陽出る処の書紀

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漫画『ユメキ』

2018-09-24 | 感想・二次創作──神無月の巫女・京四郎と永遠の空

2018年この秋、Amazonプライムビデオで見放題リストに入ったせいか、話題沸騰中のアニメ「神無月の巫女」ですが、この原作者・介錯先生は、かの藤子不二雄やゆでたまごと同じ男性漫画家ユニット。
実写化もされた「鋼鉄天使くるみ」や、異星人と人間の少年とのラブコメ作の「円盤皇女ワるきゅーレ」がもともと出世作。この前二作からのファン(とくに若手の男性)も多いはずですが、2004年放映の「神無月の巫女」によって、女性にも爆受け。なぜかじわじわと人気を広げています。ただし、この作家さん、長年のファンいわく、読者の期待かまわず嗜好ごった煮で置いてけぼりにするのがかなり好きなようで、作品によって評価が分かれやすいとか。昔、サイト運営時の掲示板でのファンあしらいが上手かった覚えがあります。読者多数の続編の期待が大きすぎたんでしょうね。私も続編欲しいほしい、ってうるさかったですけどね。

この漫画家さんの全作制覇していないのですが、どシリアスなのになぜかいきなりコメディを挿入してしまうというおかしな芸風(例:『絶対少女聖域アムネシアン』第四巻のクライマックスあたり)もあり、近年はなぜか仮面ライダーシリーズの脚本家・井上繁樹と組んで、ハローキティのコミカライズ(http://comip.jp/15/)を手掛けるなど、実にバラエティに富んだ活躍があります。そういえば、猫を主人公にした漫画もありましたよね。





今回、紹介する漫画は、とりわけその異色作。
2007年のアニメ「京四郎と永遠の空」放映時に雑誌『ドラゴンエイジ』附録として発行された小冊子「絶対介錯」には、それまでの原作者の遍歴が示されていますが、そのなかにこれほどの猟奇ホラーは見当たりません。すなわち、これは新機軸。こんな作風読みたくないわ!と去っていく過去愛の激しい読者の蜂起にもめげずに、作品は常に進化しつづけねばなりません。



漫画『ユメキ』(電撃コミックス、2011年9月)は、とある美少女が現れる街を舞台にしたオムニバス形式のモダンホラー。
季刊誌に連載された全六話。時期としては、「神無月の巫女」の姫子と千歌音のアナザーストーリーとも目される『絶対少女聖域アムネシアン』の最終巻および、美人隠密のドタバタ劇『残念くのいち伝』がウェブ連載中の頃。2011年は東日本大震災、今年と同じく、日本が災害大国だと認識しなおされた年でもありますね。

なお、本作はカバーを外した本体表紙と裏表紙に、各話あとがきとおまけ漫画があります。
これがややネタバレにもなっていますので、かならず読み通してからにしましょう。


序幕:夢起
巻頭ピンナップめくって本編初っ端から、おいおい!と言いたくなりますが(爆)、こんなの序の口です。「神無月の巫女」の原作漫画や各種薄い本で免疫ついてしまったひとなら大丈夫。女子高生・谷山計のクラスに転入してきたのは、夢起(ユメキ)という美少女。計の親友属する軽音バンド部に入ったユメキだったが、その部では不穏な動きが。やがて、学園祭の日に目も当てられない大事件が起こる…。この計は、狂言回し役で最終回まで登場します。テーマは、アイドルに熱狂する者の末路でしょうか。

第二幕:夢機
数人の仲間とともにオンラインRPGゲームに熱中する少年・文男。ゲーム仲間うちでのアイドル的存在は魔法使い役のユメキだった。オフ会で知り合ったメンバーの男女が死体で発見され、やがて連鎖的に自殺未遂が報じられる。少年は自分が未参加だったオフ会に秘密があると疑い、リーダー格で親密なアパレル女性店長に相談するが…。アニメ「Blood-C」のギモーヴもそうでしたけど、読んだ後、ある食べ物がしばらく喉を通らなくなりました、ワハハ(笑)。そういえば、この頃はまだガラケーが主流でしたよね。

第三幕:夢記
この表紙扉の構図、とくと眺めてほしい。よもや、「神無月の巫女」のフィギュアの外装イラストではなかろうか。ちょい、百合度高め、ホラー色薄めの回。とある田舎町の古びた映画館を十二年ぶりに訪れたうら若い女性。「夢の記憶」と題された映画のフィルムが回りだすとき、失われた悲しい想い出が再生される。なんか、やたら幼女満載で、そのうえメーテルみたいな謎の美女が出てきますが、作者の趣味ですかね?

