陽出る処の書紀

忘れないこの気持ち、綴りたいあの感動──そんな想いをかたちに。

映画「最高の人生の見つけ方」

2011-09-04 | 映画──社会派・青春・恋愛
2007年のアメリカ映画「最高の人生の見つけ方」(原題 : The Bucket List)は、末期癌に冒されたふたりの男が最高の人生の終わり方を求めて旅に出るお話。ありがちな設定だと思いながらも、主演の名優の演技に引き込まれ、そして語られる台詞に魅せられてしまう感動作です。

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カーター・チェンバースは、この道四十年余り勤勉実直な自動車の修理工だった。暗記力がすぐれ、妻子あり、長男には孫も生まれている。歴史学の研究者を志していたが、生活のために夢を諦めたまま老境にさしかかってしまった。

ある日、癌で緊急入院した先で相部屋となったのは、口うるさい老人のエドワード・コールだった。エドワードは、この病院を買収したばかりで我が物顔でなにかと不満をぶちまけ悪態をついてばかり。彼の楽しみは、ただ香り高い珈琲をたしなむことだけ。

第一印象は最悪だったが、離婚歴が多く家族も信頼できる友人すらもいないエドワードとカーターは同居のよしみで意気投合。カーターが余命もって一年、エドワードが半年もないと宣告された日の翌朝、二人は死ぬまでにやりたいことをリストアップし、実行しようと約束する。

旅に誘ったのは金に糸目をつけない大富豪のエドワード。
スカイダイビングからはじまった老友ふたりは、サーキットでのカーレースを楽しみ、アフリカ、エジプト、インドそして中国を回って豪遊。これだけなら、ただの観光ツアーみたいにしかならないのですが、神経質で理性的と思われたカーターがしだいに少年のような悪戯ッ気を出して、豪胆であったエドワードをひっぱっていく構図の転換が面白いですね。

旅をしながら、お互いは気を許し、家族との軋轢や長い人生でたまった鬱屈などをゆくりなく明かしあいます。しかし、それが裏目に出たのか。途中で出血したカーターの病状を危ぶみ、また妻のバージニアからの電話での説得もあって、旅の中止を申し出ようとするエドワードに対し、カーターはリストの完遂を急ごうとします。相手を思いやってのおせっかいな行動から、カーターとエドワードは喧嘩別れに。

死ぬまでにやりたいことリストは宙に浮いてしまい、けっきょく、すべてを二人が存命中に果たすことはできませんでした。
それでも、このふたり、特に人としての優しさや家庭の愛情に飢えていたエドワードが人生の最期の瞬間に得た真理は、かけがえのないものでした。人生にどれだけ相手に喜びを与えることができたか。言葉ではいくらでも耳にしたことがあるけれど、それを実行するとなれば難しい。

残されたほうが、逝ってしまったものの遺志をひきついで意外な形でやり遂げていくのが、こころを誘われますね。と同時に、金銭や地位がなくとも有意義に人生を終える術に気づかされる。なにも特別なことでなくてもいい、死の間際に行ったことが普段のとりとめない日常の繰り返しであったとしても、人はそれでじゅうぶんに満足に生き抜いたといえる。そのようなメッセージを発しているのです。死んでゆくものの悲愴感を煽るのではなく、やがて訪れる死に対してしっかりと覚悟は据えながらも、これからの一日を前向きに過ごしていこうという希望を与えられるのです。

冒頭とラストをつなぐ雪山のシーンが、なんとも胸にじんわりと染み渡るような余韻を残してくれます。観たのは、日曜洋画劇場でしたが、DVDをレンタルして再視聴したいと感じさせた作品です。末期癌患者の介護経験がある方や、医療関係者から観れば、ありえないと感じる部分もありうるでしょうが。

主演は「カッコーの巣の上で」「アバウト・シュミット」で知られる怪優ジャック・ニコルソンと、ヒューマニストな黒人男性を演じさせたら右に出るものはいない、「ショーシャンクの空に」「ミリオンダラー・ベイビー」のモーガン・フリーマン。
ショーン・ヘイズが演じたエドワードの秘書トーマスは、口減らずだけど信頼のできるタイプで、ニコルソンとの掛け合いが絶妙ですね。

監督は「スタンド・バイ・ミー」で知られるロブ・ライナー。

本作で触れられているキューブラー・ロスの「死の五段階」は、大学の倫理学で学んだことがあります。死というもの、人生というものについて深く考えさせられたのは、やはり時間のある学生時代だけでしたね。

ちなみに私が死ぬまでにやりたいことは、本作のようなできるだけ心に残る作品にひとつでも多く出会うことです。人生は短い。だからこそ、どれだけいい影響を受けられる人や、作品に出会えるかが、その後の人生を左右するのではないでしょうか。

(2010年11月14日)

最高の人生の見つけ方 - goo 映画


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