yoshのブログ

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ユダヤ人

2016-06-08 04:49:37 | 文化
「ユダヤ人」とは定義が難しい言葉のようです。ヘブライ語を話し、ユダヤ教を信仰し、イスラエルという国家を持つというのが、ごく一般的な特徴でしょう。人口は、イスラエルに530万人、アメリカに528万人、フランスに49万人、イギリスに30万人、その他の移民を合わせて、合計1350万人程度です。世界の人口の0.2%と僅かです。このユダヤ民族は知性の活動が極めて活発で、歴代のノーベル医学・生理学賞、物理学賞の受賞者の25%を占めるそうですから驚異的です。

19世紀末にフランスに「反ユダヤ主義の父」エドゥアール・ドリュモンというジャーナリストがいました。彼は「アーリア人対セム人」の人種対立が世界史の原動力であるという人種間戦争史観を信じていました。(ユダヤ人は19世紀ヨーロッパにおける「セム人」の代表)。「セム人とアーリア人ははっきりと分かたれ、互いに決定的に敵対し合う人種が人格化したものであり、この両者の対立が過去の世界を満たしており、将来においてさらに世界を掻き乱すことになるであろう」。アーリア人とは「白人の優勢種、イラン高原に発するインド・ヨーロッパ語族」であり、「ヨーロッパのすべての国民は最も緊密なる絆でアーリア人種に結びついており、そこからすべての偉大な文明は生まれた」。一方のセム人は「もとはメソポタミア平原から出現したと思われる雑多な民族、アラム語族、ヘブライ語族、アラビア語族」であり、ドリュモンはアーリア人種を、どちらかといえば血の巡りの悪い、幼児的な頭脳を持った「善良な巨人」として描き出しました。アーリア人種は「熱情的で、英雄的で、騎士道的で無私で、率直で、無思慮と言っていいほど信じやすく、いつも夢見がちで、英雄伝説や騎士物語のファンタジー
のうちにまどろんでいる。彼らの天職は、農夫、詩人、修道士、なかんずく兵士であるが、現実感覚が足りないので、アーリア人から財布を巻き上げることほど簡単なことはない」。
一方、セム人は「本能的な商人で、取引こそ天職であり、交換することと、仲間を騙すことの天才である」。彼らは何一つ自分で作り出さず、他人が作りだしたものを横から収奪するだけである。だが、アーリア人は搾取されていることの意味がよく分らないので(あまり頭がよくないから)、なされるがままになっている。やがて事情を理解するといかりだし、剣を手に、セム人に罰を与えるべく立ち上がる。セム人たちは「霧の中に消え、穴に潜って数世紀先に備えて新たな陰謀をめぐらせる。」
これに対して、内田教授は以下のように述べています。ドリュモンのこの人種ファンタジーは何の文献的根拠もない。だが、妄説を侮ることはできない。それは時に科学的観察よりもことの本質を見抜くことがある。ドリュモンはここでユダヤ人について重要な情報を語った。それは非ユダヤ人はユダヤ人を自分たちよりも「賢い人」であり、本質的に「都市の人」だと思いなしていたということである。反ユダヤ主義とは自分たちより賢い人間に対する愚者の怒りなのだということを、ここまで率直に語った文献は私が知る限り他にない。
 ヒットラーによる、ユダヤ人の虐殺も愚者の怒りによるものであったと言えるのかも知れません。

      内田樹 「ユダヤ的知性について」學士會会報 No.918 2016-Ⅲ







    

     


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