陽出る処の書紀

忘れないこの気持ち、綴りたいあの感動──そんな想いをかたちに。

漫画『十字架トラインアングル』

2018-05-03 | 感想・二次創作──神無月の巫女・京四郎と永遠の空

のちに人気をかこって長篇シリーズとなる漫画には、雑誌初掲載時にパイロット版が存在したりしますよね。作者がデビュー間もなかったりするとよくありがちですが、とりあえず読み切りで載せといて、読者アンケートで好評だったら連載化しようというパターン。一話だけの実験作だったのだけれど、あんがい描くと面白くて、もういちど焼き直してみたいという思い入れがあったりもするのでしょう。ま、最近は人気アニメがあると、リメイクして映画にしたりすることもありますし。

漫画『十字架(くるす)トラインアングル』(2002年・角川書店)は、知る人ぞ知る、あの伝説の百合+ロボット+学園+伝奇のごった煮アニメ「神無月の巫女」の前身作です。この漫画に登場する主役三人の少年少女を、設定や舞台をそのまま変えてみせたのが、あの作品。原作者の男性漫画家ユニット・介錯先生の公式ホームページ(現在、工事中)にも、数年前までカラー画像が載っていましたので、ご存知の方も多いはず。この作品は、2001年連載開始だったので、時期でいえば、作者の二大代表作である『鋼鉄天使くるみ』の後で、2002年からの『円盤皇女ワるきゅーレ』の直前。2004年放映連載の「神無月の巫女」は、本作から二年しか経っていません。そのせいか、存在感が薄いのかも。

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クリスチャン系の学園に通う高校生、来瑠守(くるす)、その大親友のきらは、そしてボーイフレンドの大神(おおがみ)は、いつも仲良し三人組。ある日の帰り際、来瑠守は大神に「君を守るから」宣言をくらいます。大神に想い寄せているらしいきらはに遠慮して、素直に喜べない。そんな折、16歳の誕生日を迎えた来瑠守の命をつけ狙う魔者が訪れて…。

この三人、完全そっくりさんではないですが、「神無月の巫女」の、来栖川姫子、姫宮千歌音、そして大神ソウマの原型ですね。といっても、性格がやや異なりますが。来瑠守は姫子ほど人見知りで臆病でもないが、恋に奥手というか潔癖すぎ。大神が十字架アレルギーなのをいいことに、避けようとしています。あんた、それ、好きな娘にいじわるするクラスのがき大将ですわ、ってぐらいに。この原作者さんの漫画のヒロインは、アホの子(失礼)が多い印象なんですが、お真面目タイプって珍しいですね。姫子の顔なんだけど、やや大人びて見えます。いちおう、これでも戦闘ヒロイン系。決め台詞は、「自らの罪を認め懺悔なさい!」。





イケメン度アップの大神(なぜか、苗字だけで下の名前がない。しかもヒロインらに呼び捨てされる)はまさに王子様キャラですね。熱血少年ながら純情ソウマくんとは反対に、来瑠守に熱烈アプローチ。きらはは、見た目千歌音ちゃんなのですが、よく言われているように、姫子の親友のマコちゃんこと早乙女真琴みたいな姉御肌。でも、その内面は…。

16歳になった来瑠守を待っていたのは、闇の世界の住人たちとの戦い。
闇の世界の姫として目覚めた彼女は、自分の血肉を貪らんとする魔者たちから逃れ、その邪心を浄化せねばならない。大神の告白が、実は姫の従者であることの義務ではないか、とためらいつつ、否が応にも、大神のガードで戦闘する来瑠守。やがて、闇の世界の次期女王の座を巡って争うべき、もうひとりの姫と名乗る少女が現れて…。

性格も見た目もわずかに違っているのですが、この三人の立ち位置が、まんま「神無月の巫女」のコミック版そのままです。いや、ほんとうに。さらには、調停者と称する銀髪のディオール神父も、大神にとってはどうやらいわくありげな存在。この人は、ヤンデレ兄貴のツバサ兄さん枠ですね。

連載回数が限られていたのか、一巻のみで、やや半端なところで終わっているのが残念。続きがあったらどうなっていたのでしょう。闇の女王とか出てくる予定だったのかな。作者自身もあとがきで無念の思いだったようです。

宿命の相手に秘められた感情を抱き続けたきらはと、それにまったく気づかない鈍感な来瑠守との関係、これはいいですね。にやにやすること、間違いなしです。「神無月の巫女」の原作漫画では、千歌音ちゃんがトンデモない行動(笑)に出て進展させてしまうのですが、さて、本作では、どちらがどういう働かかけで、どういうところに落ち着くのか。それは読んでのお楽しみ。百合度がきわめて高いわけじゃないですが、ひめちか率は濃いので、ファンならそこそこ楽しめるかも。というか、大神君、ラストでいったい何処に向かったのか。無理やり退場させている感が(笑)。兄貴と決着つけるため? この作品の未解決部分が、「神無月の巫女」に結実されているのでしょう。




原作者が長年の夢であった少女漫画に初挑戦と意気込むように、いつものお色気シーンはなく、健全な漫画が読みたいひとにオススメ。角川書店だけど、レーベルがCLAMPの『X(エックス)』と同じ、あすかコミックスのせいか、キラキラ感が半端ないですよね。この少女漫画ちっくな実験的試みがやがて、突き抜けて『京四郎と永遠の空』に至ってしまったのか。

神無月アニメの結末を知っている人からしたら、物足りないくらいですが、姫子、千歌音、ソウマを異世界転生させた公式同人もしくは画集だと思えばよろしい。ところどころ、「神無月の巫女」の漫画を彷彿とさせるシーンがあって、読み比べてみても面白いです。「大神君、貴方っていったい何なの。姫子を護る騎士(ナイト)にもなれない」の千歌音ちゃん語録の原点はここにあったのか、という…。

ちなみに、このヒロインの本名は、神鍵・エレキシュガル・来瑠守。
ファーストネームだった来瑠守と、クリスチャン系のキャラクターは、のちに『絶対少女聖域アムネシアン』でも流用されることになります。あの制服、よっぽどお気に入りなんですかね。きらはという名前も「鍵姫物語 永久アリス輪舞曲」に再登場し、のちにアニメ化されていましたよね。

それにしても、本作はこの漫画家さんには珍しく、かなりのド健全・どシリアス路線。
近作の作風からは信じられないのですが…(笑)。


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