陽出る処の書紀

忘れないこの気持ち、綴りたいあの感動──そんな想いをかたちに。葉を見て森を見ないひとの思想録。

映画「インデペンデンス・デイ」

2017-06-11 | 映画──SF・アクション・戦争
アメリカ合衆国が独立国であって、世界の頂点にたつ大国であることは疑いえない事実である。だが、アメリカはつねに戦争を求めている国家ではなかったか。王政が布かれた国での政権略奪は革命と呼ばれるが、大英帝国はじめ欧州の列強の隷属だったアメリカが自由を獲得した行為は、独立戦争と呼ばれた。
いま、百もの民族を混在させながら成長している合衆国は、無敵である。誰もそれを支配しようとすることはできない。もし、できるとしたら、それは地球外生命体だけである。

1996年のSF映画「インデペンデンス・デイ」は、おそらくこんな仮説にもとづいて製作されたであろう、SF大作映画である。ホワイトハウス上空に突如出現した巨大な宇宙船が、街を破壊し尽くしてしまう。当然、首都機能は麻痺し、混乱に陥った人びとは逃げ惑う。しかも、その敵さんのいでたちときたら、もういかにもステレオタイプなエイリアンときている。典型的なモンスターパニック映画なのだけど、飽きずに観られたのは、危機に瀕して四組の家族愛を巧妙に編み込み、人類の存亡をかけた戦いに地球人総勢が結束を見せるというストーリー仕立てであったせいか。共闘しているとはいえ、数あるSFサスペンス並みに、むやみやたらと主役級を際立たせるために犠牲者を用意しなかった点がいい。

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さて、その四組とは最終的に侵略した異星人に攻撃をしかける勇猛果敢な戦士たちをかかえた家族である。複数の家族の視線から宇宙人体験を重層的なドラマとして仕上げていく手法は、どこか「未知との遭遇」を思わせもする。

コンピューターエンジニアのデイヴィッドは、地球に接近した巨大宇宙船の発する信号の解読に成功し、老僕の父親ともどもホワイトハウスに避難警告を出すように要請する。そのデイヴィッドの元妻で大統領補佐官コンスタンスと、鉢合わせ。離縁した男女が寄りを戻すというのは、なんともお約束ではあるが。

ロスやNYを宇宙船のビームが襲うさなか、からくもジェット機で脱出した大統領ホイットモアは秘密基地エリア51に向かい、そこで四十年間も内密に小型宇宙船が保管され改修がおこなわれていた事実を知る。

生き別れになっていた大統領夫人を救ったのが、ストリッパーで気っぷのいいジャスミン。五歳の息子を抱えて避難するが、怪我で動けない人びとを見捨てようとはしない。彼女の恋人である空軍大尉ヒラーが、グランドキャニオンで宇宙船と決死の攻防を繰り広げ、宇宙人の捕獲に成功する。

四組目は、病気の弟と妹の面倒をみている少年ミゲル。父のラッセルはかつてベトナム戦争の戦闘機乗りだったが、酒に溺れ宇宙船にさらわれた経験を言いふらしては、仕事もさぼり気味。このラッセルが、のちに宇宙船との最終決戦でいのちがけの攻撃をし、地球軍に勝算をもたらしてくれる。いわずもがな父権復権のシナリオである。

デイヴィッドが編み出した起死回生の策が、コンピューターウイルスを送り込んで敵船のシールドを解こうというもので、H. G. ウェルズの『宇宙戦争』へのオマージュと解釈されてはいるが、科学的には眉をひそめたくなる術ではある。またいくら元エースパイロットだったとはいえ、大統領みずからが軍用機に乗り込んで陣頭指揮をとるというのもありえない。ありえないのだが、こうしたフィクションならでは無理が気にならないほど、人間の絆というものをあたたかく描いているところがよい。トム・クルーズ主演の「宇宙戦争」のあっけない幕切れとは違った重みがあろう。

身体能力でも地球人類と遜色ないはずの異星人が敗れた理由を、おさだまりではあるが愛情のない捕食としての侵略とみるべきか。だが、事実、その異星人のすがたはこの数千年間人類が生み出した殺戮者の再生に他ならない。だから、人類の独立記念日が、合衆国の独立記念日にあわせてというのも無理があろう。他民族共生国家とはいいつつも、アメリカは先住民族を徹底的に駆逐してきたからである。

出演はデイヴィッド役に「ジュラシックパーク」でアウトローな科学者を演じたジェフ・ゴールドブラム。大統領ホイットモアに「めぐり逢えたら」のビル・プルマン。ヒラー大尉役は「MIB」 「ワイルド・ワイルド・ウエスト」のウィル・スミス。老父ラッセルには「宮廷画家ゴヤは見た」のランディ・クエイド。

「スターゲイト」「GODZILLA」のローランド・エメリッヒ監督と製作ディーン・デメリンが、共同脚本。撮影、衣裳、美術スタッフもそれぞれ「スターゲイト」からの参加で、なるほど自分のツボにはまる古典的な作風なのはそのせいかと頷く。リアルなCGよりも、古めかしいミニチュアワークの爆破シーンのほうが重量感があって好みである。特撮マニアには評判がすこぶるいい。

NHKアニメ「ふしぎの海のナディア」からインスパイアされたとされるシーンがあるというのも、興味を掻き立てられる要素だった。

(2009年12月20日視聴)

インデペンデンス・デイ(1996) - goo 映画

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