51 | 文学
 バブル経済の破綻から2年後の1992年に、故・中野孝次氏の『清貧の思想』が草思社から刊行されました。本阿弥光悦、鴨長明、吉田兼好、良寛ら富貴と名利の俗を離れた古人の生き方を紹介し、日本には「ひたすら心の世界を重んじる文化の伝統がある」と説いています。当時は、猫も杓子を財テクをやって、財テクが流行っていました。この本では、多くの日本人が「何かおかしい」と感じていた時に、当時の時代の流れとは逆のメッセ-ジが打ち出されたので、読者に衝撃を与えました。子供の頃から、質素、倹約に慣れていた不肖もこの本に共感を覚えました。
しかし一般の反応とは別に反発もありました。経済評論家の内橋克人氏は、この本の解説の中で、バブル崩壊後の不況からの脱出を説く著名なエコノミストが、「清貧」ではダメだとテレビで語ったと紹介していました。文藝評論家の斎藤美奈子氏は、『清貧の思想』を「バブル崩壊期の典雅な寝言」と決めつけ、「拝金主義に眉をひそめていられるのは、やはり『豊かな時代』だからなのだ」と言いました。しかし、不肖にとって『清貧の思想』は、今でも感銘を与えてくれる書です。





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