陽出る処の書紀

忘れないこの気持ち、綴りたいあの感動──そんな想いをかたちに。

世界に伍する国立大学、お値段以上に

2018-11-10 | 教育・学術・読書・子ども

二、三年前、ラジオで聞いた話です。
経済アナリストの森永卓郎氏が語るところによれば、氏の在学時の東京大学の授業料は年3万といったところ。いまから40年ほどまえのことなので、現在の物価に換算すると30万円ぐらいなのか。

文部科学省のデータ「国立大学と私立大学の授業料等の推移」によれば、たしかに昭和50年までは年36000円。翌年10万円近くに値上げされ、現在は平成17年の標準額と同じく、53万5800円に据え置かれています。なお、これを私立も含めて授業料比較すると。

国立大学:  53万5800円
私大文系:  75万8854円
私大理系: 107万1560円
私大医薬系:289万6848円
(私大は2016年度の平均額、読売新聞2018年10月26日記事より)

もともとも国立大学の授業料は同一ではなく、2004年の国立大学法人化以降、各大学が決められるようになっていました。ただし、標準額53万5800円の2割増しまでが上限。一部の大学院を除けば据え置きだったはずの授業料、ところが──。

東京工業大学は、来春の入学生から、年間授業料を63万5400円に。
なんと18.6パーセント、9万9600円の値上げ。「世界に伍していくため、他大と一線を画した教育改革を進めるため」の必要経費とのこと。収入増加分は、国際的な研究者の招へいや、学生の海外留学支援、討論・発表を取り入れた授業の推進などへ充てる。

値上げに伴い、授業料減免対象者をさらに拡充。
世帯収入の上限を上げ、返済不要の給付型奨学金を独自に創設。とくに支援を重くするのは、生活費負担のかさむ地方出身者や、親が高学歴でない家庭。家庭ではじめて大学教育を受ける「ファースト・ジェネレーション」がターゲット。

国立大学の運営交付金が法人化以降は、およそ1割減となり、教員数も削減。産学連携による外部資金獲得にも乗り出すなかでの、この値上げ。教育格差是正にも配慮しているのならば好ましいのではないでしょうか。ただし、新入生からといわず、在校生にも適用してもいいような気はしますが。国立大学でも、病気や家庭の事情などの不可抗力をのぞいても、留年8年生なんて人もいますしね。

しかし、ブランド力がある名門理系大学だからこその試みであって、むやみやたらな授業料値上げは受験生に敬遠されるという懸念もありえます。ほかの国立大学でも、倣って値上げに走るかどうかは不透明ながらも、学部ごとに異なる授業料を検討する動きもあるとか。私もかねてから不思議なのですが、いくら同じ大学教授でも、文系の国文学だとかと、理系の生命科学や医学薬学でお給料が同じである必要はないですし。

ただ、教育内容にさして効果が表れえないのに、学生がわだけの負担が増えるだけの結果に終わる可能性もありえますよね。フランスの大学のように、基本的にすべてが国立で無償であるが進級や卒業が難しく、学士のブランドが保たれている状態の方が望ましいに違いありません。私立大学にしても、親の欲目で学歴をつけさせたが、教育投資に見合った思考力や教養を身に着けていない学生が多いという批判は、私のころからありましたし。

日本の大学が世界で後れをとっているだとか、学生が勉強しないとか、大卒・院卒が役に立たないとか言われるのも、ひとえに自分ふくめ、高等教育を受けた人間が社会に学びのお返しをできていないせいではあります。国立大学は志ある若者が経済的理由で教育を諦めない場であるべきなので、授業料減免拡充や奨学金の充実は大歓迎ですね。



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