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陽出る処の書紀

忘れないこの気持ち、綴りたいあの感動──そんな想いをかたちに。葉を見て森を見ないひとの思想録。

ばか騒ぎではなく、働きかたで人とつながろう

2025-04-01 | PC・通信・情報・メディア・SNS

迷惑系ユーチューバーなる者が飲食チェーン店でのいたずらで逮捕されたというニュースを耳にした。
ユーチューバーの誰それがどうしたというネットニュースも見かけるし、再生数が下火になったということさえ報道される。芸能人の名前よりも目立つことがある。

動画に限らず、ブログふくめたSNSの隆盛は、それを視聴する者と表現者との存在で成り立っている。
インフルエンサーと呼ばれる者になると、企業の広告塔になったり、いっぱしの社会批判をして論客にもなったりする。大枚はたいて何かを買ったということさえも、ニュースになる。小学生でもなれるユーチューバーは、あくせく学んだり、誰かにこき使われるような人生を嫌う人にとっては夢の職業にも見える。

しかし、誰かを不快にさせたり、仕事の邪魔をしたりする、そんな仕事にはたして夢があるといえるのだろうか? 動画を視聴できるのは、時間の余裕がある人だけ。そもそも、ウェブ上の無料コンテンツだから暇つぶしに観ている、憂さ晴らしにバカ騒ぎが欲しい。そんな視聴者が集まってしまう。

動画ばかりではない。
ブログを含めたSNSじたいも、表現者とその評価をするフォロワーで成り立っている。アクセス数、コメント数が多く、フォロワー数を増やすほど、ウェブ上での存在感は増すだろう。自分は書かなくとも、応援するのが好きだからポチ押し連打を日課とする人もいる。コメントを丁寧に返信することが礼儀だと考える人もいる。掲示板もなにがしかの不満を持ち合って、慰めう場所になりやすい。

だが、こうした関係性はほんとうに人間社会をよくするのだろうか?
農林水産業者やら警察官やらが仕事そっちのけでスマホばかり見ていたら? 専業主婦が子育てブログばかりにかまけて、家事をおろそかにしたら? 公務員がクレーマーにうんざりして個人情報をウェブで流したら? 経営者が現場をかえりみず、インスタグラムばかり更新していたら? そうした事態は現実に起こり続けている。

なぜ、彼ら彼女らはウェブ上で賞賛を得たがるのか?
自分の生きがいがそこにしかなく、人生の息苦しさをそこでガス抜きしたいからだ。他ならぬ私自身がそうで、ブログを書き続けているのだから。

わたしたちは、ウェブ上で、あるいは本を出版するなり、映像をつくるなりして、何ごとかを表明し、ひとかどの人物になろうとする。その表現活動じたいはとても楽しい。そして、直にいいねで評価してもらえたりもする。自分の成果が目に見えやすい。自分の考えを主張することはとても気分がいいからだ。相手の顔がみえないぶん、好き放題言いたい放題だから。

けれども、よく考えてほしい。
ふだんから使っている生活用品だとか、衣食住に必要な財やサービス。そうしたものを生み出したり、届けたりするひとへの感謝をしているのだろうか? おもしろいゲームを実況中継した人ではなく、商品を紹介した人でもなく、お礼をいうべきはその生産者たちなのに。

蛇口をひねって水道が使えるのも、夜になって部屋が暗くないのも。
すべてインフラ維持をしている人がいるからだ。わたしたちの暮らしを支えるために、多くの見えない働き手の存在がある。自分が働くことによって、はじめて、自分の仕事が自分だけのものではなく、多くのひとに支えられていることに気づくだろう。その事実に目覚めた時、はたして、他人に不機嫌を与える仕事がどれほどつまらないものに思われるだろうか。なぜ調子のいいことを言うだけの娯楽の存在に憧れなければならないのだろうか?

SNSによるコミュケーションは、人間社会が持つ機能をゆがませている。突飛な言動で注目を集めたり、同質な意見を数で集めていくのではなく、一人ひとりがそれぞれの役目を果たしながら、誰かの手助けをしていると感じることが真に生きる喜びになるのではないだろうか。

わたしたち大人はそうした仕事の本義をきちんと、子どもたちに伝えていく必要があるのではないだろうか?
派手で話題になりやすい仕事ばかりを子どもの将来に夢みて、自分の人生の挽回を託すのではなく。稼ぎがいいからいい暮らしができるぞと利得ばかりを教えるのではなく。

(2023/04/01)






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