陽出る処の書紀

忘れないこの気持ち、綴りたいあの感動──そんな想いをかたちに。葉を見て森を見ないひとの思想録。

アニメ映画「思い出のマーニー」

2017-07-27 | テレビドラマ・アニメ
ひと夏の体験、なんて書きますと、いささか色めき立ってしまうものですが、子供の頃の夏というのは不思議な体験で満たされているものです。「時をかける少女」のようにSFちっくな謎の能力に目覚めてみたり、「となりのトトロ」のように森のぶさ可愛い生き物に遭遇してみたり、あるいは「スタンド・バイ・ミー」よろしくゾクゾクする冒険をしてオトナの階段を上ってみたり。御年輩世代からすれば、「火垂るの墓」が描くように、夏といえば戦禍の記憶という方もいるのですが、とにかく夏場というのは思い出を積むのにはもってこいのシーズン。スイカの食べ過ぎでお腹壊したり、宿題にひぃひぃ言っているだけが夏じゃない。

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日本が世界に誇る大手アニメ制作者・スタジオジプリが2014年に公開した話題作が「思い出のマーニー」(公式サイトはhttp://www.ghibli.jp/marnie/)。孤独でやや悲観的な少女が、謎めいたお屋敷に住む女の子に出会うというガール・ミーツ・ガールやっほい!なミステリー映画。宣伝ポスターは「魔法少女リリカルなのは」第二期のOPが脳内リフレインしそうな、背中合わせの少女ふたりに、「あなたのことが大すき」と堂々と書いたキャッチコピー(現在の公式HPでは「ジブリの涙」に変更)。まさか、天下のジブリがこういうのに手を出すのかと思いつつも、ディズニー映画でも童話を大胆リメイクしまくって大ヒットした「アナと雪の女王」もありましたし。

持病の喘息の療養のために、札幌から海辺の田舎町に引っ越してきた杏奈。
両親を幼い頃に亡くし、里親の女性に養育されたものの反りが合わず。知り合いのご夫婦に預けられて地元の学校に通うものの、持ち前の気難しさがあって友人もつくれない。つねに自分は世の中の外側にいるという孤独感を抱えた杏奈は、ある日、湿地が広がる川に浮かんだボートを見つける。その小舟に導かれるままたどり着いたのは、古めいたお屋敷に暮らす金髪の少女・マーニーだった…。

実の親の愛に餓えていることで、双子のように共依存しあう杏奈とマーニー。
私たちの仲は秘密、誰にも知らせない。そんな特別感に酔いしれてマーニーの暮らす館に入り込んだ杏奈は、父母の揃った豊かな暮らしも、ボーイフレンドもいるのに、マーニーの心が満たされていないことを知ります。そして、マーニーと過ごすうちに、不意に彼女が消えてしまったりする。果たして、マーニーは何者なのか?

マーニーが忽然と目の前からいなくなったある日。
杏奈は、くだんのお屋敷が改装されて、新しい一家が越してくることを知ります。その一家の好奇心旺盛な次女は古い日記を見つけ、杏奈こそがその日記に記されたマーニーではないかと語りかけるのですが、杏奈はマーニーは自分がでっちあげた空想の友達ではなかったのかと疑うようになって…。

この物語の最大の謎は、この不思議少女マーニーの正体。
でも、視聴者のたぶん半分くらいはうすうす気づいていたのではないでしょうか。ヒントは主人公の瞳。このアニメでは分かりやすかったですが、私はこの映画が話題になったときに新訳で刊行された原作本(文庫じゃなくて特装版)を先に読んでいて、序盤で分かってしまったのでいまいち感動が薄れてしまったものです。むしろ、本編より巻末の河合隼雄氏の絶賛している批評文のほうが面白かったですし。

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杏奈にまつわる因縁をひもとけば、マーニーがなぜ登場したのかもわかり、泣けると言えば泣けるお話。ただ、少女ふたりの百合百合しいエピソードがなんとなく既視感ありまくで(たとえばダンスシーンなんて、『マリア様がみてる』の祥子さまと祐巳を彷彿とさせますね)、いかにもキマシタワーと歓喜させたいようなあざとさを、どう考えてもアルプスの少女ハイジとクララお嬢の紛い物で再現している感が否めかったりですね。お互いの不幸度を測りあって境遇をうらやましいとこぼしたりするのも、なんとなく「好き」って言わせて、いちゃこらさせて、表面的に百合ほほ笑ましいのう、というやや浅い感じがするんですね。

たぶん批判されているのでしょうが、杏奈のひねくれ具合。
養い親に不信があるのは、市から補助金をもらっているから。つまり金で買われた子だと思っているのです。別に虐待されたり、不当に労働させられたりしてもいないのに。実の子どもだって児童手当もらうのに世間知らずなのは、まあ子供だからしょうがない。原作の舞台が英国の半世紀前なので、その頃は養子しか手当がなかったのかもしれないですね。日本の現代でなくて、原作通りの世界観にしたほうが良かったと思ってみたり。

夏というよりも、シルバーウイークあたりに観た方がそれらしいというトリックなのですが、この作品の言わんとしたことは、自分のどうにもならない生まれもった要素を嘆いてもいいが、それを慰めてくれるのは同じ血が流れる者の因縁ということでしょうか。遺伝子として哀しみを乗り越える力があるのなら、それを目覚めさせてくれるのは美しい思い出だけ。杏奈は不幸にも幼少時に親に甘えられる時間を奪われたので、今更ながら「大人の顔をしていない」大人の幻影が待たれねばならなかったということでしょうかね。でも、きちんと現実の友達も、家族の絆も得たのは杏奈の成長の証で落とし所としては良作。視聴後、お盆も近いので、お墓参りしようと思ってみた次第。

主演声優は、高月彩良, 有村架純。
「借りぐらしのアリエッテイ」で若手ホープとして監督デビューを飾った米林宏昌が監督・共同脚本。
本作は第88回アカデミー賞長編アニメ映画賞にノミネートされました。米村氏はその後、ジブリを退社してスタジオポノックを立ち上げ、今夏公開中の「メアリと魔女の花」が独立後の初監督作品となります。
原作は、ジョーン・G・ロビンソンによる児童文学(原題:When Marnie Was There)で1967年出版。岩波、角川、新潮で読みやすいお子様向け文庫で出版されていますね。

個人的に思えば、ジブリは「天空の城ラピュタ」とか「風の谷のナウシカ」
みたいなボーイ・ミーツ・ガールものの方が十八番ではないかと。宮崎駿監督もけっきょく引退撤回しましたし、どうなるんでしょうジブリ映画の今後。



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