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陽出る処の書紀

忘れないこの気持ち、綴りたいあの感動──そんな想いをかたちに。葉を見て森を見ないひとの思想録。

NHKドラマ「正直不動産ミネルヴァSPECIAL」

2025-03-23 | テレビドラマ・アニメ


3月2日放映のドラマ「正直不動産ミネルヴァSPECIAL」は、NHK総合にて第二期まで放映された人気ドラマのスピンオフ。BS放映作の再放送。この前日深夜に特番(パネリストに清少納言のファースト・サマーウイカがいたような…?)もあって、いみじくも知る機会があったのですよね。

ほんらいは待場の不動産屋さんこと登坂不動産に勤める営業マンが、ある古い祠を壊した呪いであけすけに発言してしまう体質になってしまい、そのコミカルさが笑いを誘いつつ、ときにシニカルな不動産業界の裏事情やら、生き馬の目を抜く業界の荒波が垣間見えて、おもしろいドラマ。宅建士や、FP技能士2級、行政書士資格ホルダーの私は大いに勉強になりますし、持ち家派、賃貸派問わず、住まい選びは人生の幸福感につながりますので、誰もが観ていてタメになるストーリー。

さて、今回のスピンオフドラマは。
なんと主人公のライバル会社で好敵手というべき、先輩営業マンの神木涼真を主役に据えたもの。第二期から登場した、あのディーン・フジオカ演じる神木はかなりキャラが濃厚なお方。あの長い脚を活かした華麗なタップといい(なんでいちいち踊るのか(笑))、ナンバーワン成績に固執する悲劇の裏側といい…。魅力要素満載の傑物。そりゃ、公式で二次創作して主人公にもしたくなるわ。




悪徳不動産の呼び声も高いミネルヴァ不動産立川支店。
支店長の神木が打ち出したのは、昨今問題視される空き家を買収して叩き売り、暴利を得ようとするプロジェクト。そのさなか、本社からはいかにもZ世代らしきマイペースな新人男女二名が研修生として送り込まれる。このギャル系新人女性(演:見上愛)、実はもともと辣腕のカーディーラーで社長のお墨付き。足を引っ張るかにみえて、神木がしくんだペット同伴物件の賃貸人の窮地をすくって、花澤をアシストしたりする。

こういう若手にも見せ場があるビジネスドラマ、よいですよね。
残業しません! 飲みニケーション嫌です! プライベート重視! 先輩や上司にも物怖じせずに意見! 言えるの最高で素敵。就職氷河期世代の私は切実にそう思います。まあ、これはドラマなんですけどね(笑)若いから許された傍若無人ぶりといいましょうか。

営業トップの座を狙う花澤(演:倉科カナ)が目を付けたのは、他社から持ち家の売却を迫られている認知症気味のとある男性(演:武田鉄矢)。
花澤はある中年女性(演:松坂慶子)を近づけさせ、男性を懐柔して自宅を手放すよう画策しているかに見えたのだが…。

じつは本編でもあった、花澤の花澤による色仕掛け(架空の女で)による騙し手口か?…と思いきや、そこには思わぬこころ温まる真相が潜んでいました。
まあ、逆にいうと、独居老人はこの手の疑似家族や恋人案件に要注意ってことでもあります。ギャル系新人の活躍もあって、男性の息子が委任状偽装による自宅売却を未然に防げたという美談。ミネルヴァには珍しい解決法ですよね、ふだんは敵方だし、チームワークなさそうだから。

ドラマの後半部は、神木の暗部をクローズアップ。
神木がどうしても売れなかった一軒家、それは交通事故で亡くした妻の実家だった。血も涙もない神木であったならば、空き家なんぞいくらでも掘り出して、海外の資本家などに高値に売り払うはず。しかし、それはできない。やがて、花澤にも支援されて神木がとった決断は「妻子たちの想い出の場所」を保全するためのものだった。

シングルマザーの花澤と神木、本編第二期のラストでは息子さんを間において、いい雰囲気だったけども、そこは安易に恋愛モノに収めずに、ライバルとしてしのぎを削っていく路線なのでしょうね。正直、主人公サイドの同棲話がけっこうシラけて見えてしまうし(笑)。

