yoshのブログ

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広瀬武夫の恋

2011-03-05 06:35:42 | 歴史
ロシア駐在武官 広瀬武夫大尉は露都、ペテルブルグにおいてロシアの伯爵令嬢、アリアズナ・コバレフスキーと恋に落ちました。しかし広瀬は日本に帰国する運命にあり、アリアズナと結ばれることはありませんでした。別れを前にしてアリアズナは広瀬に、記念の言葉を求めました。そのアリアズナの手帳にはプーシキンの詩「夜」と広瀬の漢訳がびっしりと書き記されていました。

夜思

四壁沈々夜    しへきちんちんのよる
誰破相思情    たれかそうしのじょうをやぶる
懐君心正熱    きみをおもいてこころまさにねっし
嗚咽独呑声    おえつしてひとりこえをのむ
枕上孤燈影    ちんじょうことうのかげ
可憐暗又明    あわれむべしあんまためい
潺湲前渓水    せんかんたりぜんけいのみず
恰訴吾意鳴    あたかもわがこころをうったえてなる
恍乎君勿在    こうことしてきみたちまちにあり
秋波一転清    しゅうはいってんしてきよし
花顔恰微笑    かがんあたかもびしょうして
似頷吾熱誠    わがねっせいをうなずくににたり
吾身与吾意    わがみとわがこころと
唯一向君傾    ただひたすらにきみにむかいてかたむく

この後、広瀬は日本に帰国し、旅順港閉塞作戦で戦死しました。広瀬の死を知ったアリアズナはロシアの伯爵・海軍少将の娘でありながら、日本海軍の士官広瀬のために喪装となり、喪に服しました。
後に日本海軍の至宝として軍神となった広瀬のロシアでの恋の話は、海軍内では公然とは伝わらなかったので、あまねく世に知られることはありませんでした。

   島田謹二 「ロシヤにおける広瀬武夫 下」 朝日選書

            
下図は、NHKテレビドラマ「坂の上の雲」でアリアズナの部屋に飾ってあったという広瀬の書です。


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