第四幕:夢奇
警視庁所属の老練な刑事・黒沢は定年間近。しかし、若い頃から追いかけていた未解決事件にこころを残していた。オンラインゲームに嵌まった若者の連鎖自殺や、ある学園の陰惨な事件などを洗ううちに、「ユメキ」という謎の少女が鍵を握ると知る。新米の相棒を連れて事件捜査に出かける黒沢だったが…。血みどろではないけれど、最近の社会事情を鑑みれば、背筋が寒くなる結末ではありますね…。でも、あまり嫌いじゃない話ではあります。
そういえば、原作者先生がツイッターで神無月の巫女の大正編のラフ画を公開していましたが、実現していたら、謎の美少女たちを追う探偵役だったのでしょうか。「テルマ&ルイーズ」に出てくる老刑事みたいな役どころだったのかもしれませんね。

第五幕:夢鬼
結婚して十六年、一女の母になった杉野計。娘の優愛は素直に育ってくれたが、高校入学後に連れてきた親友はなんと、あのユメキうりふたつだった! かつての惨劇のおぞましい記憶がよみがえる計は、愕然とする。なんとか娘からユメキを引き離そうとするが…。子どもは大人のおせっかいを判ってくれないものです。

終幕:夢姫
ユメキの正体を知るという老修験者にほだされ、その退治に助力する計。娘を救いたい一心で古めかしい洋館で呪術をめぐらして、ユメキこと夢鬼を待ちかまえるふたりだったが…。まあ、なんというか、やっぱりな結末ですよね。ハリウッド映画みたいに、怪物やっつけて生存者がめでたしめでたしじゃ終わらないわけです、ジャパンホラーは。

集団管理社会たる学校、閉鎖的な人間関係の部活動、思春期の女の子ならではの同質化と排他性、田舎町での狂気、きょうだいの確執やおひとり様の老後。ネットゲーム廃人と孤独感。そして「神無月の巫女」にも描かれた毒親問題(虐待というほどではないが…)。うさんくさい自称・宗教家など。どこにでもありふれていて、いつからでも物語の題材になりそうな現代的なテーマを主軸に据えた六編。初回はややグロテスクですが、終わりに向かってややきれいにまとめています。

時代と場所を選ばずに、人びとを狂気へと導いてしまうユメキは悪魔なのか、それとも、先行きの見えない時代に夢をあたえた女神なのか? にしても、この女の子、『京四郎と永遠の空』に出てくる、夢想の刻のせつなにそっくりですね。『アムネシアン』でのリサイクルが中途半端だったので、もう一回、活かしたのでしょうか。





最近のちょっと百合っぽいものって女の子が凄まじすぎる言動をするのが多いのですが。もとを正せば、2004年が源流だったのでしょうか。倫理と規律のある社会を良しとしながらも、どこか残酷なものや人智及ぼぬ美しさを求めたりするのが人間でもあります。





原作者の聖恩により、14年後に描かれた姫子と千歌音の近影。
姫子に見つめられすぎて、魂昇天したので、アンドロイドっぽく(?)見える千歌音ちゃん。すこし別ものに見えるのですが、また他の物語に転生…? 過去と同じものは決して描くまいぞ、という気概がなんとなくほの見えるようなアレンジでもありますね(勝手な想像)。






ところで、本作を知ったのは実はかなり前の、とあるブロガーさんの記事
情弱なので、原画集とかコミケ限定の番外編小説が原作者直販で頒布されるとか、さらには『アムネシアン』だの『姫神の巫女』だの続編がある、という貴重情報をほとんど、先行ファンからのお知らせで、後追いで知りました。この方の記事にある、『アムネシアン』の特典描きおろしイラスト欲しかったですね。
インターネットがなかったら、あの作品にこれだけ嵌まらなかったのだろうと思うと、いい時代に生まれ合わせたのか、魂持っていかれすぎて疎かになったこともあるのか、いまだによくわかりかねますが。

とりあえず、自分としては断捨離で関連作を棄てなくてよかったですね(おいおい)。
なんどか売ろうと思ったんだけど、なぜかそのたびに新しい動きがあったりするので手放せず今に至る。腐れ縁みたいな感じがします。漫画をあまり作家買いしないので、同じ作家で五作以上購入したことあるのは、手塚治虫と、さいとうちほ先生とこの原作者さんぐらいですね。耽美な絵柄はとにかく好きですが、公言して好きといえない自分の小心さが悲しい…。「誰の前でだって言える、恥ずかしくなんかないよ」といいきれた姫子に倣ってみたいものですね。


★★神無月の巫女&京四郎と永遠の空レビュー記事一覧★★
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