陽出る処の書紀

忘れないこの気持ち、綴りたいあの感動──そんな想いをかたちに。

漫画『るろうに剣心─特筆版─』

2018-07-07 | テレビドラマ・アニメ

子どもの頃に好きの1番じゃなくて、2番、あるいは3番手ぐらいだったものの良さにいまさらながら気づいて、ハマることってありませんか? お小遣いに限りがあるから、あるいは受験勉強の妨げになってはいけないから、漫画のコミックスを買うのでも一作か、二作だけ。漫画雑誌で気になる作品は、飲食店などで立ち寄り読みするか、コミックスを友だちに貸してもらえばいい。当時、『ドラゴンボール』に熱中していた私は、『幽遊白書』とか『スラムダンク』とか、いまでもアニメ化されるぐらい人気作の『ジョジョの奇妙な冒険』とかまったく興味圏外でした。そして、この『るろうに剣心』もそう。歴史漫画好きだったけれど、幕末とか明治とか好きじゃなかったんですよね、当時は…。でも、生まれ変わって、もしくはタイムトラベルで人生分岐点できて、あの頃に戻れたらハマりたかった、当時好きだった人といっしょに楽しみたかっただろうと思えるのが、こちら。

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その原作漫画が気になったのは、つい先日、劇場版をテレビ視聴してからです。
でも、ネットで調べたら、この作品の本編自体は1999年終了のわずか年ぐらいの連載だったにも関わらず、その後、不定期連載されたせいか、よくわからないバージョンがいっぱいあります。とりあえず、文庫版全14巻を大人買いしてみたのですが、この『特筆版』もセールされていたので合わせて購入。これのアニメ、ほとんど観てなかったけれど、JUDY AND MARY が歌う主題歌、ヒットしましたよねえ。想い出はいつもキレイだけど、それだけじゃ、お腹が空きます。胸はトキメキでいっぱいになりますが。

この『特筆版』は、2012年の実写映画化にあわせて企画、平成24年より『ジャンプスクエア』誌面にて連載された「るろうに剣心─キネマ版─」全10回分および、原作本編の前日譚となる「るろうに剣心─明治剣客浪漫譚─第零幕」とを収録したもの。上下で全二巻。

「キネマ版」は本編の4巻部分までの再構成になるのですが、おなじみのキャラクターの役回りや初登場シーンがややアレンジされており、原作者によれば、パラレルワールドなのだそう。キャラクターの根幹は変じてはいないのですが、ファンを裏切らない程度に、若干、性格付けが少し物足りないと思う部分があるかも。たとえば、薫がやや年上の配慮あるお姉さんぶったり、剣心がやや内省的すぎる感じだったり、斉藤がはじめからあまりあくどくなかったり、弥彦が達観していたり。左之助だけはそのままかな。

原作本編分をまだ全話読み通していないのですが、絵は古臭いけど、もうちょっと快活な少年漫画っぽい雰囲気があった旧作のほうが、私は好きですね。台詞をちょっと洒落たものに改められているんですけれど、絵柄が上手いけれど隙がなさすぎて。旧作がムラのある手仕事だとしたら、整いすぎた人工物クリスタルといった感じ。アニメ絵っぽすぎるというか。でも、アニメ化されて人気爆発になると、原作絵のペン画ならではの持ち味が薄れてしまうことってよくあるんですよね、武内直子先生の『セーラームーン』もそうでした。

劇場版の佐藤健ほかの超絶チャンバラ描画を期待していたのですが、この作品、必殺技シーンとかが断片的なので、どこに一撃入ったのかとか分かりづらくないですか? 
正直、最終戦の剣心対する鵜堂刃衛の刀の持ち方(両手の穴に刃を差し込んでいて、カマキリみたいに振り回す)はかなり無理があるのでは…? いや、ファンタジーにつっこんじゃいけないと思うのだけど、すごい気になる…。念のため、文庫版第一巻で確認したら、この敵さん、普通に時代劇に出てきそうな構えしていました。なんで、あんなありえないアレンジにしたんだろう…。しかも、そんな猫パンチ的な斬撃で致命傷を負わされる、他称伝説の人斬りこと緋村抜刀斎さん…。ギャグかいな、これ。

うーん、私的にはコマの余白に余裕がないアップが多くて窮屈なので、旧作のほうが好きです。主人公のおとぼけぶり→殺人鬼変化の顔が面白かったのに(鬼畜)。顔で戦闘モード、スイッチ入りました、というね。同じ作者で昔のほうがいいと言われたらショックでしょうけれど。原作者が過去作をおもしろおかしくセルフパロディした公式同人誌みたいなものだと思えば、楽しめるでしょう(酷)。

原作本編連載終了時に、担当編集者とは二度と描かないと誓ったらしいのですが、なぜまた手掛けたのかについての理由が、おまけ頁に書かれています。
当時、連載で心身疲弊していたので担当が無理強いさせなかったこと、人気絶頂のときに終幕を下すため愛読者への誠意として二度と描かないと決意したが、原作者は続編を望む声に応えたいと思っていたこと。実写映画化は連載終了すぐにあったが、立ち消えになっていたこと。この原作者さん、昨年、ある一件で話題になってしまいましたが、「るろ剣」の各種メディア化では、パチンコだけは許せないので断ったというあたりに、好感が持てました。いま、ギャンブル依存症とかゲーム依存症とか国際的に問題視されているのに、日本のアニメ、安易にパチンコや課金ゲームで暴利をむさぼっていてうんざりですよね。ガチャで儲かっても、制作現場で汗かいているクリエイターに還元されるわけでもないですし、そこで消費しすぎて、かえってDVDやグッズなどを買わないひともいるとも言われていますしね。ストーリーはすでに手垢のついたもので、ただの萌えキャラクタービジネスになってしまっているのは残念。アニメの製作本数が多すぎて、十分に準備できないまま見切りスタートしているのでは。

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原作漫画を見て思ったのですが、やはり、あの劇場版の殺陣がすさまじく素晴らしいことが改めて分かります。もちろん、原作にあるストーリー展開やキャラの魅力あってのものではあるのですが、あの動き、驚きですね。

日本の過酷な労働環境では、漫画やアニメでほんらいの人間の動きをくまなく再現するのって難しいのかもしれませんね。ロボットバトルもそうなんですけど、作画のカロリー高すぎて、熱心に動かしたわりにはすぐ終わって注目されないんですよね。ゲームでも滑らかにはなってきているけれど、どこかアンドロイド然としたカクカクしている部分が残っているように感じます。だからこそ、昔みたいに、武道や剣術の奥義に詳しい人の知識がいかんなく活かされる実写の時代劇って、映画、ドラマ問わずに定期的に制作されるべきだと思います、ほんとうに。漫画原作の邦画やドラマが、コスプレ学芸会にならないケースもできてきていますし。

それにしても、この『るろうに剣心』。
あけすけに言えば。政体が変わって無職になった30歳近いおじさん(明治時代の平均寿命って40代半ばぐらいですよね?)が、現時点で廃れたスキルを発揮して人助けをし、ついには10歳以上も離れた若い娘と結ばれる(犯罪)、というお話。ただし、この主人公おじさんはイキらないし、どんな凶悪な敵でも相手の尊厳を損なう言動はまずしない。当時の少年漫画では珍しい設定だったはずですが、実写にして売れたのは、まあ、なんとなくわかるような気がしますね。人間は、呆れるほどに、充たされない夢を物語に求めてやまない生き物なのです。

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