空き家を改葬して地域の活動拠点にしたり、民泊やカフェを経営したり、というのはよく聞く話。しかし、もともとは家はプライベートなもので他人を介在させることには意識改革が必要。コストもかかります。現実、空き家を人の寄り添い場所にするには難しいこともあって、理想論でしかありません。

私自身も、数年前に空き家の古い納屋を二棟取り壊しましたけども。
300万ほど負担したうえに大量の荷物の整理に追われたり、各種の手続きや近所とのトラブル、いまだ残る母屋や畑の維持管理に苦労していますので、他人事とは会思えません。国内の空き家はどんどん増えており、それはかつてマイホーム熱を煽った経済戦略の徒花。相続税の節税対策としてのマンション投資でさえ、巨額の金融ローンと空室率の上昇で、高齢者やその遺族が苦しむケースが後を絶たず、不動産デベロッパーや金融機関は知らん顔。

田舎の空き家を活用したくば、若者定住の補助金だけでなく、魅力的な仕事探しや地方産業とくに農林水産業の担い手への手厚い支援、医療福祉の充実が欠かせないのに、国は地方議員の数を減らし、効率化をうたって高齢者を都会へ集約化させようとしていて、地方はますます疲弊しています。地方の農業に働きに来てくれる外国人労働者さえ、近年は他の国の方が待遇がよいので奪われているとも聞き及んでいます。

私の現住まいのある地方都市でも、ここ近年、街並みが変わりつつあります。
急速に家がなくなって空地になったり、事業所が閉鎖して建物が解体されたり、あるいは草だらけの耕作放棄地が増えたり、蔦だらけの崩壊寸前の空き家が放置されていたり。

空き家は定期的に人が立ち寄らないと動物に荒らされたり、犯罪者集団に悪利用されたりもしますし、自然災害などがきっかけで人的被害が及ぶと損害賠償請求される恐れもあります。

今回のドラマは日本で増え続ける空き家問題に焦点を当てたという意味でも、そのストーリー性の高さからしても、すぐれたお話でした。正直、原作準拠の第二期本編のお話よりもよかったのでは? すばらしい脚本でしたね。ほんらいの主人公(アイドル顔の)が出なかった分、脇を固める個性派俳優がなかなかいい味出していました。そうそう、あの主人公の方言癖つよすぎる恋人役のひとって、「光る君へ」の和泉式部だったんですよね。原作漫画にはいたのかな。

半沢直樹シリーズともども、社会人向けのお仕事ドラマは勉強になりますよね。
理想と現実のボーダーをいく解決法や、予定調和な人間関係の帰結もあったりですけども。
なお期待される第三期はなんと映画、2026年公開なのだそうで。




不動産業界だけじゃなく。経済効果と称して、あるいはSNSなどで商戦を張り巡らしてモノを売りつけて。消費者に不良在庫を積ませて、一部の利権者だけがボロ儲けするだけの業界構造って、なんとかならんものかね、と思うこともあります。ほんとうにお金が回らないといけない業界、ライフラインの維持に必要な、エッセンシャルワーカー(農林水産業、製造業や土建業界、医療福祉などの技術職)たちの労働力が買いたたかれていていく現状には、不満が募ります。

ただ、ライフスタイルが変われば、家との向き合い方も変わる。
複数人でマンションや一軒家をシェアする方式も増えているように、住宅も、車も、そのほか家具なども、自分だけのカスタマイズできる所有品でない方向へシフトしていくのでしょうか。若い世代ほどその傾向は強い気がします。モノよりも、体験を、感動を、消費していくスタイルですよね。

それにしても、ディーン・フジオカさん。
朝ドラの五代友厚役でブレイクされた印象が強いですが、国際派俳優のためか、多彩な活躍をされているようですね。どちらかというと地味なお顔立ちなのに、なぜか妙な存在感がありますよね。このドラマ内でも若い頃の好青年ぶりと、熟達したヒール役との演技の切り替えがすごくて、同じ人とは思えませんでした。性格俳優っていうんでしょうかね、こういうの。

なお、トップ画像はNHK総合のX(旧ツイッター)より紹介のため、掲載しています。

(2025.03.02視聴、03.19記録)



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