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陽出る処の書紀

忘れないこの気持ち、綴りたいあの感動──そんな想いをかたちに。葉を見て森を見ないひとの思想録。

魔法少女リリカルなのは二次小説「The Final Feast」 Act. 1

2025-03-06 | 感想・二次創作──魔法少女リリカルなのは


室内には、耳につくほど曲調が荒立たしくなく、潮騒のような静かな音楽が流れていた。
曲の調子によって、室内の照明もくるくるとカラーを変えていた。その曲の終わり目を狙ったかのように、突然のアナウンスが入った。

「お楽しみの皆さま、ご静粛に!」

つづいて、シャらん、しゃらン、と軽やかな楽器の音が聞こえてくる。
室内のざわめきがいっせいに止み、ただその涼しげな響きだけに凝縮された。声と音のする方へ、おのずと好奇心と視線が集まってくる。

マイクを握りしめたシャマル。
その隣にはタンバリンを振り上げているヴィータ。
ふたりとも、エナメル質のぴかぴか光る紙地に星のちりばめられた三角帽をかぶって立っていた。

「はいはーい、お集りの方々、ご注目! いよいよ、お待ちかね、本日のメインイベントはじまりまーす♪」

翠いろに銀の星のはいった三角帽の司会役シャマルが叫にはじめるやいなや、部屋の照明がぱっと落とされてしまった。
すわ、停電かと驚くような、こころの準備が整っていない者はこの場にはいない。しかし、どうやら司会役の言葉が終わらぬうちに暗がりにさせたのがまずかったらしく、小声でぶつくさ言う言葉が洩れきこえていた。

闇に満たされた室内に、一箇所だけが明るくなった。二方向からのライトのつくる光の輪の重なりに、八神はやての姿が浮かび上がっている。
両脇にいたはずの、シグナムとヴァイスはいつのまにやら離れていた。

「主はやて、こちらへ!」

手をさしだしたシャマルがいる方角に、うすぼんやりとほの赤い焰が半円上にならんでいた。
テーブルに色とりどりの蝋燭が立てられたケーキが置かれている。焔にみえたのは、じつはケーキを背後から照らしている、電気キャンドルの燭台だった。

声に招かれて、はやてが前へ出ようとする一歩を導くように、足もとを明るくする光りの円盤が床を滑る。
二つの大きな懐中電灯で照らしていたのは、なのはとフェイトだった。はやての歩度にしたがって光りはじっくりと先を進む。はやてはあたかも、自分が光りの影になって追いかけている気分になった。



【目次】魔法少女リリカルなのは二次創作小説「Fの必要」シリーズ




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