陽出る処の書紀

忘れないこの気持ち、綴りたいあの感動──そんな想いをかたちに。

絵本の表紙が萌えると困るのは誰なのか?

2018-11-14 | 教育・学術・読書・子ども

古都鎌倉を舞台に、老舗古書店の女性店長と愚直な青年、そして古書に魅入られたひとびとの数奇な運命を描いた人気ライトノベルシリーズ『ビブリア古書堂の事件手帖』の最新刊、シリーズ通算八冊目は、なんと前作から飛んで七年後。古書マニアの栞子が自分の娘に語り聞かせるかたちで、過去の事件をふりかえる短編集。その第二話は、人気イラストレイターの息子を亡くした母親からの本探しの依頼からはじまります。母子の思い出となる本だと生前語っていた本の正体が、母は皆目わからず、本探偵のビブリアコンビも当惑します。

最近、書籍販売の売上が減少している中で、驚くべきことになぜか児童書だけは好調なのだとか。少子化なのに不思議でもありますが、人気漫才師などが執筆した絵本がベストセラーになったりもする時代。バズマーケティングのなせる業なのかもしれません。

そのいっぽうで、出版社には困ったクレームも寄せられています。
「シンデレラ」「白雪姫」など誰もがなじんだ童話名作絵本の表紙が、「萌え絵なので許せない」という批判が相ついでいると。出版社側の公式発表した見解では、萌え絵ではなく、「子どもたちに好まれる絵」をイラストレイターに依頼した結果でしかないとのこと。

たしかに最近の子ども向け絵本というか、歴史漫画とか学習漫画の絵は、昔に比べるとキラキラした感じで、じつに漫画っぽい。そう、言い方かえれば、俗っぽいんですよね。私も子どもの頃、歴史漫画好きでしたが、正直、あまり絵柄が好きじゃないものもありましたし。最近だと人気漫画家を表紙に呼んできて、シリーズ刷新したりもしています。くだんの絵本の表紙の絵柄も、萌え絵というよりは、日曜朝の魔法少女アニメ番組みたいな絵柄ですよね。まあ、おおきなお兄ちゃん、お姉ちゃんも喰いついても視聴しているらしいのですが。ほんらい、害のない健全なお話なのですが、どうもファン層のせいでいかがわしいイメージがついて回ることはありえます。というか、商業戦略でそういう消費者に喰いつかせようとしているので。

出版社の子ども受けしやすい絵にしたという戦略は間違ってはいません。
そのせいで売れているのでしょうから。しかし、では、なぜその絵でいけないという批判は起きるのか。その批判はどこからやってくるからのか──もちろん、アニメ絵をけしからんと思っている読者層、おそらくは母親です。

そもそも、お子様に絵本を買い与えたいという親は、学歴信仰が根強くて教養偏重主義。
本を読んで多くの難しい漢字がたくさん書けてほしいとは思っても、漫画やアニメに親しみすぎてほしくはないと考えています。自身が世界文学全集や歴史小説に囲まれて育った子ども時代だった人も、そうではない人も、漫画やアニメの表現の魔力というものを存分に知っている世代の親が多い。自分が親にたしなめられた経験を、虐待の連鎖といえば語弊があるのですが、子にくりかえしてしまうのかもしれません。

冒頭の話に戻りますと。
『ビブリア古書堂…』の母親は、息子が言い残した思い出の本に行き当たったときに、母子のすれ違いのなかでも唯一の結びつきをそこに再発見するのです。親や先生が与えた本はえてして面白くない。親の望むものは、子どもの欲しがるものとは異なる。手塚治虫のように、医者の家系であるのに漫画家の道を選ばせた親の度量こそが、稀代の漫画の神様を生み、こんにち、わたしたちが楽しんでいる名作を育んでくれたわけですね。

本を読む=頭が賢くなる=子どもの将来の収入が増えるという親の欲目だとか、教育投資だとか経済雑誌によく特集されがちな情報に汚染されていそうな気がしますが。雑誌『プレジデント』のある調査では、低所得世帯ほどファンタジーが好きという結果もありますけれど。では、高所得者の読みそうな本を読んだからといって、経済的に成功するとは限りませんし。

ところで、子どもの頃、ダサくてナンセンスだと思っていた表紙絵の本を大人になってから読むと、意外に味わいのある絵であることがわかって驚くことがあります。もう廃棄してしまったのですが。参考書でも、実用書基本書などでも、萌え絵柄、コミック風でわかりやすくとっつくやすくしている時代ですが、その手のものは立読みですませやすいんですよね、すみません。幅広い読者を意識して本づくりをするのはいいことなので、従来型のやや古くさい、堅苦しい絵のタイプの絵本や児童書も残していてほしいものですね。


読書の秋だからといって、本が好きだと思うなよ(目次)
本が売れないという叫びがある。しかし、本は買いたくないという抵抗勢力もある。
読者と著者とは、いつも平行線です。悲しいですね。

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