陽出る処の書紀

忘れないこの気持ち、綴りたいあの感動──そんな想いをかたちに。

知らないと損する、災害時に免除されること(後)

2018-07-29 | 政治・経済・産業・社会・法務

台風12号の進路が心配ですね。
中国四国地方を中心として集中豪雨に見舞われる可能性があり、気象庁も異例の警戒を呼び掛けています。空振りに終わればよかったねでよし、注意するに越したことはありません。それにしても、地震、台風、水害、噴火、などなど日本列島は災害に愛され過ぎなのですが、蒙古襲来をからくも防いだ神風のように鎖国には適していたのかもしれません、これまでは。


「特定非常災害」に指定されたら、法令上履行せねばならない義務の一部が免除されます。
今回は、人生であまり直面しない、というよりもできれば直面したくない手続きについて。

・相続放棄などの熟慮期間の延長
故人の配偶者や子ら相続人が行う手続きには、情け容赦なく期限があります。先日、民法内の相続法が改正されたばかりですが、相続は課税や資産継承や負債が絡むだけに複雑です。法に定めていないと、遺族感情をこじらせ、世の相続人はみな池に浮かぶスケキヨみたいなことになりかねません。相続開始というのは、被相続人の死を相続人が認識した日ですから、いまだご遺体の見つからないご家族の探索をされている被災者にとっては、思いだにしないことでしょう。被相続人の所得税の準確定申告は4箇月以内、相続の承認ないし放棄は3箇月以内と定められています。

今回の豪雨で災害救助法適用地域に住所を有する相続人を対象に、相続の承認もしくは放棄の熟慮期間(平成30年6月28日以後満了のもの)が、平成31年2月28日まで延長されます。注意すべきは、「相続人が」被災地住民であることです。実家の両親が豪雨で亡くなったとしても相続人であるあなたが、その市町村外に住民票を置いていれば適用されません。

・民事調停申立手数料の免除
金銭貸借や消費者トラブル、交通事故、騒音・悪臭などの近隣の苦情、借地借家や農地利用をめぐる紛争を、裁判ではなく、話し合いで解決するのが民事調停。
災害救助法が適⽤された市町村に住所、居所、営業所⼜は事務所を有していた⽅が、平成30年6⽉28⽇(⽊)から平成33年 5⽉31⽇(⽉)までに、平成30年7⽉豪⾬に起因する⺠事に関する紛争について裁判所に⺠事調停の申⽴てをする場合、⼿数料の納付が免除されます。(法務省ウェブサイト(民事調停の申立手数料の特例措置)



なお、「特定非常災害」指定を受けなくとも、利用できるお得な制度もあります。
特に気になるのは、税金の支払いですよね。

・所得税確定申告時の雑損控除
所得制限なく利用できる、「所得控除」です。地震や風水害、火災、虫害などの災害のみならず、盗難や横領などで資産に被害を受けた場合に利用です。(ただし、詐欺や恐喝は自己の過失も問われるので対象外)。私は隣人によって塀を壊されたことがあり、利用したことがあります。

対象資産は、納税者もしくは同一生計の控除対象配偶者・扶養親族所有の生活上必要な資産。すなわち住宅・衣類・家具・現金などで贅沢品は不可。趣味のアニメグッズや漫画は無理そうですね(笑)。災害関連の支出費用(家屋の取壊し撤去費用など)も対象になります。

・災害減免法による所得税の減免
被災当年の所得1000万円以下、住宅や家財の被害額が時価の2分の1を超える場合。盗難や横領は対象外です。

雑損控除と災害減免法による所得税減免とは、どちらか一方のみ選択します。
災害減免法による所得税減免では、損害額を複数年に繰越適用できません。損害額が一年の所得金額を上回る場合には、雑損控除を選択した方がよさそうです。損害額からは保険金などで充当された額は除いておかねばなりません。

(参照: 雑損控除と災害減免法、被害を受けたらどちらを使う? )

そのほか、地方自治体によっては、固定資産罪や住民税(都道府県民税・市町村税)の減免や納税猶予、水道料金などの減免に応じる場合もあるようです。お住いの地方自治体のホームページをチェックしておいた方がよさそうですね。

住宅が持ち家で火災保険に加入し、風水害の補償がある契約ならば、申請すれば保険金が下ります。生命保険もそうですが、保険契約は申請しなければ支給されません。
私は台風で飛んできた瓦礫やボールで雨樋が詰まり、ベランダからあふれた水で階下が水漏れしたので保険申請したことがあります。保険会社から委託された、損害保険鑑定人が訪れた際には、家屋などの老朽化での崩壊を疑われることもありますので、写真撮影するなり、災害直後の状況を克明に記録しておくなりして、正確に冷静に被害状況を伝えることが大切です。場合によっては査定額が変わってくることもあります。

ご自身が契約者でなくとも、ご家族が被害に遭われて、いきなり当事者になる可能性は大いにありえますので、日頃から、保険の加入状況やいざというときの備えについて、きちんと話し合っておきましょう。子どもが高校生ぐらいになったら、家計の状況や万が一の時の行動についてしっかりと諭しておくのは、ご家庭の躾で必要なことではないでしょうか。

蛇足になりますが。
自然災害の発生後に、「保険金が下ります」と誘って強引な工事契約に持ち込む業者が増えているそうです。
ご自身の加入している保険についての問い合わせは保険会社や代理店に、あるいは保険に詳しい専門家やFPなどに相談しましょう。また全国的に災害が多発して損害保険料は上昇気味になっています。保険会社の営業は有利な旧契約の保険を、あまり旨みのない新契約に乗り換えさせようとすることがあります。また、同一対象につき複数の保険契約をしても、保険金総額には上限があることもあります。契約更新や新規加入の場合は、信頼のおける外部の専門家を頼ってみるのも一計であります。


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特別警報では、もう避難は手遅れ。生活圏内で浸水被害に遭いそうな危険個所をチェックし、いざというときの避難体制や非常時の手続きなどについて、職場や家族で話し合っておくとよいですね。

知らないと損する、災害時に免除されること(前)
「特定非常災害」に指定されたら、法令上履行せねばならない義務の一部が免除されます。運転免許の更新日も延長されますし、飲食店や薬局の営業許可などの有効期限、相続に係る手続き期限の延長、各種届出義務の免責などなど。




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